アルメニアの学校で語った平和の意味 

今日は晴れていますが、最近は雨が降ったり止んだりの不安定な天気です。といっても、夕立なので、しとしと降り続くことはありません。春から夏へと季節が移り変わっている時期なのでしょう。

前回の記事に書いたように、バイデン大統領がアルメニア人迫害を「虐殺」と認定する声明を出しましたが、トルコのエルドアン大統領は、原爆投下などに触れて、「鏡を見よ!」と米国を批判しました。プーチン大統領も、同じくバイデン大統領に「殺人者」と呼ばれた際に、原爆投下を引き合いに出して反論しました。

確かに、原爆投下も非難されるべき大量殺戮だと思います。米国では、戦争の早期終結のために必要だったと原爆を肯定する世論がいまだに強いですが、多くの一般人を殺害して苦しめたあの攻撃には必要性も正当性もありません。敗戦国の行為であれば、史上最悪の戦争犯罪の一つとして断罪されていたでしょう。しかし、そんな残虐なことが起こるのが戦争というものです。

さて、昨日アレンが通う学校で、日本について学生たちが発表をするということで、私と妻が招待されました。中学生の授業では、世界の国々のことを調べるという課題が出されるらしく、定期的に発表会を開くそうです。今回のテーマは日本で、自分たちで調べた日本の歴史や文化などについて発表してくれました。途中、日本の踊りも披露されましたが、服がチャイナドレスだったので、次は浴衣を貸してあげようと思います。とにかく、日本のことを取り上げてくれて嬉しかったです。

最後に、私が日本とアルメニアの教育の違いなどについて簡単に話す機会がありました。それから、学生たちの質問に答えたのですが、ある女の子から、「日本人にとって平和とは何ですか?」という質問がありました。けっこう深い質問が来て驚きましたが、学生たちの発表では、広島と長崎の原爆について詳しく話されていましたからね。

少し考えてから、私は次のように答えました。「平和とは戦争がないことだ。みんなの発表にもあったように、日本は原爆を2つも落とされ、無条件降伏をして、本当にひどい負け方をした。全てを失った。でも、戦後の76年間、戦争で一人の日本人も死んでいないし、他国の人間を一人も殺していない。反対に、勝ったアメリカはずっと戦争をやっている。この日本の平和は、戦争で勝つことよりもっと価値があると思う」

私の率直な意見ですが、話した直後に、どう受け止められるか不安になりました。昨年の戦争で、アルメニアは事実上の降伏という辛い経験したばかりなので、所詮は外国人のきれいごとだと思うかもしれない、そして不快に感じるかもしれない…と思ったのです。しかし、私の言いたいことが伝わったのか、みんな拍手してくれました。

もちろん、中には複雑な気持ちの人もいたと思います。当事者のアルメニア人にしたら、大幅な譲歩を迫られて領土を失ったことに不満と喪失感を持つのは当然かもしれません。今もトルコやアゼルバイジャンに対して、憎悪と不信感を抱くのも仕方ないかもしれません。しかし、私は、戦争前の状況がよかったとは決して思えないし、緒戦の結果を完全にネガティブなものとは捉えていません。

アルメニアがどれだけ自分たちの正当性を主張しようと、アゼルバイジャンには別の主張があるので、大きな妥協をしない限り相容れることはありません。その妥協ができない中、お互いに敵対し、前線では若い兵士が毎週のように命を落としていました。領土のために多大な代償を払い続けることで、より頑なになっていく…そんな悪循環に陥っていました。

ご存知の通り、昨年その状況に大きな変化が起こりました。結果はアルメニアにとって屈辱的なもので、多くの尊い命と領土を失いました。捕虜返還の問題などは未解決のままで、先行きは依然として不透明です。しかし、私は、起こったことは全て必然であり、きっとそこに何か意味があるはずだと思っています。少なくとも、平和からは程遠かった膠着状態に変化が訪れました。

もし様々な障害を乗り越えて、戦争で誰も死ぬことなく、誰も殺すことのない真の平和が訪れれば、アルメニアの人たちは、昨日私が学校で話したことを理解してくれると思います。自分の子供たちの世代のために、そんなより良い未来を築くべきです。そして、そんな未来がきっと来ると信じています。

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アレンが通う学校の中学生たちが、日本についてのプレゼンを行ってくれました。

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文化や歴史、宗教や言語など調べたことを頑張って発表していました。次回は、アニメと武道についても調べたら面白いかもと提案しておきました。

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日本の踊りも披露してくれました。踊りは様になっていたのですが、衣装がチャイナドレスだったので、次回は浴衣などを貸してあげるつもりです。

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息子たちの世代が戦争の心配などせずに暮らせる平和な未来が訪れますように!道のりは困難かもしれませんが、きっとそうなると信じています。

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