拘束されたテロリスト捕虜の証言 

来週から息子たちの通う学校と幼稚園が再開すると聞いて喜んでいたら、教育省からの命令で、やはり他の学校と同じくあと2週間閉鎖すると連絡がありました。戦争でかなり気が滅入っている状況なのに、コロナのせいでダブルパンチ…感染状況に関わらず、2週間後に再開する方針だそうですが、あまり当てにならないので、近所の人にアルメニア語やロシア語、また算数の家庭教師を依頼しました。

しかし、こうやって教育機関は閉鎖し続けるくせに、カフェやレストランやジムなどは特に規制が厳しくなったりしていません。かといって、決してロックダウンなんかする必要はないですが、子供の感染リスクが低いことは分かっているのに、政府がやっている対策にすごく矛盾を感じます。

ナゴルノ=カラバフを巡る戦争の状況ですが、現在も前線では激しい軍事衝突が続いています。市街地への砲撃も頻発しているため、民間人から犠牲が出ています。現在までにカラバフ・アルメニア側兵士1,166名が命を落としたそうです。

あと昨晩は、アルメニア南部の村にも砲撃があったらしく、パシニャン首相は、プーチン大統領に書簡を送り、提供できる防衛支援など即時協議するよう求めました。それに対してロシアは、軍事衝突がアルメニア領土に移った場合、同盟国としてあらゆる必要な支援を行うと答えました。というのも、両国は1997年に相互防衛条約を締結しているからです。

また昨日、ナゴルノ=カラバフのハルチュニャン大統領は、シューシの街で国民に向けて声明を出し、「敵軍はシューシから5キロ圏内まで迫っており、ここ数日が戦争の転換点になるだろう。シューシとカラバフを守るために共に戦ってほしい」と呼びかけました。この呼びかけに応じて、すぐに多くのアルメニア人志願兵がシューシに向かったそうです。

このシューシの街は、約30年前の戦争でも重要な転換点となった場所で、ここを占拠してからアルメニア側の優勢が確実になりました。「シューシを制したものはカラバフを制す」という言葉があるほどで、上記のハルチュニャン大統領の声明でも引用されていました。しかし、その場所の5キロ圏内までアゼルバイジャン軍が迫っているとは…確かに、ここから先が戦争の山場になるかもしれません。

そして、アルメニア国防省は、アゼルバイジャン軍が白リン弾を使う映像を公開しました。この白リン弾は、人を標的にした攻撃での使用は禁止されており、過去にイスラエルがガザ地区に使用して問題になりました。今回アゼルバイジャンが投下して火災が起こっている森林地帯には、民間人が砲撃を避けて隠れているという情報もあります。もしそれが本当であれば、明らかな違法行為であり、甚大な被害が出るのではないでしょうか…

同じくアルメニア国防省は、拘束したシリア人傭兵が尋問に答える様子を収めた動画を公開しました。ムハンマド・アル・シャイールという名で、ジハード主義系テロリストだそうです。10月中旬にトルコにスカウトされ、他の250人の傭兵と共にアゼルバイジャンに派遣されたと語りました。

そして、現地で戦闘前にトルコ軍指揮官から訓練を受けたこと、常に彼ら傭兵たちが危険な最前線で戦わされ、アゼルバイジャン軍は後方に陣取っていたこと、そして2万ドルの報酬が約束されていたが、負傷後に戦場で見捨てられ、報酬を受け取っていないとも告白しました。

一般の日本人にしたら、そんな命がけの仕事をするのに2万ドルは安すぎる!と思うでしょうけど、彼らのような人間は、シリアで月50ドル程度しか貰えないらしいです。であれば、2万ドルはかなり魅力的な報酬に映るはず。他にトルコは、月2千ドルを払うとか、家族にトルコ国籍を与えるなどの条件を提示する場合もあるそうです。その拘束された捕虜も、奥さんと三人の子供がいるそうで、恐らく生活のためにお金欲しさで参加したのでしょう。

これまでにトルコは、数千人ものシリア傭兵やイスラム過激派テロリストをアゼルバイジャンに派遣したと言われていますが、そのほとんどは彼のような人間なのかもしれません。しかし、話した内容が本当であれば、結局その報酬を貰えていないし、都合よく利用されただけのようで少し不憫に感じます。

