妻の尊敬する大切な友人が戦死… 

米国を歴訪中のアルメニア外相は、ポンペオ国務長官やOSCEミンスクグループ共同議長らと会談しました。昨日トランプ大統領は、「私も交渉に参加する意思がある。良好な関係を持つアルメニアと協力していく」と述べました。アルメニアを支持する内容でしたが、自身のポリシーというより、間近に迫った選挙のために、ユダヤロビーに次ぐ強さと言われるアルメニアロビーを意識して行った発言という面は否めません。

それは、トランプ政権になってからの軍事支援の動きを見れば明らかです。元々アメリカは長い間、アゼルバイジャンに対してアルメニアよりも多くの軍事支援を行ってきましたが、ここ数年アゼルバイジャンへの軍事支援は大幅に増えて1億ドルに達しています。逆にアルメニアへの軍事支援は減少して、今年は約210万ドル…50倍近い差があります。こんな状況でアルメニア支持を表明されても何か裏があるとしか思えませんけど、悲しいかな、それが国際政治というものなのでしょう…

ナゴルノ=カラバフを巡る戦争の状況ですが、現在も境界線各地で戦闘が続いています。アルメニア国防省によると、現在までにカラバフ・アルメニア軍兵士974名が亡くなったとのことです。また、昨日はステパナケルトや前線近くの村々に激しい砲撃が行われたそうです。

紛争の現地調査を行っているヒューマン・ライツ・ウォッチは、アゼルバイジャン軍が市街地などに向けて、国際条約で禁止されているクラスター爆弾などの武器を使用していると伝えました。これが本当であれば戦争犯罪ですが、アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜を殺害したという新たな証拠も見つかりました。アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜を殺害した様子を収めた新たな映像をBBCニュースが検証した結果、指示する兵士の言語がアゼルバイジャン語の方言であること、また兵士のヘルメットや銃がアゼルバイジャン軍の使用するものだったそうです。

一方、アルメニアは、アゼルバイジャン人捕虜を人道的に扱い、ケガの治療や手術も行っています。今月初めに拘束され、カラバフ内の病院で手術を受けたアゼルバイジャン人兵士が、「自分が所属していた部隊の兵士のほとんどはアゼルバイジャン人ではなかった」と述べました。トルコが数千人ものシリア人傭兵やイスラム過激派テロリストを派遣している事実が改めて裏付けられました。

また昨日は、アゼルバイジャン軍の砲撃を受けて損壊したシューシの街のガザンチェツォツ大聖堂で、1組のアルメニア人カップルが結婚式を挙げたそうです。新郎は、志願兵としてカラバフ軍に従軍しており、式でも軍服を着て参加していました。この二人が幸せな新婚生活を送れる日が一刻も早く来ますように…

さて昨日は、元学生のティグランとセバン湖に行ってきました。用事があって2か月ぶりに会ったのですが、戦争のせいで悲しいニュースばかりが続き、お互い息苦しさを感じていたので、気分転換のために少し遠出したのです。暗い気持ちで過ごしたところで状況が改善するものでもありませんからね。ちなみにティグランも従軍を志願したそうですが、持病のせいで兵役に就いた経験がないため断られたそうです。彼は残念がっていましたが、私としては戦争に行ってほしくありません…

澄んだ秋晴れで、木の葉も色づき、絶好のドライブ日和でした。とはいえ、会話はやはり戦争のことばかりでしたが、ティグランの友人のほとんどは従軍しているため、前線の生々しい状況を聞くことができました。「毎日2、3時間しか寝れず、早朝から深夜まで戦闘が続く」「若い兵士は、砲撃音や悲惨な戦場を見てショック死することもある」など想像以上に過酷…そんな中で、多くのアルメニア人兵士が勇敢に戦っていることに感銘を受けますが、同時に多くの命が犠牲になっている現実を思うと胸が痛いです。

目的地のセバン湖は、柔らかい陽光に照らされて、とても美しかったです。不変の自然の美しさに触れて、久しぶりに心が安らぎました。湖の半島にあるセバン修道院を訪問して、一刻も早い事態の収束と平和を祈りました。そして、先日亡くなったアルメニア人の知人の冥福を祈りました。その人は妻が尊敬する友人で、木曜の夜に前線で亡くなったという訃報が届いたのです。覚悟はしていましたが、ついに知人が戦死してしまいました…

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久しぶりに会ったティグランとセバン湖まで足を伸ばしました。木の葉が色づいて、すっかり秋の景色でした。

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寒くなかったし、美しい湖の景色に心が癒されました。コロナと戦争の影響で、人はほとんどいませんでした。

