アルメニアの学校で語った平和の意味 

今日は晴れていますが、最近は雨が降ったり止んだりの不安定な天気です。といっても、夕立なので、しとしと降り続くことはありません。春から夏へと季節が移り変わっている時期なのでしょう。

前回の記事に書いたように、バイデン大統領がアルメニア人迫害を「虐殺」と認定する声明を出しましたが、トルコのエルドアン大統領は、原爆投下などに触れて、「鏡を見よ!」と米国を批判しました。プーチン大統領も、同じくバイデン大統領に「殺人者」と呼ばれた際に、原爆投下を引き合いに出して反論しました。

確かに、原爆投下も非難されるべき大量殺戮だと思います。米国では、戦争の早期終結のために必要だったと原爆を肯定する世論がいまだに強いですが、多くの一般人を殺害して苦しめたあの攻撃には必要性も正当性もありません。敗戦国の行為であれば、史上最悪の戦争犯罪の一つとして断罪されていたでしょう。しかし、そんな残虐なことが起こるのが戦争というものです。

さて、昨日アレンが通う学校で、日本について学生たちが発表をするということで、私と妻が招待されました。中学生の授業では、世界の国々のことを調べるという課題が出されるらしく、定期的に発表会を開くそうです。今回のテーマは日本で、自分たちで調べた日本の歴史や文化などについて発表してくれました。途中、日本の踊りも披露されましたが、服がチャイナドレスだったので、次は浴衣を貸してあげようと思います。とにかく、日本のことを取り上げてくれて嬉しかったです。

最後に、私が日本とアルメニアの教育の違いなどについて簡単に話す機会がありました。それから、学生たちの質問に答えたのですが、ある女の子から、「日本人にとって平和とは何ですか?」という質問がありました。けっこう深い質問が来て驚きましたが、学生たちの発表では、広島と長崎の原爆について詳しく話されていましたからね。

少し考えてから、私は次のように答えました。「平和とは戦争がないことだ。みんなの発表にもあったように、日本は原爆を2つも落とされ、無条件降伏をして、本当にひどい負け方をした。全てを失った。でも、戦後の76年間、戦争で一人の日本人も死んでいないし、他国の人間を一人も殺していない。反対に、勝ったアメリカはずっと戦争をやっている。この日本の平和は、戦争で勝つことよりもっと価値があると思う」

私の率直な意見ですが、話した直後に、どう受け止められるか不安になりました。昨年の戦争で、アルメニアは事実上の降伏という辛い経験したばかりなので、所詮は外国人のきれいごとだと思うかもしれない、そして不快に感じるかもしれない…と思ったのです。しかし、私の言いたいことが伝わったのか、みんな拍手してくれました。

もちろん、中には複雑な気持ちの人もいたと思います。当事者のアルメニア人にしたら、大幅な譲歩を迫られて領土を失ったことに不満と喪失感を持つのは当然かもしれません。今もトルコやアゼルバイジャンに対して、憎悪と不信感を抱くのも仕方ないかもしれません。しかし、私は、戦争前の状況がよかったとは決して思えないし、緒戦の結果を完全にネガティブなものとは捉えていません。

アルメニアがどれだけ自分たちの正当性を主張しようと、アゼルバイジャンには別の主張があるので、大きな妥協をしない限り相容れることはありません。その妥協ができない中、お互いに敵対し、前線では若い兵士が毎週のように命を落としていました。領土のために多大な代償を払い続けることで、より頑なになっていく…そんな悪循環に陥っていました。

ご存知の通り、昨年その状況に大きな変化が起こりました。結果はアルメニアにとって屈辱的なもので、多くの尊い命と領土を失いました。捕虜返還の問題などは未解決のままで、先行きは依然として不透明です。しかし、私は、起こったことは全て必然であり、きっとそこに何か意味があるはずだと思っています。少なくとも、平和からは程遠かった膠着状態に変化が訪れました。

