ロリ地方に家族で一泊旅行 

暑い日が続いています。天気予報によると、この週末から気温が上がって、来週は猛暑になりそうです。夏の避暑地として人気のあるセヴァン湖で、昨日アルメニア首相杯水泳トーナメントが開催されました。外国人を含む男女133人が参加したそうです。セヴァン湖の水はとても冷たいから、そこで長距離を泳ぐってすごい!

死者16人、負傷者60人以上を出す惨事となったスルマル市場の爆発事故ですが、最後の一人の行方不明者は見つからず、捜索活動は打ち切られました。花火倉庫に引火した詳しい原因はまだ分かっていません。同市場の所有権を巡る争いに端を発したものではないか…という噂もあります。いずれにしても、多くの命が犠牲になった悲劇です。

日本に入国する際には、出発前72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書が必要ですが、9月7日からワクチンを3回接種している場合は、それが免除されるらしいです。こんな水際対策を今もやっている国なんて世界にほとんどないので、やっと免除になるのか…という感じです。というか、ワクチンには感染も重症化も防ぐ効果はないので、3回接種の条件さえ不要だと思いますけどね。

円安が続いていますが、ユーロの下落の方が激しく、ついにドルを下回ってしまいました。英米に追随して厳しいロシア制裁を行った結果、エネルギー危機に陥って、ドイツなどの経済へのダメージはかなり深刻。電気やガスの料金は高騰し、市民生活を圧迫しています。ウクライナ問題が長期化すればするほど、ロシアよりも欧州の方が甚大な影響を被ることになるでしょう…なのに、交渉による解決を阻害して、事態を泥沼化させている勢力がいるようです。それは恐らく戦争の当事国のウクライナやロシアではないと思います。

さて、日曜と月曜は家族でアルメニア北部のロリ地方に行ってきました。タシールという町を訪問して、2年前の戦争で亡くなった妻の友人のお墓参りと遺族に面会することが主な目的でした。その友人は、地元で極真空手を教えていたセヴァックという男性で、日本帰国中に極真館の盧山総裁とお会いした際に、遺族へのお土産を預かりました。それを早く手渡したいと思い、今回訪問することにしたのです。彼が戦死した際に書いたブログ記事があるので、どうぞご覧ください(こちら)

ティグランの運転でタシールの町に向かう途中、聖ニコライ教会に立ち寄りました。1840年に建てられたロシア教会で、以前から行ってみたいと思っていました。小さな村にひっそりと建つ教会は、約30年前のスピタク地震で半壊した後は再建されずに放置されたまま…ほぼ廃墟と化して、内部には入れません。逆にその寂れた感じがいい味を出していますが、ちょっと勿体ない気もしましたね。

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聖ニコライ教会。廃墟と化していますが、入り口の外にはロウソクを灯して祈る場所があります。

それから、セヴァックさんの家族が住むタシールの街に向かいました。奥さんは花屋を営んでいて、ちょうどお店で忙しそうに働いていました。私たちを見ると、嬉しそうにハグしてきました。盧山総裁がアルメニアを訪問して以来だから、4年ぶりの再会です。あの時は、まさかご主人が戦争で亡くなるなんて誰も想像だにしませんでした。そして、大切なご主人を失った悲しみはどれほどのものか想像もできません…笑顔で迎えてくれましたが、どこか表情には影があるように感じました。

奥さんの仕事がひと段落してから、一緒にセヴァックさんのお墓参りに行きました。彼の故郷である隣村の山に車で向かうと、立派なお墓がありました。祖国のために戦死した英雄であり、多くの人たちに慕われた素晴らしい人だったことが分かります。お墓を前にした妻は、悲しみを堪えきれず涙を流し始めました。そんな妻の姿と彼のお墓を見た時、私も悲しい気持ちになりました。

奥さんは、魂が抜けたような暗い表情を浮かべていました。これまで何度も涙が枯れるほど泣いてきたに違いありません。残酷な現実を受け入れようと葛藤してきたに違いありません。子供たちのために前を向こうと努力してきたに違いありません。しかし、ご主人が亡くなってまだ2年弱しか経っていないのですから、その喪失感や悲しみは癒えていないでしょう。同じような心の傷を負った遺族が数多くいると思うと、戦争の悲惨さを改めて痛感しました。

お墓参りの後は、セヴァックさんの実家を訪れ、彼の記念館を見学しました。元々は寝室だったそうですが、今は彼の思い出の品々が展示されています。セヴァックという一人の人間が生きていた証を見ていると、胸が締め付けられて涙が込み上げてきました。空手を愛した立派な指導者、そして家族を愛した素晴らしい夫であり、父親だった彼の命を戦争は理不尽に奪っていきました。その犠牲を無駄にしないように、そして同じ悲劇を繰り返さないために、二度と戦争が起こらない平和な社会になってほしいと祈りました。

