2回目の一時停戦も履行されず…
- アルメニア情勢
- | トラックバック(0)
- | コメント(0)
日曜は、長男アレンを人形劇に連れて行き、その後、一緒にカフェで食事しました。元々は家族みんなで行く予定だったんですが、次男のレオは少し風邪気味だったので、妻とお留守番…ちょっと微熱もあって、それだと検温で引っかかる可能性がありますからね。帰りは、展望台から雄大なアララト山とエレバンの景色を眺めました。その美しい光景も、今は少し物悲しく見えてしまいます…
ナゴルノ=カラバフを巡る紛争は現在も続いています。土曜の夜、改めて人道目的の一時停戦に双方が合意し、18日0時から開始されたにも関わらず、すぐアゼルバイジャン軍からの攻撃が起こったため、結局そのまま激しい交戦が継続されているのです。アゼルバイジャン側は、カラバフ・アルメニア軍が攻撃したと非難していますが、いずれにしても2回目の一時停戦合意も履行されませんでした…それほど期待していませんでしたが、またしても収束の見込みが消えて落胆しました。
アルメニア国防省によると、軍事衝突発生から現在までにカラバフ・アルメニア側の兵士729人が亡くなったそうです。もちろんアゼルバイジャン軍にも人的損失は出ていますが、向こうはトルコやイスラエルの高性能ドローンを多用している上に、国内の少数民族、そして数千人もの外国人傭兵やテロリストを前線で戦わせているため、アゼリー人はそれほど亡くなっていないかもしれません。アゼルバイジャン人男性の志願兵より、アルメニア人女性の志願兵の方が多いのでは…なんて笑えない話もあります。
結局アゼルバイジャンにすると、たとえ想定していたほど領土を奪還できなくても、アルメニアに甚大な人的損失を与えることができれば目的を十分達成したと言えるのかもしれません。資源のない小国アルメニアにとって、人材こそが最も重要なリソースであり、それが失われると、国の将来にとって深刻な損失になります。いずれにしても、毎日のように多くの若い兵士の命が消えていく現実は辛すぎます。身内や友人、知人や同僚の誰かが戦場に行っているアルメニア人たちは、私の何十倍、何百倍も辛くて不安な日々を送っているはずです。
昨日、現地を視察するためにナゴルノ=カラバフを訪問していたドイツの国会議員が、アゼルバイジャン軍による教会や民間施設への攻撃、またクラスター爆弾など国際条約で禁止されている武器の使用を目の当たりにしたと述べ、明らかな戦争犯罪だとトルコとアゼルバイジャンを厳しく非難しました。同議員が現地を訪問した理由の一つは、ドイツで正確に情報が報道されていないからだそうです。ドイツには約300万ものトルコ移民がいますからね…その欧州を含む国際社会が沈黙し続けているため、カラバフから避難してきた女性たちが、今日エレバンの国連事務所前でデモを行いました。
もちろんアルメニアだけでなく、アゼルバイジャンでも民間施設などには同様の被害が出ており、アルメニア側も、「軍事施設を狙った攻撃だが、民間人にも被害が出た」と否定はしていません。私も、そういう攻撃や被害について肯定するつもりは全くありません。ただ、先日のギャンジャの街で起きた民間施設への攻撃についてはかなり疑問の余地があります。
日本でも報道されたと思いますが、これは、17日未明にギャンジャの住宅地域が30発ものミサイル攻撃を受けて、13人が死亡、50人以上が負傷したという事件です。アゼルバイジャン側は、すぐアルメニア軍による攻撃だと断定し、「必ず報復する」と激しく非難しました。11日にも同様の事件が発生していますが、どちらもアルメニア側は様々な根拠を出して強く否定しています。なのに、それについては全く報道されません。
アルメニアが述べた根拠は以下の通り。30発のミサイル攻撃と言われているが、爆発は1回しか起きていないこと、もし砲撃であれば二次攻撃の可能性が高いにも関わらず、事故直後にレスキュー隊や民間人や報道機関が現場にいたこと、使用された兵器の特定には時間を要するにも関わらず、アゼルバイジャンは即座にスカッドミサイルだと公表したこと、また使用したとされるロケットランチャーの射程距離は20キロで、ギャンジャには全く届かないこと…素人目にもアゼルバイジャンの主張には矛盾点が多すぎます。