もし様々な障害を乗り越えて、戦争で誰も死ぬことなく、誰も殺すことのない真の平和が訪れれば、アルメニアの人たちは、昨日私が学校で話したことを理解してくれると思います。自分の子供たちの世代のために、そんなより良い未来を築くべきです。そして、そんな未来がきっと来ると信じています。

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アレンが通う学校の中学生たちが、日本についてのプレゼンを行ってくれました。

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文化や歴史、宗教や言語など調べたことを頑張って発表していました。次回は、アニメと武道についても調べたら面白いかもと提案しておきました。

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日本の踊りも披露してくれました。踊りは様になっていたのですが、衣装がチャイナドレスだったので、次回は浴衣などを貸してあげるつもりです。

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息子たちの世代が戦争の心配などせずに暮らせる平和な未来が訪れますように!道のりは困難かもしれませんが、きっとそうなると信じています。

アルメニア人虐殺記念碑を家族で訪問 

一昨日4月24日はアルメニア人虐殺記念日でした。今年で106周年。毎年多くのアルメニア人が、ツィツェルナカベルトと呼ばれる虐殺記念碑を訪れて献花します。昨年はコロナのために、記念日の一般人の訪問は禁止されましたが、今年は特に規制はありませんでした。そのため、家族で献花してきました。

午後3時ぐらいに記念碑のある丘の麓に着きましたが、意外に人が少なくて驚きました。昨年はトルコも深く関与した第二次カラバフ戦争があったことから、今年は反トルコ感情がかなり高まっているため、かなりの人出かもしれない…と思ったんですけどね。たまたま人手が少ない時間帯だっただかもしれないし、コロナを心配して、記念日当日の訪問を避けた人も多かったのかもしれません。

とにかく空いていたのは、子供連れの私たちにとっては幸いでした。3年前の記念日に家族で訪問した時は人がかなり多くて、麓から歩き始めて献花するまで、休憩も入れて4時間もかかって本当に大変でした…今年は全く立ち往生することなく、のんびりしたペースで歩いても30分かからずに記念碑に到着しました。それでも、けっこう暑くて子供たちは少しバテてしまいました。

記念碑の中はそれほど広くない上に、みんな献花するので、かなり混雑していました。あと、混雑していた理由がもう一つあって、なんとアルメニア・リトルシンガーズが慰霊のために歌っていたのです。この世界的に評価の高い合唱団とは、4年前にCD制作で一緒に仕事をさせて頂きました(当時のブログ記事)。久々に彼女たちの美しい歌声を聴いて感動しました。私たちを見かけた合唱団の子供たちが、気さくに声をかけてくれました。

永遠の火が灯された記念碑に、家族で花を捧げました。献花しながら、犠牲者の冥福と平和を祈りました。ちなみに、妻は虐殺を生き延びたアルメニア人の子孫なので、息子のアレンとレオにもその血が受け継がれています。今はまだよく分からないでしょうけど、自分のルーツや先祖に起きた悲惨な出来事について強く意識する日がきっと来るはずです。しかし、憎しみを引き継ぐのではなく、二度と同じ悲劇が起こらないよう平和な社会を築くための教訓にしてほしいと思います。

記念碑を後にしてから、子供たちがお腹を空かしたので、レストランで食事しました。その後に、カスカード展望台に上ってみると、エレバンの街とアララト山の雄志が広がっていました。アルメニア人が経験した過酷な歴史に想いを馳せつつ、その美しい景色を家族と眺めました。

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花を買って虐殺記念碑のある丘を歩きました。

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人出が少なくて、スムーズに記念碑まで行けましたが、けっこう暑くて疲れました。

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子供たちも記念碑に花を捧げました。

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今年も多くの花が犠牲者のために捧げられました。その冥福と平和位を祈りたいと思います。

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記念碑では、アルメニア・リトルシンガーズが歌っていました。

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疲れてお腹を空かした子供たちと早めの夕食を食べました。お疲れ様!

