激動するカラバフ情勢 

今日は次男レオの7歳の誕生日です。カラバフを巡る問題でアルメニア情勢が混迷しているため、妻は当初、「今年は家族だけで大人しくお祝いしようか」と言っていましたが、それではやっぱりレオが可哀想…ということで、例年通り、学校や近所のお友達と一緒に楽しくお祝いすることにしました。

もちろん、故郷を捨てて避難民となったカラバフの人たちのことを思うと、私も明るい気持ちにはなれません。しかし、どれだけ辛く悲しいことが世の中で起こっていても、なるべく子供たちはそんな現実から無縁な世界で、いつも無邪気に幸せに暮らしてほしいと思っています。

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友達と7歳の誕生日をお祝いするレオ。おめでとう!

フィリピンから来ている大輔さん、そして大輔さんが経営する会社の役員である石井さんと一泊二日でアルメニアを南部を旅行して、一昨日エレバンに戻ってきました。日本でワインを作る予定の石井さんの希望で、ワイン産地やワイナリーを訪問しました。美しい修道院なども訪問して、とても楽しい二日間となり、「アルメニア、本当によかった!」と石井さんも言ってくれました。

ドライバーの提案で、二日目はタテヴ修道院まで足を延ばしたのですが、その道中、家財道具を積んだカラバフからの避難民の車をたくさん見ました。彼らはカラバフからアルメニア南部の街ゴリスに入り、そこからエレバンなどに向かっているのです。その避難民の数は10万人を超えたという情報があり、これはカラバフの人口の8割以上。あと数日でカラバフからアルメニア系住民はいなくなるでしょう…

首都ステパナケルトからアルメニア国境まで、通常であれば車で2〜3時間ほどですが、今は険しい九十九折の山道に延々と続く長い渋滞ができ、さらにアゼルバイジャンが設置した検問所で一台一台チェックされるため、なんと一日以上もかかるそうです。幼い子供や老人もいるというのに…その過酷な道のりを想像するだけで心が痛みます。

また、やっとの思いでアルメニア本土に辿り着いてからも、住居や仕事、また子供の教育など、今後の生活への不安を誰もが抱えています。アルメニア政府は、避難民をすべて受け入れ、その保護や支援に尽力することを表明していますが、運べるだけの家財道具を積んで移動する避難民たちを実際に見た時に、彼らの置かれた厳しい状況に胸が締め付けられる思いがしました。

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家財道具を車に積んで移動するカラバフの避難民

とにかく、ここ数日間はアルメニアとカラバフの情勢が目まぐるしく変わり、理性や感情がほとんど追いつけない状態で、今まさに歴史の大きな転換点にいることを痛感します。そのほとんどはアルメニアにとって悲しい出来事でしたが、主なものを以下にまとめます。

9月27日、ナゴルノ=カラバフ共和国の元国務大臣で、事業家また慈善活動家として知られるルーベン・ヴァルダニヤン氏が、アルメニア本土に出国中にアゼルバイジャンに逮捕されました。テロ支援や不法逃亡などの容疑で拘束されているそうです。同氏は、2022年に同共和国に移住しました。

9月28日、ナゴルノ=カラバフ共和国のサンベル・シャフラマニャン大統領は、全ての行政機関や団体を来年1月1日を以って解体する大統領令に署名しました。これは、同共和国の存在が事実上消滅することを意味します。

9月28日、アルメニア議会の常任委員会が、国際刑事裁判所(ICC)ローマ規定の批准を全会一致で採択しました。今後、議会で批准の是非が検討されます。しかし、ICCが今年3月にプーチン大統領に逮捕状を発効したため、ロシアはこのアルメニアの動きを強く牽制しています。

9月29日、カラバフ共和国とアゼルバイジャンの代表団が、アゼルバイジャン中部のエブラフで、カラバフのアゼルバイジャンへの再編入などに関する3回目の会談を行いました。

9月29日、ナゴルノ=カラバフ国防軍の元第一副司令官ダビット・マヌキャン少将がアゼルバイジャンに逮捕されました。テロ行為や武器密輸、不法逃亡などの容疑で拘束されているそうです。

先週のアゼルバイジャンの軍事行動以降、あまりに情勢の変化が激しいため、今後のことを予想するのは難しいです。しかし、アルメニア系住民がいなくなり、政府組織も解体することから、カラバフがその歴史に終止符を打つことは確実です。アルメニア含め国際的に未承認とはいえ、実質一つの国家が消滅するのです…

これは30年に及んだカラバフ紛争が終結することを意味します。しかし、まさかこんな急速な展開で終わりを迎えるとは予想だにしませんでした。もちろん遺恨を残さずに解決できる問題ではなく、アルメニアが大きな譲歩や妥協を迫られることは覚悟していましたが、今の混迷した状況を見ると、さすがに喜ぶことなどできません…

アルメニアとアゼルバイジャンが争い続けたカラバフ共和国が消滅…これで、平和条約を締結する上で最大の障害が解消されたかもしれませんが、憎悪の連鎖は断たれたどころか、さらに悪化した可能性もあるので、交渉が前向きに継続されるかは微妙です。それに、まずは故郷を失った避難民の救済が喫緊の課題でしょう。私もできるだけ支援をするつもりです。

とにかく状況は流動的で予断を許しません。しかし、アルメニアの歴史、そして未来を大きく変えるであろう今の情勢を、希望を捨てず、なるべく冷静に見守って行きたいと思います。

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