報酬のことや実際の戦闘の過酷さについては、派遣された兵士たちの間で不満が高まっており、最近トルコはスカストに苦労しているという情報もあります。もともと彼らはナゴルノ=カラバフ紛争に関係ないのですから、いくら好条件を出されても参加してほしくないですね。無関係な戦争に駆り出され、人間の盾として使われ、用なしになると捨てられる…彼らも戦争の犠牲者と言えるかもしれません。戦争は本当に残酷です。一刻も早く収束してほしいと思います。

123338210_883004875564045_6062805458734595077_narmenia20-10-31.jpg
カラバフから避難してきた女性たちが、ジェンギャロフハツという香草をたっぷり詰めたパンを作って売っていました。売り上げは人道支援に使われるそうです。

123328968_2796992147223456_7468070460436437128_narmenia20-10-31.jpg
そこで買ったカラバフ名物のジェンギャロフハツ!美味しくて私も大好きです。

123395725_674004870216294_2156581615766763947_narmenia20-10-31.jpg
ハロウィンの時期だから、アレンが通うレゴ教室でも小さなパーティーがありました。怖い仮面を被るアレン。

123317074_598330697527404_4722068711546051202_narmenia20-10-31.jpg
昨晩は、私がカボチャをハロウィン風に加工しました。大きなカボチャで少し苦労しましたが、いい仕上がりになって、子供たちも大喜びでした。

123361419_662825414417873_8404428449889890048_narmenia20-10-31.jpg
そのカボチャを面白そうに眺めるレオ。子供たちが元気に笑顔でいてくれることが大きな心の支えになっています。


私の妻も登場しますが、日本語が話せるアルメニア人たちから、今回のナゴルノ=カラバフを巡る戦争についてのメッセージ動画。是非ご覧だください!

カラバフ最大の医療施設を狙った砲撃 

コロナの感染拡大を受けて、教育機関が閉鎖されていますが、アレンとレオが通う学校と幼稚園は来週から再開が決定!教育省に申請して認められたそうです。私立だから開けないと経営に影響しますからね。とにかく、また来週から子供たちが通えるようになって良かったです。

寒くなれば風邪ウイルスの一種であるコロナが再流行するのは当然で、その都度リスクの低い子供から教育の機会を奪ったり、厳格なロックダウンを行うのはやり過ぎだと思います。スウェーデン政府の主任疫学者テグネル氏は、そういう対策について、「壁に止まったハエを殺すのにハンマーを振り下ろすようなもの」と述べていましたが、まさに言い得て妙です。

昨日、戦死した会社の同僚の弟さんのお通夜に行ってきました。これまで何度か通夜や葬儀に参列したことがありますが、あれほど悲しみに満ちたものは初めてでした…同僚とその家族は、声を上げて号泣していました。まだ19歳の息子さん、そして弟さんを戦争で亡くしたのですから、その死を受け入れられないもの無理ありません。気の毒すぎて見ていられませんでした。

棺に眠る弟さんは、軍服を着ていましたが、まだ幼さの残る若者でした。戦争がなければ、あと半年ほどで兵役を終えて家族の元に帰るはずでした。そして、将来の仕事や夢を思い描きながら大学で勉強していたでしょう。人生これからという時だったのに、そのスタートラインにも立てずに戦地で命を落とすなんて…これまでに1119名の兵士が亡くなったそうですが、それだけの人生と夢が奪われ、残された多くの人たちが悲しみのどん底に突き落とされたのです。本当に戦争は残酷です。

その戦争の状況ですが、アルメニア国防省によると、現在も境界線各地で戦闘が続いており、ステパナケルトやシューシなどの市街地にも激しい砲撃が行われているとのことです。これらの民間施設を狙った攻撃によって、街の一部は廃墟と化していますが、昨日は明らかに戦争犯罪と言える惨劇が起こりました。

なんと、ステパナケルトにあるカラバフ最大の医療施設が砲撃を受けたのです。そこは産婦人科病院もある複合医療施設で、戦争中の今は、昼夜問わず多くの人が治療を受けています。砲撃があった時も、たくさんの医療従事者や患者がいたため、複数の負傷が出たそうです。いくらなんでも、これは酷すぎ…