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悲しい記念日ですが、天気が良かったので、アララト山がとてもきれいに見えました。

帰宅すると、アルメニア人にとって歴史的なニュースが報道されていました。というのも、バイデン米大統領が、「我々は、オスマン帝国時代のアルメニア人虐殺で亡くなった全ての人の命を思い出し、このような残虐行為が二度と起きないよう取り組んでいく」という声明を発表し、あの迫害を「ジェノサイド(民族大虐殺)」と正式に認定したのです。下のリンクにあるように、日本でも報道されていましたね。

バイデン大統領がジェノサイドと認定

声明についてバイデン大統領は、「責任を追及するためではなく、このような悲劇が二度と起こらないようにするためのもの」と説明していますが、即座にトルコは猛反発しました。しかし、前回の記事に書いたように、米政府はそれを承知の上で「ジェノサイド」と認定したのだと思います。トルコも、これで開き直ってロシアや中国との関係を強化できるから、実はあまり問題視していないかもしれません。

そんな国際政治の裏側はともかく、大国アメリカのトップが正式に虐殺と認めた事実は、アルメニア人にとっては歓迎すべきこと。アメリカには、多くのアルメニア系移民が住み、ユダヤ系に次ぐ強力な民族ロビーを形成しています。彼らの長年の努力が実を結んだ日だったと言えるでしょう。何よりも、同じ悲劇が繰り返されないためのきっかけとなってほしいと願います。

あと、昨晩はアルメニア国立交響楽団のコンサートに妻と行ってきました。アルメニア人虐殺記念日のために、ヴェルディのレクイエムが演奏されたのですが、本当に素晴らしい公演で、最後には盛大なスタンディングオベーションが送られました。よほど妻は感動したのか、「ものすごく良かった」と何度も言っていました。この芸術をこよなく愛する民族性は、苦難の歴史を乗り越えてきたから育まれたのかもしれない…と思いました。

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虐殺記念日に捧げられたコンサート。聞き応えがあって素晴らしいコンサートでした。

バイデン大統領がアルメニア人虐殺を認定?! 

暖かい天気が続き、街中では半袖の人もけっこう見かけます。日も伸びて、今は夜8時頃まで明るいです。今日は雲ひとつない晴天で、アララト山もきれいに見えています。息子たちとカスカード展望台から、その雄大な景色を眺めました。

日本では、東京都などの4都道府県に緊急事態宣言が出されましたね。ゴールデンウィークの人の移動が増える時に感染を抑え込もうということみたいですが、飲食店や観光業者、またそれらに関わる事業者にとっては大打撃となるでしょう…私にすると、社会を破壊しているのはコロナではなく、人間自身のような気がしてなりません。

先日パシニャン首相が南部のシュニク地方を訪問した際に、市民らが殺気だった様子で妨害しようとしました。同地方は、戦争後にアゼルバイジャンと国境を接することになり、その安全が危惧されています。パシニャン首相への妨害行為に関与したとしてメグリ市長など複数の関係者が逮捕されましたが、それに怒った数百人の市民がエレバンの検察庁前で抗議デモを行っています。

ちなみに、近々パシニャン首相は辞任する予定です。といっても、敗戦の責任を取って辞めるわけではなく、6月に解散総選挙を実施するための辞任。首相が辞めて、もし次の首相が決まらなければ、議会は解散して選挙を行うことになるからです。今もパシニャン首相に対する風当たりは厳しいですが、野党グループはそれ以上に有権者から支持されていないので、今回の選挙でも、パシニャン首相率いる現与党が有利ではないかと予想されています。

あと、カラバフでは、アゼルバイジャン軍によるアルメニア支配地域の一般集落への銃撃事件が発生し、アルメニアとカラバフの政府は激しく非難しています。これまで空に向けた威嚇射撃が発生することはありましたが、今回は住宅の屋根が損壊するなどし、幸い死傷者は出なかったとはいえ、かなり危険な攻撃です。アリエフ大統領も、最近は好戦的な発言をしているし、民族間の不信感や憎悪が高まっています。しかし、私個人は、大きな衝突に発展することはないと思っています。

