カラバフとアゼルバイジャンの代表団が会談
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今朝、テレビ朝日の「グッド!モーニング」という番組で、今回のカラバフでの出来事が取り上げられ、私のインタビューも放送されました。昨日、急遽ネット取材を受け、現地に住む日本人として質問に答えました。知人が動画を送ってくれたので、私も見ました。
番組は、カラバフの問題そのものに焦点を当てているというより、それを通してロシアの影響力低下などを伝える方向だった気がします。なので、私の発言内容も、番組の方向性に沿った形で切り取られて編集されていました。できれば、もっと今ここで起こっていること自体を掘り下げて伝えてほしかったですね。
そのインタビューでも話しましたが、昨日9月21日はアルメニアの独立記念日でした。しかし、その直前にアゼルバイジャンによるカラバフ領域への攻撃があったため、全くお祝いムードはありませんでした。それどころか、多くのアルメニア人が暗く悲しい気持ちで過ごしていたはずです。
明後日に予定されていたヒップホップ歌手のスヌープ・ドッグの大規模なコンサートも延期されたそうです。この状況でコンサートを行うなんてできるわけないので、仕方のない判断でしょう。
前回の記事に追記で書いたように、19日に始まったアゼルバイジャンが「対テロ軍事作戦」と呼ぶ攻撃は、20日にロシアの平和維持軍の仲介でカラバフ側と停戦合意に達したことで収束しました。アゼルバイジャンが要求していた軍の武装解除をカラバフ側が受け入れたからです。停戦合意が発表される少し前に、カラバフの大統領が「厳しい決断を迫られている」という声明を出したので、この結末の予兆はありました。
これは事実上のカラバフ側の全面降伏で、アゼルバイジャンへの再統合について交渉を行うことも受け入れました。約30年に及ぶアルメニア系住民による自治、またアルメニア含め国際社会からは未承認ですが、カラバフ国家の独立が終わることを意味します。
その双方の代表団による初会談は、奇しくもアルメニアの独立記念日であった昨日にアゼルバイジャン中部のエブラフで開かれました。ロシア平和維持軍の仲介の下、再統合に関する様々な課題について話し合われ、今後も交渉を続けることで合意したそうです。
交渉後にアゼルバイジャンの代表団は、「カラバフとの直接交渉が実現したことで、アルメニアと長年続いた対立が終わる可能性があり、平和条約締結に大きく近づいた」と述べました。ロシアの報道官も、「平和条約締結に必要な前提条件がすべて揃った」と述べました。
しかし、アルメニア人にとっては屈辱的なことで、内閣府や国会議事堂の前で抗議デモが行われています。参加者らは、現政府に大きな責任があるとして、パシニャン首相の辞任を求めています。ただ、基本的にエレバンは平穏で、多くの市民は普段どおりの生活を送っています。息子たちも学校に、妻も大学院に通っています。
政府に抗議している市民らの気持ちは理解できます。同胞民族が攻撃され、民間人を含む多くの死傷者が出ました。さらに、カラバフ国家が消滅しようとしているのですから、その怒りと悲しみは耐え切れないものでしょう。まして、虐殺など苦難の歴史があるので、今の状況に民族アイデンティティを深く傷つけられたと感じるのも無理ありません。
もちろんアゼルバイジャンの武力行使は非難されるべきものです。しかし、当ブログで何度も言及しているように、30年もの間、この領土問題を交渉によって解決できなかった責任はアルメニア側にもあります。譲歩や妥協をせずに根本的な解決を先延ばしたことで、問題をより複雑化させ、過酷な試練や悲劇を招いてしまったように思います。
昨日の独立記念日にパシニャン首相は演説で、「平和を休戦や停戦と混同してはならない。平和とは、二度と争いが起こらない環境であり、それを達成する道のりは容易ではなく、未来のために多くの困難を乗り越えなければならない」と述べました。
確かに、第一次カラバフ戦争後の”平和”は砂上の楼閣だったのではないでしょうか…そんな見せかけの平和は、常に多くの犠牲を必要とし、いつ破綻するか分からない脆いものです。それが3年前に現実のものとなりました。その厳しい現実を受け止め、真の平和を確立できるよう、隣国との対立を一刻も早く解決すべきだと思います。
とはいえ、この急激な状況の変化は予断を許しません。カラバフがアゼルバイジャンに再統合された場合、そこに住むアルメニア系住民の人権と安全が守られるのかは疑問です。たとえアゼルバイジャン側がそれを保証する用意があったとしても、これまでの根深い対立の歴史から、アゼルバイジャン統治の下で暮らすことを望まない市民は多いでしょう。
そのため、カラバフからアルメニア本土に多くの市民が移住してくる可能性があります。アルメニア政府は、「彼らが自分たちの故郷カラバフで安心して暮らせるよう、あらゆる努力を講じる」と述べていますが、移住者のために、すでに4万人以上の住居の提供準備があるとも述べています。
アルメニアに住む私にとって、今後どのように事態が展開していくかはとても重要なことです。しかし、何があろうと、きっといつか平和が訪れると信じています。愛するアルメニアの行末を、希望を捨てずに見守りたいと思っています。
そして、これからも多角的に情報を調べて、なるべく冷静に状況を見るよう努めながら、アルメニアの情勢を当ブログで伝えていくつもりです。
- [2023/09/22 18:02]
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