アルメニアの英雄の早すぎる死
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コロナに感染していたトランプ大統領が退院して、米国民にメッセージを送りましたが、「ウイルスに人生を支配されてはいけない!」という言葉に強く共感しました。メディアは懲りずにまた、「コロナを軽視している!」と批判して、逆にマスク着用義務を訴える民主党を支持する材料にしていましたけどね…
戦争でコロナどころではないアルメニアも、最近ピーク時と同じレベルのペースで感染者が増えていて問題になっていますが、気温が下がって風邪が流行る時期なんだから当然です。コロナも風邪ウイルスの一種な訳で、これから寒さが本格的になっていけば増えるに決まっています。大切なのは重症化率や致死率で、それは世界全体で低下する一方。トランプ氏の言う通り、これ以上ウイルスに思考や人生を振り回されるのはやめるべきです。
さて、ナゴルノ=カラバフ情勢ですが、前線全域での戦闘、またステパナケルトなどの市街地への砲撃は続いています。しかし、この2日間の報道を見ていると、少し状況は落ち着いてきたように感じます。今日は、プーチン大統領の呼びかけに応じて、アルメニアとアゼルバイジャンの両外相がモスクワで会談するそうです。ロシアなどが積極的に動き出したため、今回の問題の焦点は、次第に戦場から交渉テーブルへと移っているのかもしれません。
また、前回の記事の追記にも書いた、トルコ軍のF-16戦闘機がアルメニア軍機を撃墜したという疑惑。アゼルバイジャンとトルコは同戦闘機の存在を否定していましたが、衛星写真などの決定的な証拠も出てきたため、アリエフ大統領がCNNのインタビューで、自国内にあることを認めたようです。地上に配備されているだけで使用していないと述べたそうですが(苦しい言い訳やな…)、これでトルコの直接的な関与は疑いの余地がなくなってきました。
また、シューシの街のシンボルであるガザンチェツォツ大聖堂が、昨日2回もアゼルバイジャン軍の砲撃を受け、ドームなどが損壊したそうです。その砲撃によって取材中だっジャーナリスト3人が負傷し、うち1人のロシア人が重傷とのことです。前々回の記事に写真を載せたように、この大聖堂には私も訪問したことがあり、貴重な文化・宗教施設まで狙った攻撃には怒りを禁じ得ません。
しかし、何より辛いのは人の死…新たにアルメニア側の兵士50人以上と一人の民間人が命を落としたそうです。その中にアルベルト・ホヴァニシヤンという若い兵士がいました。徴兵で従軍していた大学生でした。戦場で迫撃砲を撃つ彼の写真は、勇敢なアルメニア軍の象徴となっていましたが、昨日、その父親がネットで息子の死を伝えるメッセージを投稿しました。
そこには、「最愛の息子を失い、言葉では言い表せない深い悲しみの中にいるが、それ以上に、愛国心に溢れたアルメニアの英雄の父親であることを誇りに思う…」と書かれていました。私も二児の父親なので、大切な息子さんを失った悲しみは如何ばかりか想像に難くありません。このメッセージを読むと、今も涙が溢れてきます。
名誉の死を遂げた息子のことを誇りに思うとありますが、親として、やはり生きて帰ってきてほしかったに違いありません。「よく無事で帰ってきた」と抱きしめてあげたかったに違いありません。息子さんのこの先の人生を見守ってあげたかったに違いありません。その親の思いを、そして若者の尊い未来を、戦争が無慈悲に奪い去ってしまいました…
すでに2週間続くこの軍事衝突も、ロシアなど国際社会の介入によって収束する希望が出てきました。依然として激しい交戦が続いているだけに交渉が難航することは確実ですが、この数日内に休戦合意がなされる可能性もあります。しかし、失われた命はもう戻ってはきません…その犠牲を無駄にしないよう、新たな憎悪や争いの連鎖ではなく、平和がいつか築かれてほしいと思います。
追記:ロシアの仲介によってモスクワで行われた両国外相会談の結果、一時停戦の合意がなされました。協議は11時間に及び、難航を極めたそうです。戦闘は10日正午に停止され、赤十字の仲介による捕虜の交換や遺体回収作業などが行われるとのこと。また、OSCEミンスクグループ共同議長の調停の下、平和的解決に向けた交渉を再開する予定だそうです。アゼルバイジャンが求めていた調停へのトルコの参加は退けられました。
今回の戦争のアイコンとなった写真。この勇敢に戦うアルベルト兵士の姿に、多くの国民が鼓舞されたでしょう。しかし、彼も戦争の犠牲となりました…今は多くの国民が悲しんでいます。
幸いエレバンは普段とあまり変わりなく、昨日も息子たちをレゴ教室に連れて行きました。レオも楽しくレゴで遊んでいます。
アレンが作ったレゴを嬉しそうに動かしています。親というのは、こんな小さな時から子供の姿を見ています。その大切な存在を早くに失う苦しみを思うと、胸が張り裂けそうになります…早く収束することを祈ります。
- [2020/10/09 23:02]
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