アルメニア側のプロパガンダかと思う人もいるかもしれませんが、たまたま報道機関が病院内を取材していたので、生々しい当時の状況を捉えた映像があります。凄まじい衝撃の後に、急いで地下に逃げる人々、安全な場所に患者を移動させて治療を続けようとする様子などが映っています。戦争の恐ろしさが伝わってきます。


報道機関が捉えた砲撃時の病院内の映像。この非常事態に慣れている医療従事者も恐怖で震えています。

このトルコとアゼルバイジャンによる軍事侵攻に抗議するデモが世界各国で行われていますが、アルメニア系住民が多いフランスでは、毎日のように大規模なデモが開かれています。しかし一昨日、武装したトルコ国籍とみられる3人がそのデモ隊を襲撃し、参加者の一人が殴打されて病院に搬送される事件が起こりました。今日も、アメリカで行われていた同様のデモが襲撃されて、参加者3人が負傷したというニュースがありました。

また昨晩は、フランスのリヨンで、数百人の武装したトルコ人やアゼルバイジャン人たちが、「アルメニア人に死を!神は偉大なり!」などと叫びながら街中心部を行進するという出来事がありました。この憎悪の高まりについて、トルコ議会の数少ないアルメニア系議員のガロ・パイラン氏も、「アルメニア人に対するヘイトスピーチや脅迫行為が急増している」と強い危機感を示しました。国外のアルメニア人までが危険に晒されるなんて恐ろしいことです…

今回の戦争にはトルコが大きく関与しているため、アルメニアは、アゼルバイジャンだけでなく、トルコに対しても厳しく非難しています。戦争の背景に、エルドアン政権が押し進める新オスマン主義が関係していることは明らかで、アルメニア人の多くは、これを新たな大虐殺だと考えています。上記のようなデモ襲撃やヘイトスピーチが公然と行われれば、そう感じるのも無理はありません。

この地域だけでなく、他国でも民族間の憎悪や暴力の連鎖が起こっていることに暗澹たる気持ちになります。しかし、今日ロシアとOCSE共同議長の仲介により、アルメニア人兵士29人の遺体と捕虜1人がアゼルバイジャンから返還されたそうで、膠着状態に少し改善が見られるニュースもありました。まだまだ予断を許しませんが、一刻でも早く事態が収束してほしいと願います。

CDBBD110-17EC-4E37-A9D0-D7D7EDC6AD5A_1_105_c.jpeg
今週も子供たちをレゴ教室に連れて行きました。毎回楽しそうに遊ぶレオ。

B700B99F-CC7F-46B8-98E7-D6BBB8BCCB52_1_105_c.jpeg
アレンもレゴで動くおもちゃを作って楽しそうにしています。

3F0D0125-EEEA-4A7A-B245-43F6391E82A5_1_105_c.jpeg
スヤスヤ仲良く眠る兄弟。毎日のように悲劇が起こっている中、家族と平穏な日々を過ごせているのは本当にありがたいことだ思います。

3回目の一時停戦も履行されず… 

コロナの感染拡大で、教育機関が早い秋休みに入っていますが、教育省はさらに2週間延長すると決定しました…その後は、感染状況に関わらず、小中学校は対面授業を再開するそうで、今学期の授業期間も延長するとのこと。これが本当だったら、まだ救われます。子供が感染する、また他人にうつすリスクはかなり低いことは証明されており、教育機関の閉鎖は予防対策として科学的根拠が希薄です。

前回の記事でご紹介した空手家のセヴァックさんの葬儀が日曜に行われました。エレバンから遠いのと、妻があまりに悲しすぎるということで行きませんでしたが、参列した知人が埋葬の時の様子を送ってくれました。弟子たちがセヴァック師範のために中段突きをして、「押忍!」という掛け声で最後のお別れをしていました。みんな辛かったに違いありません…本当に惜しい人を亡くしました。

軍事衝突発生から今日でちょうど1か月になりますが、前線では依然として激しい戦闘が続いています。日本でも報道されていたかと思いますが、米国の仲介で、土曜の夜にアルメニアとアゼルバイジャンは再び一時停戦に合意しました。しかし、予想通り、この3回目となる停戦も履行されませんでした。