別に根拠もなく楽観的に考えているわけではありません。ロシアが平和維持軍を展開していることに加え、アゼルバイジャンは、返還された地域で大規模な復興事業を進めています。その数年がかりの復興事業には、欧州や中国など外国企業も数多く参加しているため、戦争なんかやっている場合ではないのです。とはいえ、アゼルバイジャンには、緒戦の結果にさえ不満を持つ極右の民族主義者らがいるので、アリエフ政権は、表向きは強硬な姿勢を崩せないという事情があります。

さて、明日4月24日はアルメニア人虐殺記念日です。今年で106周年。その日は、エレバン市内にある虐殺記念碑に多くの人が献花に訪れます。私も、ここに住み始めてから毎年訪問していますが、昨年はコロナの影響で一般人の訪問が禁止されたため、行くことができませんでした。しかし、今年は例年通り訪問できそうなので、家族で献花に行くつもりです。

その重要な記念日を前に、世界中のアルメニア人がバイデン米大統領の動向に注目しています。というのも、明日の虐殺記念日に、アルメニア人虐殺を認める公式声明を出すのでは…と予想されているからです。レーガン元大統領が使用して以降、米政権はトルコとの関係を重視して、「ジェノサイド(民族大虐殺)」という表現は避けてきましたが、バイデン大統領は一歩踏み込んだ発言をする公算が大きいと報道されています。

確かに、今回に限っては、その可能性はけっこう高いかもしれません。バイデン氏は大統領候補時代に、「当選すればアルメニア人虐殺をジェノサイドと認める決議を支持する」と表明していましたからね。米国が正式に「ジェノサイド」と認めると、それに追随する国々も出てくるでしょうし、アルメニア人にとっては、歴史的な出来事となり、大きな追い風となります。

しかし、もしそうなれば、トルコが猛反発して、米・トルコ関係がさらに悪化することは必至。そのため、土壇場で覆るかもしれないという意見もありますが、私は逆に、米政府はそんなこと承知の上で、「虐殺」と正式に認めるのではないか…と穿った見方をしています。というのも、バイデン政権は、トランプ前大統領と同じく世界の多極化を押し進めるため、他の地域大国との関係を意図的に悪化させている可能性があるからです。

とにかく一体どうなるかは、明日になってみないと分かりません。たとえバイデン大統領が「虐殺」と認めなくても、アルメニア人にとって悲惨な歴史であったことは事実。昨年は一般人の訪問が禁止され、またトルコが深く関与した第二次カラバフ 戦争もあったため、明日は多くの人が虐殺記念碑を訪れるのではないでしょうか。私も、アルメニア人と共に犠牲者の冥福、そして平和が訪れるよう祈りたいと思います。

追記:バイデン大統領は、アルメニア人虐殺記念日に声明を発表し、「ジェノサイド」と正式に表現しました。この声明に対して、トルコは激しく反発しています。

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今日は空が晴れ渡り、アララト山がきれいに見えました。

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アレンとレオと私、父子三人で散歩しました。

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カスカードの階段を一緒に歩いて下りました。日中は暑いぐらいの陽気!

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その後は、中心部のカフェで三人で休みました。キッズスペースがあるので、息子たちは遊びまくっていました。

ガルニ神殿とゲハルド修道院を観光 

朝晩も冷え込むことなく、すっかり春の陽気です。暑くもなく寒くもなく、一年で最も過ごしやすい時期で、気持ちも晴れやかになります。

日本も今週から暖かくなるそうですが、コロナの新規感染者の増加や変異種の問題で、また規制を強化しようという流れになっていますね。一体いつまでも不毛なイタチごっこを繰り返すのでしょうか。いつまでバランスを欠いた対応を続けて、社会を破壊すれば気が済むのでしょうか…

そういえば、先週エレバン市内のバスの中で殺人事件がありました。安全なアルメニアでは珍しいことだから驚きましたが、その理由を聞いてさらに唖然としてしまいました。報道によると、被害者の男性にマスクを着用するよう注意されたことでケンカになり、ナイフで刺して殺害したとのこと…そんなことで人を殺めるなんてアホか!被害者の男性も、アルメニアでマスク着用をいちいち注意してたら切りがないけど、そんな理由で殺されて可哀想に思います。