さらに、そのギャンジャの惨状を伝えるアゼルバイジャンの報道資料が捏造だらけで、かなり信憑性に欠けています。例えば、跡形もなく破壊されたという被害地の写真は、19年前のインド・グジャラート州で起きた大地震のものだったり、救助された子供にアゼルバイジャン人兵士が水を飲ませる写真は2015年のトルコ兵士のものだったり、さらに酷いのは、泣き叫ぶ遺族の写真が、なんとカラバフ側の遺族のものだったり…公表する前に気づかなかったの?!とさすがに呆れます。
爆発事故そのものは事実であり、被害に遭った人々に対しては心底可哀想に思います。ただ、上記のような点から、アルメニアによる大規模な空爆だったと断定することには違和感を感じます。もちろん何かしらの大爆発があったことは確かで、アルメニアからの攻撃ではないとも言い切れませんが、いつもアゼルバイジャンのプロパガンダがあまりに酷いため、これも疑わざるを得ないのです。
例を挙げると切りがありませんが、例えば、別のアルメニアの砲撃による被害だという写真が21年前の台湾大地震のものだったり、砲撃の現場の様子を伝えた男性レポーターが、翌日アゼルバイジャン軍兵士を演じていたり、砲撃で家を失くしたという少女が涙ながらに被害を訴える写真は、ヘアメイクや演技指導をしてスタジオで撮影されたものだったり…大袈裟を通り越して、悪質な偽装や捏造をされた情報が多いのです。
戦争は情報戦でもあるので、どの国もプロパガンダを行います。アルメニアも、この非常時なだけに自国に有利な情報ばかりを流している面は否めません。しかし、さすがにアゼルバイジャンのは度を超している気がします。まあ、アリエフ一族が人権や情報を厳しく統制している独裁国家で、最新の報道の自由度ランキングでも、世界180ヶ国中168位でしたからね…ちなみにアルメニアは61位で、なんと66位の日本より上!
それでもアゼルバイジャンは、かなりお金をかけて自国に有利な情報を世界中に喧伝し、プロパガンダ戦略はかなり上手くいっているように思います。先日ブログ記事で書いたように、トルコもTRTニュースなど自国メディアを活用して、アゼルバイジャン贔屓の情報を発信し続けています。逆にアルメニアは悪質な捏造などがない分、情報戦で後塵を拝して不利な状況です。
そのため、私も可能な限り、ブログなどでアルメニア側の情報や見解を伝えるようにしていますが、トルコやアゼルバイジャンに対する嫌悪感情を煽るつもりはありません。双方に大きな被害が出ており、それはどちらにとっても戦争の悲劇です。また、どんな手を使ったとしても、最後は勝った側が正義になってしまうのが戦争の非情な掟であることも分かっています。
しかし、今回の紛争におけるトルコやアゼルバイジャンの行動は明らかに一線を超えています。にも関わらず、それに関する報道は乏しく、また偏っているため、当ブログを通して少しでも多くの人に知ってほしいのです。そして、戦争の悲惨さと平和の尊さを改めて考えてほしいと思っています。
アレンと見た人形劇。いつもの如くアレンだけテンション低めでしたが、他の子供たちは大喜びしていました。子供の無邪気な笑顔が、今はより眩しく映ります。
劇の後は、アレンとカフェに行きました。ピザを気に入ったみたいで、たくさん食べていました。
天気が良かったので、帰りに展望台に上がりました。そこからはアララト山とエレバンが一望できます。なぜかガイドみたいなポーズを取るアレン。
夕焼けがとても美しかったです。いつもと変わらない一日の終わりが、今は奇跡のように感じることがあります。
夕陽に染まるアララト山とエレバン。この国は、街は、人は本当に美しいです。この愛する場所に一刻も早く平和が訪れますように…
- [2020/10/19 21:53]
- アルメニア情勢 |
- トラックバック(0) |
- コメント(0)
- この記事のURL |
- TOP ▲
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://armeniajapan.blog54.fc2.com/tb.php/1151-ed8b75ca
- | HOME |
コメントの投稿