平和条約締結交渉の行方
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今日は朝から曇り空ですが、セーターやジャケットは不要なほど暖かくなりました。予報によると、まだ不安定な天気が続くみたいでちょっと気が滅入ります。しかし、気温はどんどん上がっていくようです。
昨日、次男レオのパスポート更新のために日本大使館に行ったら、ガーシー元議員に対する旅券返納命令の張り紙がありました。私はこの人の話題に全く関心がないのでよく分かりませんが、今は各国の日本大使館に同じ張り紙がされているのかもしれませんね。まあ、アルメニアに潜伏している可能性はゼロでしょうけど…
一昨日アルメニア政府は、これまで行われてきたトルコとの国交正常化交渉、またアゼルバイジャンとの平和条約締結交渉の詳細を発表しました。そして、議会でパシニャン首相が、かなり重要な発言をしました。というのも、実質的にナゴルノ=カラバフはアゼルバイジャンの一部であると認める内容が含まれていたからです。
パシニャン首相は、2007年のマドリッド原則によると、ナゴルノ=カラバフの法的地位などはアゼルバイジャンとの合意によって決定されるべきで、これは同地域がアゼルバイジャンの一部であることを認めているに等しいと述べ、さらにアルメニアはアゼルバイジャンの領土保全を完全に認めると発言しました。
そして、国際的に認められている両国の領土を相互承認することで平和条約の締結は可能であり、それは同時にナゴルノ=カラバフを実質的にアゼルバイジャンの一部と認めなければいけないと、パシニャン首相は述べました。この国際的に認められている領土というのは、旧ソ連時代の境界線に基づいているため、ナゴルノ=カラバフはアゼルバイジャン領になります。実際に、同地域の独立は国際的にほとんど認められていません。
パシニャン首相は、政府が上記のような自国にとって不都合な事実を長年伝えてこなかったことで、アルメニア国民とカラバフ市民を欺き、それが過去の紛争の原因となったと自戒の弁を述べました。そして、今その事実に向き合わなければ、アゼルバイジャンとの平和条約を締結することは不可能であり、アルメニアとカラバフ市民の安全保障のためには、国際社会の介入や協力が不可欠だと強調しました。
これは衝撃的かつ歴史的な発言かもしれません。野党や多くの市民の反発が予想されますが、ついにアルメニア政府が現実的な方向でカラバフ問題を解決する決意をしたように私は思います。3年前の第二次カラバフ戦争が起こってから、私はそれまでの知識や先入観を捨てて、改めてこの領土問題を多角的に調べるようになりました。すると、この紛争においても完全な善悪は存在しないこと、そしてアゼルバイジャンほどでないにしろ、アルメニア政府も自国にとって都合のいいプロパガンダを続けていたことに気づきました。
例えば、カラバフ周辺の領土をアゼルバイジャンに返還すべきということは、先述のマドリッド原則にもはっきりと明記されており、国際社会も履行するようアルメニアに求め続けてきました。しかし、過去のアルメニア政府は、その合意について国民に理解を求めようとはせず、交渉においても一切譲歩しませんでした。そうやって30年間も本質的な解決が先延ばしにされてきたのです。
とはいえ、元々アルメニア系住民が多く住み、ソ連崩壊時にアゼルバイジャンからの分離独立を求めたカラバフの扱いはとても難しい問題です。もしアゼルバイジャンに再帰属された場合、どれだけ強い自治権を与えられたとしても、住民の権利と安全が保証されるのかについては大きな懸念があります。アルメニア民族の長い苦難の歴史、また両民族の憎悪や反感の根深さを考えると、アルメニア人にとってそれは受け入れ難いことではないでしょうか…
ただ、その国民感情は十分理解できますが、厳しい現実に正面から向き合わないと、いつまでも憎悪と争いの連鎖を断ち切ることはできません。延々と人が傷つき命を落とすという悲劇が繰り返されます。これまで払われた多大な犠牲は、そんな終わりのない悲劇のためではなく、将来の国の平和のためであるべきです。そして平和を実現するためには、現実的な交渉を進めていくしかありません。
愛国心とは、敵対して戦うことだけでなく、国の未来にとって本当にどうすべきかを考えて苦渋の選択することも同じです。今コーカサス地域は、過去を乗り越え、平和な社会に近づくために重要な選択に迫られています。また、当ブログで何度も書いているように、世界は今ものすごい勢いで多極化しています。その大きな歴史の転換期において、この地域も融和していく必要があり、そのためにはトルコやアゼルバイジャンとの関係正常化は不可欠です。
3年前の戦争は、私にとって人生で最悪ともいえる経験でした。毎日多くの若い兵士が亡くなり、国全体が悲しみと怒りに覆われました。終わりの見えない悲惨な戦争の中で、いつも心は暗く重く張り裂けそうでした。希望を失いかけて、思わず涙が流れることもありました。そして、平和の尊さを嫌というほど痛感しました。もう二度とあんな経験はしたくないし、愛する息子たちにも将来してほしくありません。
アルメニアで教会を、日本で寺社を訪れた時に、いつも私は心から強くこう祈っています。「アルメニアに真の平和が訪れますように。息子たちの未来が、争いのない平和な社会でありますように」この歴史的な機会を逃さず、平和条約が少しでも早く締結されて、私の祈りが実現してほしいと思います。
一昨日は妻の従兄弟の息子さんの誕生日でした
晴れていると暑いぐらいの陽気で、水が冷たくて気持ちいい!
緑がまぶしい季節になってきました。アレンは半袖で遊んでいます。
兄弟で仲良く遊ぶアレンとレオ
息子たちの未来が平和でありますように!
アルメニアに真の平和が訪れますように!
- [2023/04/20 23:44]
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