さて、この陽気に誘われて、先週末は家族でエレバン市内を散策したり、郊外に出かけたりしました。レゴ教室の近くの公園は、すでに噴水が動き始めたので、子供たちが大喜びしていました。夏はビショ濡れになって遊ぶでしょうね。そして、久しぶりにヒカリ日本文化センターを訪問しました。というのも、5月5日に端午の節句のイベントをするらしく、それに家族で招待されたので挨拶に行ってきました。

そのヒカリセンターには、私が日本の有志の方々と運営している「アルメニア友の会」が寄贈した図書が保管されているのですが、アレンが読みたい!と言って選んだのは「寄生獣」。アレンが好きそうなグロいシーンがたくさん出てくる漫画ですが、テーマはとても深く、私も大好きな作品です。その後に行ったレストランやカフェで、アレンは真剣に読んでいました。

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レゴ教室の近くの公園でも桜が美しく咲いていました。エレバン市内で桜をけっこう見かけます。

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その公園では噴水が稼働し始めて、子供たちは大喜び!噴水はライトアップされます。

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ヒカリセンターから借りた「寄生獣」を必死で読むアレン。「パパ、共食いって何?」とか、グロい質問をしてきます。

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ライトアップされたカスカード展望台。快適な気候だから、夕方以降は多くの人が散策しています。

日曜は、久しぶりにガルニ神殿とゲハルド修道院に行ってきました。アレンもレオも世界遺産が大好きなので、妻が、「だったら世界遺産を見せてあげよう」と提案したのです。まあ、アレンもレオも過去に訪問したことがありますが、世界遺産という認識を持って改めて見たら、また違った印象を受けるかもしれません。それに暖かくなってきたから、家族でちょっと遠出したくなったこともあります。

今回も、元学生のティグランに運転を頼みました。先月末に子供が生まれてから初めての再会だったので、「おめでとう!」と祝福しました。ティグランは嬉しそうに、「ありがとう。子供はとても可愛いです」と言っていました。ティグランは身長2メートル近い巨体なのに、生まれた子供は2800gと小さめだったそうです。

それを聞いた妻が、「うらやましい!」と言っていました。というのも、逆に、私と妻は小柄なのに、アレンもレオも4キロ近い大きな赤ちゃんだったのです。しかし、妻は二人とも、病院に着いて2時間後ぐらいに産みましたが、ティグランの子供は12時間もかかりました。本当に個人差があって、よく分かりませんね。とにかく母子共に健康でよかったです。

ティグランの運転で、まずゲハルド修道院に向かいました。着いてみると、意外にも多くのアルメニア人観光客で賑わっていました。外国人がほとんどいないことを除けば、コロナの問題などないかのような賑わいです。個人的には、これでいいと思います。

ここは、創建が4世紀まで遡るという古い歴史があり、岩盤を穿って造られたことから、洞窟修道院とも呼ばれています。その洞窟修道院には13世紀に再建された教会が隣接しています。「ゲハルド」はアルメニア語で槍の意味で、キリストを刺した聖槍がここに保存されていたことに由来ししており、現在その聖槍は、エチミアジン大聖堂にあります。

昨年は訪問客がほとんどいなかったため、私と妻も1年ぶりぐらいの訪問でしたが、やはり素晴らしい場所です。一枚岩を掘り抜いて作られた精微なレリーフ、そして内部に満ちる神々しい雰囲気から、人々の信仰と祈りのパワーを感じます。これまで何度も訪れているにも関わらず、いつも感動します。

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世界遺産のゲハルド修道院。多くのアルメニア人観光客が来ていました。

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教会内部は、窓から光が差し込み、神聖な雰囲気に満ちていました。

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一枚岩を掘り抜いて作られた洞窟修道院内部には、美しいレリーフが残されています。

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家族でロウソクを灯して祈りました。ロウソクの火と窓から差し込む光が、とても神々しかったです。

