激動の2020年を振り返って 

快晴が続いていますが、日中でも0℃近い気温です。そんな中、人々はお正月の準備で忙しくしています。ついに今日は大晦日。2020年も終わりですね。コロナ一色で終わるかと思いきや、アルメニアは第二次カラバフ戦争が起こって、まさに激動の一年となりました…世界情勢の変化がこれほど自分の生活に影響を与え、記憶に深く刻まれるであろう年はないかもしれません。

年初めに片岡さんが来た時に、中国で新型ウイルスの感染が広がっているという情報はありましたが、まだ局地的な問題と考えていました。その後、瞬く間に感染が広がり、世界は一変しました。一時はアルメニアも、人口あたりの感染者数の割合が世界の上位10か国に入るほど深刻化しましたが、今は落ち着いています。なので、年明けに泊まりがけでスキー場に家族で行く予定です。

コロナの影響で、春頃に外出制限や教育機関の閉鎖が行われ、息子たちがずっと家にいる時期がありました。まだ幼い子供二人の面倒は大変でしたが、長く一緒にいたお陰で、アレンとレオは絆が深まり、いつも兄弟で仲良く遊ぶようになりました。また、妻も頑張って料理をするようになり、今では毎日のように美味しい和食が食べられるようになりました。そして、家族でアルメニア国内をたくさん旅行しました。

コロナをきっかけにして、そんな良い変化もあったり、幸い私は仕事で大きな損害を被ったりもしませんでしたが、国外に移動できない、人と集まったりできない、友人や知人がアルメニアに来られないなど、当然ネガティヴな影響も多々ありました。今は変異種の感染拡大が問題になっていますが、来年のなるべく早い時期に収束してほしいと思います。

アルメニアにとってコロナよりもずっと深刻な出来事は、やはり戦争でした…ご存知のように、9月27日から11月9日までアゼルバイジャンと激しい戦闘がありました。実効支配していた多くの領土を返還するなどの条件で停戦となり、アルメニアの事実上の降伏という結果に終わりました。「凍結した紛争」と呼ばれ、30年近く続いたカラバフ領土を巡る争いに歴史的な変化が起こったのです。

コロナと同じく、軍事衝突が発生した当初は、それほど大事に捉えていませんでした。いつもの如く数日から一週間ほどで収まり、以前と同じ状態に戻ると予想していました。しかし、その予想は裏切られ、本格的な戦争に突入しました。ナショナリズムが高揚し、ネットは戦争関連の情報で溢れ、国全体が暗く重い空気に覆われました。

この第二次カラバフ戦争は、私にとって人生で最も辛い体験の一つだったと言えます。若い兵士が次々と亡くなり、悲しみと憎悪の連鎖が果てしなく続く状況は、本当に耐えがたいものでした。「朝起きたら終わっているかも…」という微かな希望は毎日打ち砕かれ、心が不安で蝕まれていくように感じました。戦争ほど悲惨なものないと痛感しました。そして、平和ほど尊いものはないと再認識しました。もう二度と嫌ですが、いろいろ考えさせられた貴重な経験だったことも確かです。

6週間の戦闘で、数千人もの命が失われ、さらに多くの兵士が肉体的または精神的な障害を負いました。多くの市民が家を失い、土地を追われました。ただでさえコロナで落ち込んでいる経済への影響も甚大です。停戦したとはいえ、国境線の確定や安全保障の問題もあって、アゼルバイジャンへの敵対心や不信感は全く消えていません。首相の辞任を求めるデモが行われ、ネットでも情報の氾濫や意見の対立が続いています。

コロナも戦争後の混乱も、残念ながら当分は収まる気配はなさそうです。しかし、激動の2020年が間もなく終わります。やはり大変な1年だったという印象が強いですが、家族がみんな健康でいられたことは何よりでした。いつも元気で明るい息子たちの存在が、辛い時も笑顔にしてくれました。家族の大切さを改めて実感しました。一方で、そのかけがえのない家族を戦争で失った人たちがたくさんいます…犠牲者の冥福を祈りたいと思います。

そして、2021年が希望に満ちた年になるよう祈りたいと思います。私はきっとそうなると信じています。先日の記事にも書いたように、歴史の必然の展開は人間の理解を待ちません。今年の様々な出来事も必然であるならば、きっとそこに何か意味があるはずで、より良い未来に繋がっていると希望を持ちたいです。何があろうとも、今後もアルメニアの情勢を冷静に見守り、当ブログで伝えていくつもりです。

いろいろありましたが、何気ない日々の暮らしに幸せと感謝の気持ちを持つことができた年だったように思います。なので、今年も1年を振り返るスライドショーを作りました。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。皆さん、よいお年をお迎えください!

