軍事衝突勃発から1週間 

ナゴルノ=カラバフとアゼルバイジャンとの境界線で軍事衝突が勃発してから1週間が経ちました。ほんの1週間前までは、当ブログで普段の生活やコロナのことなどについて書いていました。今思えば、とても平和な日々でしたね…アルメニアでは、その平和が決して当たり前ではなく、とても脆いものだということを改めて痛感しています。

今回の軍事衝突については、日本でも、毎日のように報道されていると聞きました。恐らく小さな扱いだとは思いますが、1994年の停戦以来の大規模な衝突となっている上に、ロシアや米国、フランスが即時停戦を求める声明を出し、国際社会が本腰を入れて動き出したからでしょう。先日の記事に書いたように、どちらか一方に軸を置くことのない公平な報道を求めます。

現在の状況ですが、アルメニア国防省の発表によると、今日は境界線でかなり激しい交戦が続いており、ナゴルノ=カラバフ大統領自身も部隊を率いて参戦しているとのこと。現在までに、アルメニア軍兵士198名が亡くなったそうです。また、昨日から首都ステパナケルトなどが攻撃対象となっており、複数の民間人が負傷し、インフラが破壊されたそうです。

また、一昨日の深夜、アゼルバイジャン軍のドローン4機がアルメニア領内を飛行して、うち3機は国境近くの村々を攻撃、民間人1人が亡くなり、2人が負傷しました。そして、残り1機は、なんとエレバン北隣のコタイク地方を飛行していたそうです。4機とも防空システムによって撃墜されましたが、さすがに身近に危険を感じてヒヤッとしました…

ここに住み始めてからの11年間に、アゼルバイジャンとの軍事衝突は何度かありましたが、エレバンも攻撃されるのか?!と思ったのは初めてのことです。というより、自分たちも戦火に巻き込まれるかも…と不安になるなんて、人生で初めてのことだったと思います。一瞬の恐怖でしたが、何よりも妻や息子たちのことを本気で心配しました。やはり、これまでとは比較にならないほど深刻な衝突と言えます。

しかし、逆にその恐ろしい体験で肝が座ったのか、また軍事衝突から1週間が経ち、この緊迫した状況に徐々に慣れてきたのか、以前にも増して冷静に状況を見守るようになりました。そして、もっと多方面の情報をより客観的に見るようになりました。そこから改めて気づかされるのは、一方的な情報を鵜呑みにしたり、空気に流されることの危うさです。

この紛争においても、情報が錯綜しているため、何が正しいのか判断するのは困難な状況です。アルメニアとアゼルバイジャンはそれぞれ全く異なる主張をしていて、お互いに非難の応酬が続いています。双方は自軍の戦果や相手の被害を強調するばかりで、他の情報に関する言及を避けています。例えば、アゼルバイジャン側は自軍兵士の死者数をこれまで一切公表していないし、アルメニア側は奪還に成功したという村や地域について詳しく述べていません。

もちろん、戦争において情報戦は大きな役割を果たすので、上記のことは仕方ありませんが、正確に現状を把握する上では障害になります。そのため、第三者の報告やメディア情報も当初より多く見るようにしています。もともと国際政治などを裏読みするのが好きなので、興味深い内容が多々ありました。

そして、それらの情報を基に、今回の軍事衝突のきっかけやこれまでの展開、トルコ軍のアゼルバイジャンへの関与や先日のドローン侵入、リビア情勢を含むロシアとトルコの関係、そして実際の戦局や今後のシナリオなどについて、自分なりに分析しています。すると、最初の頃には見えなかったものが、いろいろと見えてきました。もちろん私は専門家ではないので、憶測の域を出ないことや間違っていることもあるかと思います。

長くなるし、状況はまだ流動的なので、ここでは書きませんが、とにかく改めて客観性と冷静さを失うことの危うさを痛感しました。ただ、戦争によって生まれる犠牲や悲劇については、今も冷静でなんかいられません。双方で多くの人命が亡くなり、大切な人や家を失った人も多数出ています。命を落としたのは若い兵士がほとんどで、本人の無念と遺族の悲しみを思うとやりきれない気持ちになります…

昨日は息子さんが戦地にいるという近所の女性が来ていましたが、心痛から泣いていました。毎日、教会で息子さんの無事を必死で祈っているそうです。きっと夜も眠れない不安な日々を過ごしてはずです。恐らく、周りのアルメニア人のほとんどは、身内や友人、知人の誰かが同じように戦地に行っているのではないでしょうか…それを思うと、本当に辛いです。

希望的観測も多分にありますが、あと数日内に戦況は小康状態に戻り、他国の仲介で交渉が始まるのではないかと予想しています。とにかく何度でも繰り返します。戦争ほど悲惨なものはなく、平和ほど尊いものはありません。一刻でも早く事態が収束してほしいと願います。

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ドローンが近くの上空を飛行するという出来事がありましたが、エレバンは普段と変わりなく、一昨日は子供たちをレゴ教室に連れて行きました。

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今日の午後、近所の教会に家族で行って、事態の収束と平和を祈りました。

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子供たちが安心して眠り、笑顔で過ごせる日々がどれだけ尊く幸せなことか…早く事態が収束して、多くのアルメニア人に平和な生活が戻ってきてほしいと心から願います。

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