前回の記事にも書いたように、アメリカは、本気でこの問題に関与する気はないと思います。トランプ大統領のアルメニア贔屓な発言も、間近に迫った選挙を意識したリップサービスという面が強いでしょう。トランプ大統領は、その言動が過激で好戦的なだけで、実際には他国の紛争などに直接干渉しない方針ですからね。

アメリカが他国の紛争に介入して良かった試しなんてほとんどないので、私自身はこのトランプ氏の方針を支持しています。反対に思慮深くて善人そうに見えるオバマ前大統領が、実は他国に爆弾を落としまくっていたのをご存知でしょうか?政権最後の2年間は特にひどくて、ドローンを使って約5万回もの爆撃を行っています。テロリストなどを標的したものですが、ある程度の犠牲は仕方ないとして、いつも多くの民間人が巻き添えになっていたそうです。

話をナゴルノ=カラバフを巡る戦争に戻します。3回目の一時停戦は、昨日の午前8時から開始されましたが、アルメニア国防省によると、その45分後にアゼルバイジャン軍が境界線北東部で攻撃を行い、さらにその25分後にも南東部で攻撃を行ったそうです。また、前線近くの村々にも砲撃があり、民間人が一人亡くなりました。その後は激しい交戦に発展し、今回の停戦合意も全く無意味なものとなりました。

ちなみにアゼルバイジャン側も、「アルメニア側が攻撃して停戦を破った」という声明を出しましたが、最初その声明は停戦開始ちょうどの午前8時に投稿され、直後に削除されてから、また数分後に投稿されたようです。しかも、前日の夜にも同じ投稿が一時的に投稿されていたという情報もあり、これらが事実であれば、アゼルバイジャンのプロパガンダは稚拙すぎるように思います。

あと、アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜を殺害した様子を収めた新たな映像が見つかり、BBCニュースがその真偽を検証しました。その結果、指示する兵士の言語がアゼルバイジャン語の方言であること、また兵士のヘルメットや銃がアゼルバイジャン軍の使用するものであることから、かなり信憑性が高いということで、アルメニアは、欧州人権裁判所に戦争犯罪の証拠として提出するそうです。

今日のアルメニア国防省の発表によると、イランと接するアルメニア南部国境で、アゼルバイジャン軍によるドローン攻撃が発生して、負傷者が出た模様です。また、現在までにアルメニア人兵士1009名が亡くなったそうです。ついに千人を超えてしまいました…これはあくまで公式情報なので、実際の犠牲者数はもっと多い可能性があります。

実は昨日、私がお手伝いしている現地のIT企業の同僚の弟さんが亡くなったと聞きました。まだ19歳だったから、2年間の徴兵義務で従軍していたのでしょう。同僚の女性にとっては、年の離れた可愛い弟さんだったに違いありません。妻の友人、そして会社の同僚の弟が戦死するという悲惨な現実が、今ここでは普通に起こっています。

さて、前々回の記事(こちら)に、アルメニアの人道支援のために、日本やフィリピンからも義援金が届いたことを書きました。本当にありがたい限りです。今回の戦争で、カラバフから9万人もの人が避難しているそうです。これはカラバフの人口の6割に当たり、多くの人が苦しい状況の中で避難生活を送っています。

その避難民の支援などのために世界中から寄付を募っている「Hayastan All Armenian Fund」という慈善団体があり、私も個人的に寄付していますし、上記の日本からの義援金も同基金に寄付させて頂きました。そして、すでに会社で義援金を捻出してくれた友人が、もっと支援できればということで募金活動を始めてくれました。1万ドルを目標に寄付を募って、同基金に全額届けてくれるそうです。

彼とは、私がフィリピンに住んでいた時からの付き合いで、もう10年来の友達です。アルメニアが大好きで、毎年訪問してくれていますが、今年はコロナの影響で会えていません。しかし、アルメニアが大変な状況にある時に、少しでも支援しようと頑張ってくれて、彼の優しさに改めて感動しました。大輔さん、本当にありがとう!