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先日ショッピングモールに出かけて、息子たちを広いキッズスペースで遊ばせました。

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その時に買ってあげた、地図に国旗を立てるおもちゃ。私の訪問国に旗を立てるアレンとレオ。90か国も行ってると、ほとんどの国に旗が立ちますね。

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昨日は家族で劇を見に行きました。大人も笑えるユーモアと陽気なダンスもあって、息子たちは楽しそうに見ていました。

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おそろいのパジャマを着ておどけるアレンとレオ。仲睦まじい息子たちの姿に心癒された一年でした。これかも健やかに成長してほしいと思います。

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家族の絆と平和の大切さを改めて実感する年でした。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。


毎年恒例のスライドショー 。激動の2020年を振り返りました。大変なことが多かったですが、2021年は素晴らしい年になりますように!

チャリティーバザーとコンサート 

一昨日はクリスマスでしたが、アルメニアのクリスマスは1月6日なので、何もない平日でした。最近かなり寒くなって、日中でも0℃前後という気温です。外を歩いていると、寒いというより痛いと感じるほど。本格的な真冬に突入したようです。もう年の瀬ですからね。コロナと戦争による混乱で、アルメニアにとって本当に大変だった1年が終わりを迎えようとしています。

そのコロナの変異種の感染者が日本でも見つかったそうで、外国人の新規入国を明日から1月末まで停止するとのこと。他の国々でも感染者が確認されているため、再び世界全体で移動や外出の制限が厳格化される流れになっています。各国でワクチン接種が開始されましたが、来年も当分はコロナのパニックは続きそうですね…

アルメニアの状況は落ち着いていて、一日の新規感染者も最近は千人を下回っています。ただ変異種の感染が確認されるのも時間の問題かもしれません。ちなみにアルメニアは、治験が不十分と批判を受けたロシア製ワクチン「スプートニクV」の導入も検討していますが、同ワクチンは変異種に対しても有効というデータがあるそうです。旧ソ連のワクチン開発技術はかなり高かったので、同ワクチンも意外に優れものなのかもしれません。

アルメニアの政情は、相変わらずパシニャン首相の辞任を求める野党グループのデモが続いています。一昨日は、いろはセンターの忘年会から帰宅する時に、デモ隊が一部の道路を封鎖していたらしく、ものすごい渋滞に巻き込まれてしまいました。空いていれば20分ほどで着くのに、1時間近くかかりました…その夜、パシニャン首相は、民意を問うために来年総選挙を行うと発表しました。以前から「半年以内に選挙をする」とは言っていましたけどね。

そういえば、アルメニアでマヌルネコが100年ぶりに目撃されたというニュースがありました。アジアの高原地帯に住む野生の猫で、世界最古の猫の一種と言われています。準絶滅危惧種に指定されるほど個体数は減っていて、アルメニアでは約100年前に絶滅したと考えられていましたが、まだ生息していることが分かりました。

さて、学校と幼稚園、レゴ教室も昨日から冬休みに入りました。子供たちが2週間ずっと家にいるから大変…でも、アレンとレオは兄弟仲がとてもよく、基本的にずっと二人で遊んでくれるので、以前より手が掛からなくなりました。昨日はアルメニアでは祭の木と呼ばれるクリスマスツリーを飾りました。今年は戦争もあって飾らない人も多いみたいですが、息子たちがずっと楽しみにしていたので、我が家は飾ることにしました。小さな子供たちから笑顔や喜びを奪ってしまうのは可哀想ですからね。二人とも嬉しそうにしていました。

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いろはセンターの忘年会がビストロ桜で開かれました。今年は3月から全てオンライン授業でした。お疲れ様でした!