それから、町の郊外にある廃材を利用して建てられたユニークなホテルの庭で食事しました。セヴァックさんの三人の子供たちも参加しましたが、みんな明るく元気そうで安心しました。もちろん大好きな父親のことを思い出して悲しくなる時はあるでしょうけど、彼らの無垢な笑顔に心が癒される気がしました。

セヴァックさんの友人で歌手のハイクという男性も参加して、その素晴らしい歌声を披露してくれました。私がギターを弾いて、アルメニアの有名な歌をたくさん歌ってくれました。アレンとレオも、セヴァックさんの子供たちと一緒に遊んでいたし、とても楽しいひと時になりました。お墓や記念館で暗く悲しい顔をしていた奥さんも、冗談を言ったり、一緒に歌ったりと楽しそうにしていました。その笑顔を見て、妻も嬉しそうでした。きっと天国でセヴァックさんも喜んでくれていたはずです。

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セヴァックさんのお墓訪問。立派なお墓でしたが、やはり生きていてほしかった…彼の冥福を祈りました。

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セヴァックさんの記念館を訪問。思い出の品々を見て悲しみが込み上げました。彼の遺志を継いで、多くの弟子たちが空手を続けています。

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広々とした草原にある廃材を利用して建てられたユニークなホテル。いい雰囲気でしたが、家族で泊まるには不便だったので今回は宿泊せず。

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ホテル周辺には、シュールなオブジェが置いてあります

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人懐っこい犬もいて、子供たちが喜んでいました

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みんなで食楽しい時間を過ごしました。セヴァックさんの奥さんも終始笑顔。女手一つで子供3人を育てる大変な生活の中、いい気晴らしになったかもしれません。

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子供たちもずっと仲良く遊んでいました

翌日は、私の20年来の友人に会いにハグパット村に向かいました。アショットというその友人は、当ブログにもよく登場しています。彼はティグランの長男のゴッドファーザーでもあり、昨年秋の洗礼式には、私たち家族も参加しました。そして、2年前の戦争直後に鮄川さんと彼の家を訪問した時には、とても意味深く、心が揺さぶられるような話をしてくれました。それについては、過去の記事をご覧ください(こちら)

今回は彼も奥さんも仕事で忙しかったので、険しい山の斜面にある眺めが良いことで有名なレストランで食事しました。お互いに約1年ぶりの再会を喜び合いました。出会ってから20年以上経っても、変わらず続く友情で結ばれていることを幸せに思います。レストランの料理の味はまあまあでしたが、景色は最高でした。今度はビールやお酒を飲んで過ごしたいと思います。

昼食後は、彼の家でコーヒーをご馳走になって、世界遺産にも登録されているハグパット修道院を見学しました。これまで何度訪れたか分からないほどですが、やはり荘厳で美しい修道院です。観光シーズンということもあり、アルメニア人や外国人の観光客がけっこういました。アルメニアはコロナ関連の規制がすべて廃止されているので、ロシアや欧米からのツアー客は戻ってきています。日本人のツアー客が戻るのはいつになるのでしょうか…

ハグパット村を後にして向かったのは、妻の養蜂家の友人が経営するゲストハウス。眺めのいい山の中にあり、ベッドの下にミツバチの巣箱が置かれていて、ミツバチの羽音やその振動を感じながら寝ることができるというユニークな宿です。私たち家族は何度か泊まったことがあり、その時のことは過去の記事に書いているので、どうぞご覧ください(こちら)

行ってみると、なんと家族で宿泊できるという大きめの小屋を2軒建てているところでした。内部にはトイレやシャワーを設置して、さらにベランダも付けるらしく、そこからは素晴らしい眺めを楽しめるでしょう。完成したら是非とも泊まりたいと思います。そこで採れた美味しい蜂蜜をご馳走になって、注文していた蜂蜜も受け取ってエレバンに帰りました。

ちょっとハードな旅行で、エレバンに着いた時はドッと疲れが出ました…戦争の悲惨さと遺族の悲しみに触れて胸が痛みましたが、平和の大切さも改めて思い知ることができました。そして、心温まる再会と交流があって、有意義な二日間となりました。本当に行ってよかったです。

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20年来の友人と奥さんと再会。眺めのいいレストランでランチしました。

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味もサービスもまあまあだったけど、素晴らしい景色を楽しめます

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ハグパット修道院を見学。世界遺産にも登録されている立派な中世の教会です。

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教会の壁の一部は、端から端まで落ちずに歩いたら願いが叶うと言われています。レオは体が小さいから、端まで歩き切れました。

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ロウソクを灯してお祈り。家族の健康と幸せ、そして平和を心から強く祈りました。

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ゲストハウスを運営する養蜂家を訪問しました

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家族で宿泊できる大きな小屋を建設中でした

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小屋からの絶景。ベランダから素晴らしい景観を楽しめそう。

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美味しい蜂蜜とコーヒーをご馳走になりました。ゲストハウスの拡張工事、頑張ってほしいです。

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彼の娘さんと一緒に記念撮影。美人の奥さんに似て可愛い!

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