友人が経営する会社のエレバン支社が、その募金活動のために以下の専用ページも作っています。クジレットカードで寄付できるので、是非そのホームページをご覧になってみてください。戦局が今度どうなったとしても、避難民の支援や被災地の復興などには多くのご協力が必要です。どうぞよろしくお願いします。

CCC International LLC アルメニア緊急支援募金

122963090_717852265486528_4065154938141973929_narmenia20-10-27.jpg 
昨日はエレバンの植物園に家族で出かけました。広々して気持ちよかったです。

123013453_661302348083688_4458917689506026687_narmenia20-10-27.jpg
木の葉が色づいて美しい場所がたくさんありました。自然の中を歩いてリフレッシュできました。

122939737_813229272848304_1128630704712491439_narmenia20-10-27.jpg
アレンが「小さな家がある!」と言って、林の中でこんなものを見つけました。

122575724_3803623309677513_6903288273485494612_narmenia20-10-27.jpg
親友の片岡さんも、香川県の坂出市王越町で運営する気まぐれカフェ GOSHに募金箱を設置してくれたので、是非ともご協力をお願いします!周りの温かい支援と優しさに励まされます。

妻の尊敬する大切な友人が戦死… 

米国を歴訪中のアルメニア外相は、ポンペオ国務長官やOSCEミンスクグループ共同議長らと会談しました。昨日トランプ大統領は、「私も交渉に参加する意思がある。良好な関係を持つアルメニアと協力していく」と述べました。アルメニアを支持する内容でしたが、自身のポリシーというより、間近に迫った選挙のために、ユダヤロビーに次ぐ強さと言われるアルメニアロビーを意識して行った発言という面は否めません。

それは、トランプ政権になってからの軍事支援の動きを見れば明らかです。元々アメリカは長い間、アゼルバイジャンに対してアルメニアよりも多くの軍事支援を行ってきましたが、ここ数年アゼルバイジャンへの軍事支援は大幅に増えて1億ドルに達しています。逆にアルメニアへの軍事支援は減少して、今年は約210万ドル…50倍近い差があります。こんな状況でアルメニア支持を表明されても何か裏があるとしか思えませんけど、悲しいかな、それが国際政治というものなのでしょう…

ナゴルノ=カラバフを巡る戦争の状況ですが、現在も境界線各地で戦闘が続いています。アルメニア国防省によると、現在までにカラバフ・アルメニア軍兵士974名が亡くなったとのことです。また、昨日はステパナケルトや前線近くの村々に激しい砲撃が行われたそうです。

紛争の現地調査を行っているヒューマン・ライツ・ウォッチは、アゼルバイジャン軍が市街地などに向けて、国際条約で禁止されているクラスター爆弾などの武器を使用していると伝えました。これが本当であれば戦争犯罪ですが、アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜を殺害したという新たな証拠も見つかりました。アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜を殺害した様子を収めた新たな映像をBBCニュースが検証した結果、指示する兵士の言語がアゼルバイジャン語の方言であること、また兵士のヘルメットや銃がアゼルバイジャン軍の使用するものだったそうです。

一方、アルメニアは、アゼルバイジャン人捕虜を人道的に扱い、ケガの治療や手術も行っています。今月初めに拘束され、カラバフ内の病院で手術を受けたアゼルバイジャン人兵士が、「自分が所属していた部隊の兵士のほとんどはアゼルバイジャン人ではなかった」と述べました。トルコが数千人ものシリア人傭兵やイスラム過激派テロリストを派遣している事実が改めて裏付けられました。

また昨日は、アゼルバイジャン軍の砲撃を受けて損壊したシューシの街のガザンチェツォツ大聖堂で、1組のアルメニア人カップルが結婚式を挙げたそうです。新郎は、志願兵としてカラバフ軍に従軍しており、式でも軍服を着て参加していました。この二人が幸せな新婚生活を送れる日が一刻も早く来ますように…

さて昨日は、元学生のティグランとセバン湖に行ってきました。用事があって2か月ぶりに会ったのですが、戦争のせいで悲しいニュースばかりが続き、お互い息苦しさを感じていたので、気分転換のために少し遠出したのです。暗い気持ちで過ごしたところで状況が改善するものでもありませんからね。ちなみにティグランも従軍を志願したそうですが、持病のせいで兵役に就いた経験がないため断られたそうです。彼は残念がっていましたが、私としては戦争に行ってほしくありません…