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二人とも楽しく通っていたレゴ教室も2週間お休み

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その夜は家族で近くのレストランで夕食。ここはいろんなビールが楽しめて、食事も美味しいです。

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イカリングのイカをくわえて、ドラキュラの真似をする息子たち

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幼稚園のクリスマスイベントでプレゼントを貰って嬉しそうなレオ。今年はコロナの影響で、こういう行事を見学することができませんでした…

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ここでは「祭の木」と呼ばれるクリスマスツリーを飾りました。一際目立つサンタの飾りは、アレンが学校で作ったもの。

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一生懸命アレンが粘土をいじっているから何を作ってるのかと思ったら、またキモい作品…相変わらず変わってるな〜でも、こういう趣味が好きな私に似たんでしょうけどね。

あと、昨日は妻とチャリティーバザーとコンサートに行ってきました。チャリティーバザーは、その売り上げがカラバフの避難民支援などに使われるそうで、カラバフ産のウォッカやジャム、蜜蝋のロウソクなどを購入しました。悲惨な経験をして、今も苦労を強いられている人たちの少しでも助けになればと思います。この時期、いろんなNGOがお正月の食料や子供へのプレゼントを避難民に渡す活動などを行っているので、私と妻も寄付をしていますが、鮄川さんも、今月初めに一緒に訪問したNGOに寄付して下さいました。ありがとうございます!

その後、オペラハウス近くの韓国レストランに行ってみたんですが、間違えて入った道で、「アニメオタク」という名前の店を偶然見つけました。中に入ってみると、日本のアニメグッズが売られていて、まさにオタクワールド!店の奥は小さなカフェになっていて、なんとラーメンが出されていました(写真で見る限り美味しそうじゃなかったけど…)。こんな場所がエレバンにあったとは驚きです。ちなみに食事した韓国レストランは大して美味しくなかったので、もう行くことはないと思います。

食事後に見たコンサートは、いろんなオペラの名曲が歌われる内容で、次々とアルメニア人のオペラ歌手が出てきて熱唱しました。観客が少なくて盛り上がりには欠けましたが、けっこう聞き応えのあるコンサートでした。指揮者が途中、「戦争で亡くなった兵士のために黙祷を捧げましょう」と述べて、みんなで黙祷しました。

一見するとエレバンは普段と何も変わらない様子で、カフェやレストランは賑わっているし、コンサートなども開かれ、人も出歩いています。しかし、悲惨な戦争によって数千もの命が奪われ、多くの人が悲しみの淵にいることは紛れもない事実で、それは全てのアルメニア人の心に深く刻まれています。もう戻ってこない命ですが、その多大な犠牲に思いを馳せ、心から冥福と平和を祈りたいと思います。そして、2021年が少しでも希望に満ちた年になるよう祈りたいと思います。

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カラバフ産のウォッカ。度数は50度以上ありますが、どれも美味しい!桑の実のウォッカが一番気に入ったので、お正月用に買いました。

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カラバフ産のジャム。松ぼっくりのジャムが独特の味で美味しかったので購入しました。体に良さそう!

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センスのいい民芸品なども売っていました。お土産にいいかもしれませんね。

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たまたま見つけた「アニメオタク」というお店。以前に耳にしたことある気がしますが、本当にあったんだ!

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店内では日本のアニメグッズが売られていました。奥はラーメンが食べれるカフェ。アルメニアのオタクにはたまらない空間かも。

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コンサートは、観客は少なかったけど、いろんなオペラの名曲を聞けてよかったです。

停戦合意から1か月半のアルメニア 

昨晩から降り続く雪が積もって、朝起きると外は銀世界になっていました。子供たちも大喜びで、レオは幼稚園で雪遊びをしたようです。寒いけど、その美しさと静けさに心が落ち着きます。今年もあと1週間ほどですね。

英国などでコロナの変異種の感染拡大が問題になっているようです。重症化率や致死率の変化についてはまだ分からないようですが、感染力が従来型より70%も強いと報道されています。そのため、欧州ではロックダウンが再開され始めています。今年は本当にコロナで始まってコロナで終わるという感じですね…

当初からコロナは感染力が強いウイルスとされていますが、私はそれを「移動力」と考えています。というのも、ウイルスが付着しただけでは感染とは言えず、私たちは常に周りに様々なウイルスが存在する中で生きていますが、本来の免疫や抵抗力で撃退して感染に至らずに済んでいます。しかし、PCR検査では粘膜に付着しているだけでも陽性扱いになることが多いため、調べれば調べるほど「感染者」は増え続けます。それを「感染力が強い」と表現することには違和感を感じるのです。

さて、停戦合意からちょうど1か月半が経ちました。戦没者への服喪期間が月曜に終わり、昨日は野党グループ「救国運動」が全国規模のデモを行いました。かなり大人数が共和国広場に集まったという報道もあれば、実際にはそれほどではないという報道もあり、情報ソースによって大きく違いがあります。とりあえず国全体が混乱するほどの騒動にはならなかったようです。

