停戦合意の締結から1年 

秋晴れが続いていますが、けっこう冷え込んできました。日曜は、日本語弁論大会が開催されて、それに出席した後、小さいお子さんのいる日本人家族と一緒に植物園に出かけました。陽が沈む頃になると、かなり寒く感じました。その日曜のことについては、またブログでお伝えしたいと思います。

1週間延長された秋休みが終わって、昨日からアレンとレオがまた元気に学校に通っています。やっぱり朝は眠そうですけどね。送り迎えをする私も眠いけど、通常通り学校が始まってよかったです。昨年の今頃のことを思うと、この何気ない日常をとても幸せに思います。

ちょうど1年前の今日11月9日、ロシアの仲介によって、アルメニアとアゼルバイジャンが停戦に合意し、第二次カラバフ戦争が終わりました。それが公表されたのは深夜1時過ぎだったので、停戦合意の事実を信じることができたのは翌10日でした。それまでの1か月半は本当に暗く重い日々だったので、ついに悲惨な戦争が終わるのか…とホッとしたのを覚えています。

しかし、アルメニアを覆った深い落胆と悲しみ、そして激しい怒りも覚えています。事実上の敗戦という結果を受けて、停戦合意発表の直後に、反対する市民らが政府建物や首相官邸に乱入する事件が起こりました。国会議長が暴行を受け、病院に緊急搬送される事態にも発展しました。パシニャン首相らを売国奴と呼び、退陣を求めるデモも行われました。当時のことについては、1年前の記事をご覧ください

あれから1年…停戦後の数ヶ月は、国内政治が混乱し、情報が錯綜しました。カラバフからの難民の処遇、破壊された家やインフラの再建、新たな国境線の策定、アゼルバイジャンに囚われた捕虜の返還、今後の安全保障など、困難な問題が残されました。それらの解決には、まだまだ多くの時間や労力を要するでしょう。

停戦協定には、この地域の経済および輸送の封鎖や制限を解除することが明記されていますが、今も境界線で散発的な衝突が起こり、国同士の対立は根深いままで、交渉プロセスは停滞しています。過去の虐殺問題で対立し、緒戦でアゼルバイジャンを全面的に支援したトルコに対する憎しみや不信感は悪化しました。

そして何よりも、戦争で愛する家族を失った人たちの深い悲しみは、1年経った今も全く癒えていないでしょう…1か月半の戦争で数千もの命が奪われました。その多くは20歳前後の若者です。私も二人の息子がいるので、一生懸命育てた子供が自分より先に死んでしまうという悲劇に見舞われた親の気持ちを思うと胸が詰まります。

また、たとえ命が助かっても、戦争で手足や視力などを失い、重い障害を背負った兵士、PTSDなど精神に深い傷を負った兵士も数多くいます。彼らとその家族は、今後の人生を困難と共に生きていかなければいけません。

停戦からちょうど1年が経ち、計り知れない悲しみや苦しみを生み出す戦争ほど悲惨なものはないと改めて思います。そして同時に、平和ほど尊いものはないと痛感します。先に書いたように、依然として様々な問題があり、民族間の憎悪や対立も解消されていませんが、終わりの見えない戦争に心を傷ませることなく、平穏に家族と過ごせる今はどれほど素晴らしいか…

30年も交渉を繰り返して解決できなかったのですから、あの戦争は遅かれ早かれ起こったことだと思います。そして、いざ本格的な戦争が始まってしまうと、勝敗が全てを決めることになり、どちらか一方に不都合な結果が起こることは避けられません。残酷ですが、それが戦争というものです。だからこそ全力で回避しなければいけないのです。

しかし、私はきっと昨年の戦争にも意味があると思っています。より良い未来に繋がる変化だと信じています。どれだけ長く困難な道だろうと、必ずその先に平和な社会を築くことができると希望を持っています。それこそが、戦争という悲惨な過去を乗り越える方法であり、犠牲者への何よりの弔いになるはずだからです。

歴史的な停戦合意が締結された11月9日がいつか、互いに争った民族同士で平和を喜び誓い合う日になることを願っています。

「もし我々が空想家のようだと言われるならば、救いがたい理想主義者だと言われるならば、できもしないことを考えていると言われるならば、何千回でも答えよう…”その通りだ”と」 チェ・ゲバラ

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植物園で嬉しそうに遊ぶ子供たち。1年前は、戦争を知らない子供たちの無邪気な笑顔を見ると辛い気持ちになりました。平和な未来が訪れますように!


私が戦争中によく聞いていた歌「One Day」。これは、イスラエルのハイファで、ユダヤ人とアラブ人が集まって一緒に歌ったイベントの動画です。

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