澄んだ秋晴れで、木の葉も色づき、絶好のドライブ日和でした。とはいえ、会話はやはり戦争のことばかりでしたが、ティグランの友人のほとんどは従軍しているため、前線の生々しい状況を聞くことができました。「毎日2、3時間しか寝れず、早朝から深夜まで戦闘が続く」「若い兵士は、砲撃音や悲惨な戦場を見てショック死することもある」など想像以上に過酷…そんな中で、多くのアルメニア人兵士が勇敢に戦っていることに感銘を受けますが、同時に多くの命が犠牲になっている現実を思うと胸が痛いです。

目的地のセバン湖は、柔らかい陽光に照らされて、とても美しかったです。不変の自然の美しさに触れて、久しぶりに心が安らぎました。湖の半島にあるセバン修道院を訪問して、一刻も早い事態の収束と平和を祈りました。そして、先日亡くなったアルメニア人の知人の冥福を祈りました。その人は妻が尊敬する友人で、木曜の夜に前線で亡くなったという訃報が届いたのです。覚悟はしていましたが、ついに知人が戦死してしまいました…

122570963_2511969825761703_8939799179071941103_narmenia20-10-25.jpg
久しぶりに会ったティグランとセバン湖まで足を伸ばしました。木の葉が色づいて、すっかり秋の景色でした。

122825054_699408667367423_6468061056300838159_narmenia20-10-25.jpg
寒くなかったし、美しい湖の景色に心が癒されました。コロナと戦争の影響で、人はほとんどいませんでした。

122772464_1753989128082916_955209093076438149_narmenia20-10-25.jpg
修道院の壁に白い鳩が止まっていました。平和の象徴ですね。

122744714_288332225558866_6087030308415202101_n20-10-25.jpg
夕暮れ時の帰り道から、アララト山が美しく見えていました。雄大な自然は、何事もないかのように、ありのままに存在し続けています。

122896389_780571392501033_637519706003590998_narmenia20-10-25.jpg
最後にエレバンの勝利公園に立ち寄りました。戦死した英霊に捧げる慰霊の火があります。この戦争で亡くなった兵士のために祈りを捧げました。

彼は、タシールという地方の町で極真空手の道場主を務めていた人で、名前はセヴァックと言います。本部の日本の極真館から指導者が来られた際に、いつも妻が日本語通訳を引き受け、それが縁で仲良くなりました。2年前の盧山館長の訪問時に、私もセヴァックさんと奥さんに何度かお会いしました。その時のことは過去の記事にも書いています。

いつも妻が、「本当に立派で素晴らしい人」と言っていましたが、私も初対面から、彼の純粋で優しい人柄が伝わりました。誰にでも謙虚で誠実で、とにかく空手を心から愛していました。その技術と向上心、何より立派な人格は、多くの弟子たちに慕われ、盧山館長からも高く評価されていました。そのため、2年前には31歳という若さで、館長から直々に師範の位が授与されました。

妻から聞いた話ですが、セヴァックさんは貧しい幼少期に、毎日ヒマワリの種を売って空手を習うお金を工面していたそうです。苦労しながら必死で空手を学び、ついには極真空手の指導者となりました。周囲の支援を得て、日本のセミナーや海外の国際試合にも参加し、アルメニアにおける空手の向上と普及に努めました。自身が苦労人だからか、貧しい家庭の子供たちには無料で教えたりもしていたそうです。生きていれば、優れた空手家の育成など多大な貢献がもっとできたはずです。

セヴァックさんの訃報を聞いた盧山館長は、言葉を失うほどショックを受けていたそうです。彼のことをよく知る国内外の空手の指導者たちも同様に大きなショックを受けて、深い哀悼の意を表しました。まだ33歳の空手家が戦争で亡くなるという事実は、簡単に受け入れられるものではなく、特に平和な日本に暮らす人にとっては全く現実とは思えないかもしれません。

私の妻も、共通の友人から訃報を伝えられた時は、かなりショックを受けていました。戦争発生後すぐに志願して戦地に向かったと聞いてから、ずっと彼の安否を心配して、フェイスブックに軍服姿で元気そうにしている写真が投稿されると、心底ホッとしていました。そうやって無事を祈り続けていた妻にとって彼の死は信じがたいもので、「あんな素晴らしい人が…もったいなすぎる」と号泣していました。