また、前回の記事に書いたように、アゼルバイジャンと国境を間近に接することになり、安全の問題が危惧されている南部地方をパシニャン首相が月曜に訪問しました。いくつかの街や村は住民が道を封鎖して訪問できなかったようですが、シシアンという街の住民とは対話したようです。

その際に話題になったのは、シシアンにある教会の神父がパシニャン首相との握手を拒んだこと。その情報や映像が流れて、パシニャン首相の支持者と反対する市民とがネット上で激しくやり合っていました。停戦後からずっとこんな感じで、見ていて気が滅入ります。いろんな意見を自由に表明できること自体は良いのですが、お互いに自分が信じたいことだけ信じ、見たいだけことだけ見て、聞きたいことだけ聞いて、意に反するものは決して認めようとせず、感情的に批判し合う状況は問題です。

戦争中、私が辛かったのは人の死と悲しみ、そして憎悪と不信感の連鎖、盲目的なナショナリズムや自己肯定、排他的かつ不可逆的な社会の空気でした。その偏った空気の中で、どこか葛藤や苦悩を抱えながら、私はアルメニア側からの情報を発信していました。当時はアゼルバイジャンと戦っていたので仕方なかったかもしれませんが、停戦後も、国内では同じような状況が続いているように感じています。

もちろん今も、国内情勢に関するニュースはいつも見てはいますが、周りのアルメニア人と政治的な話はなるべくしないようにしています。センシティブな話題であることも理由ですが、異なる意見や不都合な情報に対して冷静に耳を傾けられないのであれば、お互い平行線のままで終わるし、相手が感情的になるだけで話す意味がありません。

なので、私はただ情勢を冷静に見守るように努めています。アルメニアに10年以上住み、アルメニア人と結婚しているとはいえ、所詮は外国人の立場ということもありますが、「歴史の必然の展開は、人間の理解を待たない」という自分なりの哲学もあるからです。これは、作家の小松左京氏が京大生時代に先輩から聞いた言葉だそうで、一つの真実を端的に言い表しているように私は思います。

人生と同じく歴史において起こる出来事の多くは、様々な要素が絡み合い、必然的に起こっています。今回の戦争も、このタイミングで起こるべくして起こったと言えるでしょう。そして、その結果についても同様です。多くのアルメニア人にとって納得できないものであっても、歴史というのは、人間の価値基準や判断などとは関係なく、常に動き続けているのです。結局のところ人間は、後で振り返って評価したり、反省したり、また理解するしかできません。

こう書くと、全て仕方ないと諦めているかのように思われるかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。私たちがただ前にしか進めないのであれば、すでに起こってしまったことは必然だと受け止め、今は冷静に考えて行動すべきだと言いたいのです。見聞きする情報に振り回されず、自分が信じ込んでいるものは本当に正しいのかと立ち止まること、そして異なる意見も尊重し、建設的な議論ができるような寛容さを持つこと。国の重大な局面にある今、それはとても大切なことではないでしょうか…

実際に戦争を経験して、これほど悲惨なものはなく、絶対に起こってはならないと痛感しました。しかし、ずっとアルメニアはそのリスクの中に存在してきたことは事実です。毎週のように兵士が前線で死に、数年に一度は大規模な軍事衝突が発生していました。そう考えると、やはり今回の戦争は歴史の必然だったと言えます。そして、それが必然であるならば、私はこの変化に対してもどこか希望を持ち続けたいし、アルメニア人はきっと乗り越えられると信じています。だから、今後も情勢を冷静に見守っていきたいと思います。

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昨晩から雪が降り積り、エレバンは銀世界になりました。

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日曜はエレバン中心部に家族と出かけて、教会に立ち寄りました。

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服喪期間だったので、戦没者の慰霊のために祈りを捧げました。

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レオが妻のセーターの中に潜り込んで、三人目を妊娠したかのような姿に!大変な1年だったけど、いつも子供たちの無邪気さに心癒されました。

アルメニアは3日間の服喪期間 

今週前半は雨がちの天気でしたが、昨日から雲ひとつない青空が広がっています。安定した天気が今週は続くみたいですが、気温はどんどん下がるようです。でも、月曜が冬至で、それ以降は少しずつ日が伸びるのは嬉しいです。