ゲハルド修道院を後にしてから、マス料理を食べにレストランに行きました。そこは湧き水で多くの魚を養殖していて、鶏が放飼になっていたり、ブランコや卓球台などもあって、子供たちは楽しそうに遊んでいました。子供たちにとって、世界遺産を見るという元々の目的はどうでもいい感じでしたが、その嬉しそうな笑顔を見ると、家族で出かけて良かったなあと思いました。マス料理もとても美味しかったです。

食事後は、ガルニ神殿を訪問しました。紀元前1世紀に建てられた太陽神ミトラを祀る神殿で、アルメニアに残された唯一のキリスト教以前の宗教建築となっています。17世紀に大地震で崩壊し、現在ある神殿はその後に再建されたものなので、世界遺産になっていませんが、神殿のあるアザット渓谷は自然世界遺産に指定されています。ここも、多くのアルメニア人観光客が来ていました。

子供たちは、鏡と水面で太陽光を反射させて祭壇を照らす仕組みや、一日の時間を表す24本の柱などを面白がっていました。しかし、子供たちが何より面白がっていたのはドローン!というのも、私たちが訪れた時、ちょうど2組の新婚カップルが記念撮影を行っていたのです。ブーンと音を立てながら、自由自在に空中を飛び回るドローンを子供たちはずっと見ていました。

途中、一台のドローンが木に激突するなんてトラブルもありましたが、ガルニ神殿を背景に、幸せいっぱいの新郎新婦の姿を撮っていました。貴重な歴史遺産と雄大な自然をバックに記念撮影をするなんて贅沢ですよね!ここも1年ぶりぐらいの訪問でしたが、楽しい時間を過ごすことができました。

久しぶりにゲハルド修道院やガルニ神殿を訪問して、改めてアルメニアの悠久の歴史、そして美しい自然に感動しました。これからもっと暖かくなるので、また家族でどこか出かけたいと思います。現状では、今年もコロナの問題で国外に行くのは難しそうですから、去年同様にアルメニアの魅力を再発見する機会を多く持ちたいです。

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レストランにはブランコがあって、すぐ子供たちは遊び始めました。

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卓球台もあって、アレンとレオも楽しそうに遊んでいました。ちなみに、私は小学校時代は卓球部でした。

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いけすの魚に餌をやるアレンとレオ。魚がけっこう水しぶきを上げるのでビックリ!

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みんなで食事。昨日は、親友の片岡さんの誕生日だったので、「片岡さんに乾杯!」と言ってワインを飲みました。片岡さん、おめでとうございます!

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ヘレニズム様式のガルニ神殿。アルメニアに残る唯一の異教建築です。

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神殿は世界遺産ではありませんが、周辺の雄大な自然は世界遺産に指定されています。

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ガルニ神殿をバックに抱き合うアルメニア人の新郎新婦。写真左にドローンが映っています。

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神殿の隣には教会もあったので(地震で壊れて現存していない)、古い十字架石も残されています。

私の47歳の誕生日のお祝い! 

少し天気は不安定ですが、それほど寒くなったりはせず、確実に季節は春へと移り変わっています。コロナに加えて、昨年秋に戦争まであったから、今年の春の訪れは格別に嬉しく感じます。

アルメニアは、英国型のコロナ変異種が見つかったこともあり、日本の検疫強化の対象国に入ってしまいました…といっても、特別な措置が追加されたりはしません。アルメニア国内も全く混乱などはなく、ほとんど普通に社会は動いています。多くのウイルスは家族間の感染でも変異するものなので、いちいちヒステリックに反応していたら切りがありません。

モスクワで開催された重量挙げの欧州選手権102kg級で、アルメニアの選手二人が金銀を獲得するという嬉しいニュースがありました。ちなみに、銅メダルはアゼルバイジャンの選手。多くのアルメニア人は、この結果に溜飲を下げたかもしれません。でも、スポーツで争うのは人が死んだりしませんからね。

そのアゼルバイジャンの政府は、首都バクーに緒戦の勝利を記念する公園を作ったのですが、アルメニア軍からの戦利品やアルメニア兵の捕虜を模した人形などが展示されているらしく、多くのアルメニア人が怒っています。写真を見る限り、けっこう生々しくて、わざわざ民族間の憎悪を煽るような展示なんかせんでも…と思います。