しかし、誰よりも辛いのは彼の家族。セヴァックさんには、愛する奥さんと幼い3人の子供がいます。大切なご主人、そして大好きな父親を失った家族の悲しみはどれほどのものか…それを思うと胸が締め付けられ、涙が溢れてきます。こんな残酷な悲劇が、今ここでは毎日のように起こっているのです。本当に、本当に戦争が憎いです。

昨日ティグランと話している時に私は言いました。「戦死した人たちのために、土地を巡って争い続けるのではなく、これからの命が戦争で死ぬことのない未来を築くこと。それが本当の弔いになるんじゃないか…」 まだ激しい戦闘が続いている今、こんな意見は空しい理想論かもしれません。加えて、今回はトルコが深く関与しているため、単なる領土問題とは言えない部分があります。

しかし、妻の大切な友人であり、立派な空手家であり、また一人の素晴らしい人間が、多くの弟子や大切な家族を残したまま、若くして旅立っていく…そんな悲劇がこれ以上起こってほしくありません。それで悲しむ人たちをもう見たくありません。戦争ほど悲惨なものはなく、平和ほど尊いものはないと嫌というほど痛感しています。一刻でも早く収束することを祈ります。

46516522_2337198459644204_6303849746607898624_oarmenia20-10-25.jpg
2年前のセミナーで、盧山館長や日本の指導者、また私の妻と映るセヴァックさん。尊敬する盧山館長の訪問をすごく喜んでいました。

122369370_2784527454983811_457862624801965008_narmenia20-10-25.jpg 
そのセミナーで、極真館では最年少となる師範の免状を授与されたセヴァックさん。大切な愛弟子を失った盧山館長も大きなショックを受けています。

121339821_2886550691564508_680856149309448464_narmenia20-10-25.jpg  
亡くなる10日ほど前の写真。妻は、戦地で元気そうにしている写真を見ては安心していました。そして、無事を祈り続けていました。

122556250_3903776692986365_552094069739151666_narmenia20-10-25.jpg
妻はセヴァックさんのことを本当に尊敬していました。同じように多くの人が、彼の早すぎる死を心から惜しんでいます。享年33際…ご冥福をお祈りします。

122208646_1640693006104229_7666957784842229668_narmenia20-10-25.jpg
セヴァックさんと家族。彼は、母国のため、家族のために勇敢に戦って亡くなりました。しかし、残された家族のことを思うと、もっと生きてほしかった…尊い命と幸せを理不尽に奪う戦争が心底憎いです。

日本とフィリピンからの温かい支援 

ナゴルノ=カラバフを巡る戦争ですが、これまで2度の一時停戦合意があったにも関わらず、ずっと境界線では激しい戦闘が続いています。捕虜交換と遺体回収のための停戦だったのですが、放置されたままの遺体が腐乱して伝染病が発生する危険があるという報道を見ました。戦闘が始まって、もう1か月近く経ちますからね…

なかなか事態が収束しそうにない中、両国首脳がモスクワで会談して交渉を行う準備があると二日前に発表して希望が見えたと思ったら、昨日パシニャン首相は、アゼルバイジャンは武力による解決のみを求めており、現段階ではお互いに妥協点を探って交渉することができないと述べました…

さらに、パシニャン首相の呼びかけに応じて、国内の州知事や市町村長の多くが志願兵部隊を率いて従軍することを志願し始めました。またトルコのオクタイ副大統領が、アゼルバイジャンから要請があれば、トルコ軍を派遣する用意があると述べました。すでに一線を超えた関与や支援をアゼルバイジャンに行っているのに、自国軍の派遣の可能性まで示唆するとは…約1か月前に発生した軍事衝突が、まさかここまで深刻化するとは予期しませんでした。

アルメニア国防省によると、現在までにカラバフ・アルメニア側の兵士834名が亡くなったそうです。その多くが若い男性で、きっと将来の夢や希望があったでしょう。親や兄弟はもちろんのこと、恋人や婚約者がいたり、中には奥さんや子供がいる人もいたでしょう。それを想像すると、辛くて胸が張り裂けそうになります。昨日、近所の教会に寄ったら、女性たちが泣きながら祈っていました。きっと息子さんやご主人が前線にいるのだと思います。心が重くなる現実ばかりです…