一昨日・昨日は、私がお手伝いしている現地のIT企業の社員旅行があったので参加してきました。ツァフカゾールというリゾート地のコテージを借りて、みんなで夜遅くまで楽しい時間を過ごしました。私がチームで最年長ですが(30歳前半ぐらいに見られるけど)、若いメンバーたちと最後まで飲んで踊っていました。これから雪が十分に積もれば、来月は家族とそこにスキーに行きたいと思っています。

ちなみに、そのIT企業はアルメニアではかなり大きな会社で、先日あるプログラムを発表しました。戦争で障害を負った兵士たちのためのIT教育プログラムで、彼らが専門スキルを身に付けて、将来より良い生活ができるよう支援することが目的です。重い障害を負った兵士やその家族のことは深刻な社会問題ですから、大いに役立つ素晴らしい事業だと思います。

前回の記事に、停戦以降初の軍事衝突が起こったと書きましたが、問題の場所は結局アゼルバイジャンの支配下に置かれたようです。取り残されたアルメニア人兵士らも、ロシアの平和維持軍の仲介で脱出してアルメニア本土に戻ってきました。また、捕虜になっていた兵士らのうち44人が帰国しました。依然としてアゼルバイジャンに拘束されたままの捕虜がいるため、その返還が喫緊の課題となっています。

また、現在いろいろ議論されているのは、アルメニア南部にあるシュニク地方の安全問題。特に州都のカパンという街は、たった1キロ先がアゼルバイジャンとの国境になるため、深刻な懸念が持たれています。というのも、戦争前はアルメニア側がカラバフ周辺地域を実効支配していたのですが、それらの地域が返還された今、ソ連時代の国境線が基本となり、アゼルバイジャン軍が間近に迫る状態になったのです。

カパン周辺の村々やカパンに通じる道路などもアゼルバイジャンとの国境線すぐ近くにあり、同じく深刻な安全面の問題に晒されています。そのため、住民らが抗議活動を行い、政府に安全保障を要求しています。もちろん政府も、そのリスクについては理解しており、当該地域の国境線にはロシア軍も配備される予定です。また来週月曜には、パシニャン首相が住民らと対話するためにシュニク地方を訪問するそうです。

あと、今日から3日間は戦没者追悼の服喪期間となっています。パシニャン首相ら政府高官も参加して、共和国広場から軍記念墓地まで追悼行進が行われました。野党グループ「救国運動」も、エレバン中心部で追悼集会を開きました。しかし、パシニャン首相の辞任を求める市民らが軍記念墓地の入り口で抗議デモを行い、現場は一時騒然としたそうです。ネット上でも、相変わらず様々な意見や投稿が飛び交っています。

このように国内情勢はまだ混沌としていますが、個人的には残念に思います。停戦後からずっと、自分の意見を絶対的正義だと信じて、国民同士が頑なに主張しあい、時には対立する状況に心を痛めています。だからこそ、せめてこの3日間は、政治的な問題から距離を置いて、ただ静かに戦争で亡くなった兵士のために喪に服してほしかった…

まだ遺体回収作業が進められていますが、1か月半の軍事衝突で5千人前後が亡くなった可能性もあります。その多くは20歳満たない若者で、20代や30代の兵士であれば、妻子を残して旅立った人も多いでしょう。私の同僚の弟さん、また妻の親友はまさにそうでした。本人の無念と遺族の悲しみを思うと本当にやり切れません。私にすると、彼らは敵に殺されたとか、政府に裏切られたとかという思いはなく、全て戦争によって尊い命を奪われた犠牲者です。同じ悲劇が繰り返されないことを祈りつつ、哀悼の意を心から捧げたいと思います。

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今日、追悼式典が行われている「三つの丘」と呼ばれる軍記念墓園。今月初めに鮄川さんと訪問しました。戦争がなければ、こんなに早く消える命ではなかったかもしれません。静かに冥福を祈りたいと思います。

停戦以降初の軍事衝突が発生 

週末は久々に晴れ間が広がり、寒さもそれほどではありませんでした。今週はマイナス気温になることも少ないようです。これはこれで嬉しいんですが、スキー場に雪が積もるかどうかが心配。できれば、今冬もスキーしに行きたいと思っています。