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修道院の壁に白い鳩が止まっていました。平和の象徴ですね。

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夕暮れ時の帰り道から、アララト山が美しく見えていました。雄大な自然は、何事もないかのように、ありのままに存在し続けています。

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最後にエレバンの勝利公園に立ち寄りました。戦死した英霊に捧げる慰霊の火があります。この戦争で亡くなった兵士のために祈りを捧げました。

彼は、タシールという地方の町で極真空手の道場主を務めていた人で、名前はセヴァックと言います。本部の日本の極真館から指導者が来られた際に、いつも妻が日本語通訳を引き受け、それが縁で仲良くなりました。2年前の盧山館長の訪問時に、私もセヴァックさんと奥さんに何度かお会いしました。その時のことは過去の記事にも書いています。

いつも妻が、「本当に立派で素晴らしい人」と言っていましたが、私も初対面から、彼の純粋で優しい人柄が伝わりました。誰にでも謙虚で誠実で、とにかく空手を心から愛していました。その技術と向上心、何より立派な人格は、多くの弟子たちに慕われ、盧山館長からも高く評価されていました。そのため、2年前には31歳という若さで、館長から直々に師範の位が授与されました。

妻から聞いた話ですが、セヴァックさんは貧しい幼少期に、毎日ヒマワリの種を売って空手を習うお金を工面していたそうです。苦労しながら必死で空手を学び、ついには極真空手の指導者となりました。周囲の支援を得て、日本のセミナーや海外の国際試合にも参加し、アルメニアにおける空手の向上と普及に努めました。自身が苦労人だからか、貧しい家庭の子供たちには無料で教えたりもしていたそうです。生きていれば、優れた空手家の育成など多大な貢献がもっとできたはずです。

セヴァックさんの訃報を聞いた盧山館長は、言葉を失うほどショックを受けていたそうです。彼のことをよく知る国内外の空手の指導者たちも同様に大きなショックを受けて、深い哀悼の意を表しました。まだ33歳の空手家が戦争で亡くなるという事実は、簡単に受け入れられるものではなく、特に平和な日本に暮らす人にとっては全く現実とは思えないかもしれません。

私の妻も、共通の友人から訃報を伝えられた時は、かなりショックを受けていました。戦争発生後すぐに志願して戦地に向かったと聞いてから、ずっと彼の安否を心配して、フェイスブックに軍服姿で元気そうにしている写真が投稿されると、心底ホッとしていました。そうやって無事を祈り続けていた妻にとって彼の死は信じがたいもので、「あんな素晴らしい人が…もったいなすぎる」と号泣していました。

しかし、誰よりも辛いのは彼の家族。セヴァックさんには、愛する奥さんと幼い3人の子供がいます。大切なご主人、そして大好きな父親を失った家族の悲しみはどれほどのものか…それを思うと胸が締め付けられ、涙が溢れてきます。こんな残酷な悲劇が、今ここでは毎日のように起こっているのです。本当に、本当に戦争が憎いです。

昨日ティグランと話している時に私は言いました。「戦死した人たちのために、土地を巡って争い続けるのではなく、これからの命が戦争で死ぬことのない未来を築くこと。それが本当の弔いになるんじゃないか…」 まだ激しい戦闘が続いている今、こんな意見は空しい理想論かもしれません。加えて、今回はトルコが深く関与しているため、単なる領土問題とは言えない部分があります。

しかし、妻の大切な友人であり、立派な空手家であり、また一人の素晴らしい人間が、多くの弟子や大切な家族を残したまま、若くして旅立っていく…そんな悲劇がこれ以上起こってほしくありません。それで悲しむ人たちをもう見たくありません。戦争ほど悲惨なものはなく、平和ほど尊いものはないと嫌というほど痛感しています。一刻でも早く収束することを祈ります。

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2年前のセミナーで、盧山館長や日本の指導者、また私の妻と映るセヴァックさん。尊敬する盧山館長の訪問をすごく喜んでいました。

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そのセミナーで、極真館では最年少となる師範の免状を授与されたセヴァックさん。大切な愛弟子を失った盧山館長も大きなショックを受けています。

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亡くなる10日ほど前の写真。妻は、戦地で元気そうにしている写真を見ては安心していました。そして、無事を祈り続けていました。

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妻はセヴァックさんのことを本当に尊敬していました。同じように多くの人が、彼の早すぎる死を心から惜しんでいます。享年33際…ご冥福をお祈りします。

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セヴァックさんと家族。彼は、母国のため、家族のために勇敢に戦って亡くなりました。しかし、残された家族のことを思うと、もっと生きてほしかった…尊い命と幸せを理不尽に奪う戦争が心底憎いです。

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