大変なのは前線だけでなく、カラバフ領内の市街地も激しい砲撃に遭い、すでに7万以上(カラバフの人口の約半分)の人が避難しているそうです。その多くは老人や女性や子供で、ほとんど何も持たずに命からがら逃げてきた人たちもたくさんいます。そんな避難家族の子供のために、妻の友人が服を集めていると聞き、息子たちのお古の服やおもちゃを寄付しました。

苦しい状況にある避難民への支援は緊急の課題で、国内外のアルメニア人が個人で、また慈善団体などを通して様々な活動を行っています。その中で最大のものが、「Hayastan All Armenian Fund」という組織。アルメニア系アメリカ人のキム・カーダシアンも100万ドルを寄付しました。集まった寄付は全て、避難民への支援や被災地の復興など人道目的に使われています。

私と妻も個人的に上記基金に寄付をしていますが、先日、私が日本の有志の方々と運営する民間団体「アルメニア友の会」からも寄付させて頂きました。この友の会は、日本語を学ぶアルメニア人学生の招聘など教育支援を目的とした組織ですが、私から役員の方々に現地の状況を伝えたところ、緊急で人道支援のために義援金を送って下さったのです。

また、親友の片岡さんも、大好きなアルメニアのためにと個人で寄付をしてくれた上に、Facebookなどで寄付を呼びかけてくれました。香川県の坂出市王越町で運営する「気まぐれカフェ GOSH」に募金箱を設置してくれたそうなので、お立ち寄りの際には是非ともご協力をお願いします!

そして、フィリピンのダバオ市で「CCC」という会社を経営し、昨年エレバン支社を開設した友人も、会社の方で義援金を捻出してくれました。エレバン支社のアルメニア人社員たちが、避難民の支援などに役立てていくそうです。

国外に約900万人いると言われるアルメニア系移民が、母国のために団結して各地でデモを行ったり、多額の寄付をしています。そして、アルメニアと関わりを持つ日本人の方々も、こうやって支援してくれました。本当にありがたい限りです。悲しく辛い状況ですが、友の会や友人たちとの絆に励まされ、温かい支援を心強く感じました。

現在も戦争は続いており、たとえ事態が収束したとしても、避難民への支援、また被災地の復興には多くの協力が必要です。妻から聞いた話ですが、寄付するためにクルミを売る子供がいたそうで、それに共感した人たちが次々とクルミを買って、最終的に千ドル以上の寄付が集まったそうです。たとえ一つ一つは小さくても、集まれば大きな支援になるのです。

上記の「Hayastan All Armenian Fund」には、クレジットカードからも寄付できるので、アルメニアの現状に少しでも関心を持って頂き、ご協力いただけたら幸いです。英語ですが、基金のHPこちらをご覧になってください。私も、大好きなアルメニアのために、できる限りの支援を続けたいと思っています。そして、何より事態が一刻でも早く収束することを願っています。

DSC_8877armenia19-11-9.jpg
去年の「アルメニア友の会」による学生招聘プログラムの写真。日本語を学ぶアルメニア人学生を日本に招待しています。今回も温かいご支援に感謝します。

122145817_3793112004061977_2630607322637286836_narmenia20-10-22.jpg
今回もアルメニアのために貢献してくれている片岡さん。いつもありがとうございます!2年前に一緒にカラバフをドライブ旅行しました。

74410608_448703152442145_4157718433485553664_narmenia19-11-14.jpg
アルメニアの人道支援のために、会社で義援金を捻出してくれた友人。彼もアルメニアが大好きです。大輔さん、ありがとうございます!

122449450_355331742582623_6785929401677980932_narmenia20-10-22.jpg
大好きなレゴ教室に手を繋いで向かうアレンとレオ

122449450_1748693925295258_4245777338993909199_narmenia20-10-22.jpg
自分で作った作品を嬉しそうに見せるレオ

122544720_681221005835289_1950564354680191147_narmenia20-10-22.jpg
兄弟仲良く並んで眠るアレンとレオ。国全体が悲しみと不安に覆われた今、この何気ない日常をかけがえのない幸せに感じます。