日本はコロナの感染拡大で、「Go To トラベル」が全面停止されるみたいですね。アルメニアは特に規制が強化される様子などはありませんが、お隣ジョージアは、先月末から1月末までの予定で新たな制限措置が取られています。外出規制や公共交通機関の運行停止、レストランなどの営業停止、教育機関の対面授業の禁止など、かなり厳しくて息が詰まりそう…お正月時期は少し緩和されるみたいですけど、経済への影響は深刻だと思います。

もちろん経済状況で言えば、コロナ禍と戦争でアルメニアもかなり大変です。予想されていた高い経済成長も、今年はほぼゼロにまで下落すると見られています。戦争による経済への影響は、来年1月以降により顕著になるという意見もあり、当分は厳しい状況が続くでしょう。でも、百年に一度あるかどうかの問題が同時に起こってしまったのですから仕方ありません。

その戦争が収束してから1か月以上が経ちましたが、先週土曜に、停戦以降初の軍事衝突が発生しました。場所はカラバフ南部のあるヒン・タハル村とフツァベルド村で、戦争でアルメニア軍が最後まで守り抜いたため、アルメニア側に残された地域です。しかし、当時はまだロシアの平和維持軍が配備されておらず、アゼルバイジャン軍が奪取しようと攻撃を行いました。トルコの特殊部隊も参加していたという情報もあります。

アルメニア軍が反撃しましたが、双方に負傷者が出て、どちらの村も一時アゼルバイジャン軍の支配下になったそうです。しかし、すぐロシアの平和維持軍が展開し、そのまま当該地域もロシアの平和維持軍が管理することになりました。いずれにしても、深刻な停戦違反が発生し、アルメニア人の不信感と不安は高まりました。そして、私も暗澹たる気持ちになりました…

ただ、問題となった地域を調べてみると、周囲のほとんどはアゼルバイジャン軍に戦争で奪われ、その中に突き出た陸の孤島のようになっている場所…周囲を見下ろせる高台の軍事的要衝で、4世紀まで遡る歴史的なカタロ修道院があることから、アルメニア軍は死守しましたが、これでは油断するといつ攻撃されてもおかしくありません。当時なぜそこにロシアの平和維持軍がいなかったのか理解に苦しみます。こういうリスクを排除するために駐留している訳ですからね。

とにかく停戦合意が締結されて以降、最も緊張が高まった出来事でした。この軍事衝突によって、アルメニア人のアゼルバイジャンに対する不信感や敵対心がさらに煽られたのは確かです。30年近く領土を巡って争った国同士で、激しい戦争が終わってまだ1か月しか経っていないのだから当然です。それに加えて、国内では数多くのフェイクを含めて情報が入り乱れているため、国民が不安に陥りやすい状況であることも大きいです。

私は、ソースや真偽の程がはっきりしない情報、また偏向した情報を鵜呑みにしないように努めていますが、時には十分に検証せずに信じてしまうこともあります。前回の記事に、アリエフ大統領が、「アルメニア南部とエレバン、そしてセヴァン湖も歴史的にアゼルバイジャン人の土地だった」と述べた…と書きましたが、正確にはそうではなく、アルメニアに居住していたアゼルバイジャン人が1980年代から追放されたという文脈だったようです。それをアゼルバイジャンの国粋主義者らが領土の要求と歪曲して流布し、アルメニアの主要メディアも批判的に報じました。

それを記事に書いてから改めていろいろ調べると、上のような齟齬があったことに気付いたのです。もっと気をつけなければと反省しているところですが、軍事衝突が発生して、アリエフ大統領の発言云々ではなく、アルメニア人の不信感はかなり高まっています。他にも領有権が明確になっていない地域が残っているし、アゼルバイジャンからの捕虜引き渡しも遅れていて(今晩ついに約40人が帰還する予定)、まだまだ前途多難な道のりが続くでしょう。アルメニアにとって辛く重い歴史の転換期ですが、私は今後も冷静に見守っていきたいと思います。

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昨日は家族で出かけて、モールにあるキッズスペースで息子たちを遊べばせました。

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射的ゲームに初挑戦するアレン

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レオも初挑戦しました。もちろん二人とも上手くできませんでしたが…

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アレンが射的でほしがっていた景品。結局スコアが足りなかったけど、特別にお店の人がくれました。しかし、相変わらず好みが変わってるなあ…

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その後は、「ビストロ桜」に行きました。うどん作りを興味深そうに見るアレンとレオ

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美味しく和食を頂きました。頑張って箸で食べるアレンとレオ