あと、ガギク・ツァルキャンというアルメニアの大富豪の政治家が、息子の結婚式に億単位ものお金をかけて豪奢に祝ったため、「コロナと戦争で国が大変な時にアホか!」と市民の反感を買っています。写真で見たウェディングケーキは4メートル以上あったかも…でも、批判している人の多くも、もし同じぐらい金と権力があったら、やっぱり盛大にお祝いしそうですけどね。

先週土曜は、アルメニアの国会議事堂の庭に植えられた桜が開花したことを記念する行事があり、私たちも招待されたので、妻とレオを連れて参加してきました。アレンは、学校の同級生の誕生日パーティーに呼ばれたので、そちらに行っていました。アレンだけの予定が入るなんて、なんだか少し大人になったように感じる出来事でした。

植えられているエゾザクラは、少し葉桜になっていましたが、美しい花を咲かせていました。イベントでは、村上春樹の「ノルウェイの森」のアルメニア語版も紹介されて、翻訳した妻もスピーチしました。かなり評判がいいらしくて、また多くの人に読んでもらえたら嬉しいですね。最後にみんなで桜の木に折り鶴を飾りましたが、レオも楽しそうに参加していました。

また、日曜は先月アルメニアに引っ越された日本人のご家族のお宅にお邪魔しました。アララト山が見える閑静な住宅街で、楽しくお話しすることができました。3歳になったばかりの男の子がいて、アレンとレオと一緒に楽しく遊んでいました。お互い日本語で会話できるから、アレンとレオのことを「お兄ちゃん」と呼んでいました。いい遊び友達ができたみたいで良かったです。

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桜のイベントで、「ノルウェイの森」の翻訳について話す妻。昨年は川端康成を翻訳して、今は三島由紀夫を翻訳中です。

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桜の木に折り鶴を飾るレオ。この後はレゴ教室に連れて行きました。

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アレンは、学校の友達の誕生日パーティーに参加していました。すごく楽しかったみたいです。

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アルメニアに引っ越されたご家族のお宅から見えるアララト山

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男の子3人で楽しく遊んでいました。みんな可愛かったです。

さて、昨日は私の47歳の誕生日でした。ついにアラフィフと言われる年齢になりました。アルメニアではかなり若く見られるので、実年齢を言うとみんな驚きますけどね。若く見えても、ちゃんと年相応に体力が衰えていることを感じます。世界放浪をしていた20代や30代の頃を思うと、「よくあんな無茶ができたなあ」と我ながら感心します。でも、若い時にしかできないこと悔いなくやり切ったという証でもありますね。

誕生日の朝、家族が「おめでとう!」と祝福してくれました。妻と義母からプレゼントをもらって、夜はエレバン中心部の中華レストランにお祝いのディナーに行きました。そこはキッズスペースがあって、アレンとレオのお気に入り。おかげで、私と妻も落ち着いて食事ができます。とりあえず、妻とワインで乾杯しました。食事も美味しくて、ちょっと食べ過ぎてしまいました。

帰宅後は、ケーキにロウソクを灯して、改めて家族で誕生日をお祝いしました。ハッピーバースデーの音楽が流れるロウソクで、アレンもレオも面白がっていました。昨年の誕生日は、アルメニア含め世界中がコロナで混乱している時期でした。そして、昨年秋には戦争まで勃発しました。いろいろあったけど、今年も楽しく家族で誕生日をお祝いできて幸せに思います。その幸せと、子供たちが元気でいてくれることが何よりのプレゼントかもしれません。

多くの方からもお祝いのメッセージを頂いて、本当に嬉しかったです。どうもありがとうございました!今年はアルメニアでの生活も13年目に入ります。いい出会いに恵まれ、平穏で喜びに満ちた一年になりますように!

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私の誕生日のお祝いのディナー。今年も家族で楽しくお祝いできました。

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帰宅後は、誕生日ケーキでお祝いしました。子供たちが元気に笑顔でいてくれることが一番のプレゼント!