アゼルバイジャンがカラバフを攻撃 

今日は、日曜のワイナリー訪問のことをご紹介しようと思っていましたが、日本でも報道されていたように、カラバフが大変な状況に陥っているので、急遽それについて書きたいと思います。

昨日午後、アゼルバイジャン軍が首都ステパナケルトを含むカラバフ領域に砲撃を行っているという速報がありました。そして、境界線でも攻撃が行われているという情報も飛び込んできました。エッ!まさか?!と一瞬信じられませんでしたが、アゼルバイジャン政府が正式に「対テロ軍事作戦を開始した」と発表したことを知り、報道が事実であると分かりました。

3年前の同じく9月に戦争が始まった時は、いつものように数日で終わるだろうと思いました。しかし、その後にステパナケルトが砲撃されたというニュースを見た時に、「もしかすると本格的な戦争に発展するのでは…」と大きな不安に襲われました。昨日はそれと同じ不安と戦争のトラウマが蘇り、一気に暗澹たる気持ちになりました。

アゼルバイジャンは、今回の攻撃を「局地的な対テロ作戦」と呼んでいます。カラバフ領内のアルメニア軍の撤退や武装解除が目的だからだそうで、彼らの主張によると、アルメニア軍組織がカラバフに駐留して、銃撃や地雷埋設などの敵対行為を行っており、最近その地雷の爆発によってアゼルバイジャン人が死亡する事件が続発したとのこと。アリエフ大統領は、カラバフのアルメニア軍の武器引き渡しが作戦停止の条件だと述べています。

アルメニア政府は、自国軍がカラバフには駐留しておらず、事実無根だと否定しています。そして、「これはカラバフへの侵略攻撃であり、残虐な民族浄化だ」と激しく非難しています。カラバフからの情報によると、アゼルバイジャンの攻撃により、これまで民間人7人を含む32名が死亡し、200人以上が負傷したとのこと…また多くの血が流されている状況に胸が痛みます。

国際社会もこの深刻な事態に反応しており、各国はアゼルバイジャンに対し、即刻攻撃を停止するよう求めています。また、国連安全保障理事会は明日ナゴルノ・カラバフ問題を議論する会合を召集する予定だそうです。ただ、これらの要求や決議が事態の収束に繋がるかは疑問です。

係争地に平和維持軍を駐留させているロシアは、紛争当事者の双方と緊密に連絡を取り合い、事態の収束のためにあらゆる手段を講じていると述べました。そして、3年前に署名された停戦合意を履行できるよう、問題解決のプロセスを交渉のテーブルに戻すよう尽力していると述べました。

しかし、ロシアとその平和維持軍が、アゼルバイジャンの軍事行動を抑制しないことに一部のアルメニア市民は激しく怒っており、昨日はエレバンのロシア大使館前で抗議デモがありました。また、アルメニア政府が今回の事態に軍事介入しないと表明したことに反対する市民らが、内閣府建物の前で激しい抗議活動を行い、逮捕者や負傷者が出ました。政府はクーデターの危険があると警鐘を鳴らしています。

同胞民族の危機を見過ごせないという彼らの気持ちは分かりますが、国際社会も、またアルメニア政府も公式にアゼルバイジャン領だと認めるカラバフに軍を派遣すれば、それはアゼルバイジャンへの攻撃と見做され、再び二国間の大戦争に発展するのは確実で、トルコも同盟国アゼルバイジャンを支援するために参戦する可能性があります。そんなことになれば、いかに悲惨な事態を招くかは想像に難くありません。

ここ最近のニュースから不穏な空気や緊張の高まりがあったことは感じていましたが、あまりに突発的な出来事で、情報が錯綜しており、私自身も状況をどれだけ正確に把握しているか自信がありません。しかし、一方的な情報を鵜呑みにせず、なるべく感情を抑えて、冷静に事態を把握するよう努めています。とはいえ、平和への希望を打ち砕かれる現実を前にして、不安と悲しみで押し潰されそうになる自分がいます…

奇しくも明日9月21日は、アルメニアの独立記念日です。旧ソ連から独立して今年で32周年。アルメニアは1990年の8月23日に独立宣言を採択したのですが、先月パシニャン首相がそれを記念して発表したスピーチに、「平和が訪れない限り、アルメニアは旧ソ連の亡霊から逃れることはできない」とありました。

元はと言えば、カラバフ問題はスターリンの民族分断政策に起因します。その旧ソ連が残した負の遺産のために、独立後も長い間アルメニアとアゼルバイジャンは対立し続け、お互い多くの犠牲を払うことになりました。そして、いまだに争いの連鎖を断ち切れず、今回のような悲劇が起こりました。

3年前と同じく、戦争がいかに悲惨なものかを痛感しています。平和がいかに尊く、そして脆いものかを痛感しています。とにかく一刻も早く事態が収束することを祈っています。

追記:今日の現地時間13時、ロシア平和維持軍の仲介により、カラバフとアゼルバイジャンは停戦合意に達しました。カラバフ側は、アゼルバイジャンが要求していた軍の武装解除を受け入れたとのことです。そして、明日21日にアゼルバイジャン中部のエブラフで、双方の代表者がカラバフの今後について会談する予定だそうです。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://armeniajapan.blog54.fc2.com/tb.php/1407-b2d4ecb1