アルメニアの政変に関する日本の報道を見て思うこと 

昨日5月9日は対独戦勝記念日で休日でした。当時アルメニアは、ソ連軍としてドイツと戦ったんです。国民の絶大な支持を受けて議会の投票で選出されたニコル・パシニャン新首相は、記念式典に出席したり、戦死者の墓地や遺族を訪問しました。首相としての初仕事ですね。

今回の市民によるデモやパシニャン首相誕生のニュースは日本でも報道されていますが、やはり反ロシアとか親米とかの視点で伝えるものが多い…旧ソ連の国の政変ですし(その中でもマイナーな国だし…)、過去にジョージアやウクライナの出来事もあるからか、「どうせ今回も親ロシア政権に対する抗議デモに違いない!」と、短絡的に欧米寄りの偏向報道してしまうのでしょう。

先日の記事にも書きましたが、市民の怒りが爆発したのは、前大統領や与党が親ロシア路線だったことが主な理由じゃありません。彼ら支配層が、一般庶民の生活向上に努めず、汚職が蔓延る悪政を行ってきたからです。まあ、そういった腐敗システムは旧ソ連時代の負の遺産ではありますけど、アルメニア市民の対ロシア感情はそれほど悪くないですし、アゼルバイジャンとの領土問題を抱えている限り、ロシアと縁を切って一気に親欧米路線にシフトするなんて不可能です。

対米従属という病魔に冒されているせいか、日本の政府もマスコミも、自分自身で国際情勢の変化をきちんと分析して判断することができなくなっている気がします。北朝鮮の問題に関しても、いまだに圧力一辺倒だし、北と独自の外交ルートを持っていないから拉致問題もアメリカや韓国に頼ってばかり…

意外にトランプ大統領の方が、普段は好戦的で支離滅裂な言動を取りながらも、水面下で中国や韓国と共に北と対話して和平を進めたりと、結構したたかな一面を持っています。これって各国の利害と思惑が複雑に絡み合う外交の世界では当たり前の駆け引きでしょうから、当事者の一人なのに蚊帳の外に置かれてしまったのは、完全に日本の失策と言えます。

こんな日本の憂うべき状況を、ロシアのプーチン大統領が2016年末の訪日の際に鋭く指摘しました。「日本はどの程度、独自に物事を決められるのか。私たちは何を期待できるのか。どのような結果にたどり着けるのか。平和条約署名という最終合意のために、一体何を両国間の基礎とするかによって、結果は違ってくる。これが現在の露日関係と露中関係の違いだ」と…

このプーチン大統領の発言に対して安倍首相は何も反論しませんでしたが、「中国は独立国やけど、日本はホンマに独立国なん?独立国として自分で物事を判断して決定できんの?独立国としての意思も誇りもない国とは、領土問題や平和条約締結の交渉なんかできへんで!」と言われているようなものです。

もちろん日米安保条約があるので、日本は米国を無視することはできません。それについてはプーチン大統領も、「日本には同盟関係上の義務があり、私たちはそれを尊重するのはやぶさかではない」と語り、一定の理解を示しています。そうはいっても、日本と米国の国益が常に一致することはあり得ないし、日本にとって米国は利害を超えた友好国だなんて、全くもって愚かな幻想です。

そういった国家間の関係についても、プーチン大統領は欧米のジャーナリストによるインタビューでこう答えたことがあります。「国家間の友好関係とは、単なる友達関係とは異なるものだ。私は相手に媚びたりしない。私はロシアの大統領で、守るべき1億4600万人の国民がいる。そのロシア人のために国益を守ることが最優先だ」

まあ、そのロシアの国益のために、カラバフの領土問題が利用されて、アルメニアが身動きとれない状態になっていることには腹が立つんですけど、発言の内容自体は間違ってはいない、というか当たり前のことです。でも、その当たり前のことが、日本と米国の関係においては成立していないんですよね…

世界は、過去に例を見ないほど凄まじい勢いで変化して多極化しています。情報の拡散や共有のスピードは半端なく、今回のアルメニアの変革においても、フェイスブックなどのソーシャルネットワークが果たした役割はとても大きかったです。そういう世界情勢の中で日本が取り残されないためにも、妄信してきた対米従属という国是を見直す時期が来ていると思います。

パシニャン新首相が誕生した一昨日のエレバンの様子をまとめた動画をいくつか載せておきます。別に反ロシアとか反プーチンといった雰囲気はありません。


現地ニュースの映像ですが、パシニャン首相が誕生した瞬間の支持者らの様子。


同じく現地ニュースの映像で、支持者らの祝福を受けるパシニャン新首相。


パシニャン首相の誕生で喜びに沸く市民たちの様子。

CIMG8875armenia18-5-9.jpg
支持者らが着ているパシニャン氏のTシャツ。「勇気を持って」という意味の言葉 Դուխով(Dukhov)と書かれています。同じデザインの帽子などもあります。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://armeniajapan.blog54.fc2.com/tb.php/909-4a8db132