2回目の一時停戦も履行されず… 

日曜は、長男アレンを人形劇に連れて行き、その後、一緒にカフェで食事しました。元々は家族みんなで行く予定だったんですが、次男のレオは少し風邪気味だったので、妻とお留守番…ちょっと微熱もあって、それだと検温で引っかかる可能性がありますからね。帰りは、展望台から雄大なアララト山とエレバンの景色を眺めました。その美しい光景も、今は少し物悲しく見えてしまいます…

ナゴルノ=カラバフを巡る紛争は現在も続いています。土曜の夜、改めて人道目的の一時停戦に双方が合意し、18日0時から開始されたにも関わらず、すぐアゼルバイジャン軍からの攻撃が起こったため、結局そのまま激しい交戦が継続されているのです。アゼルバイジャン側は、カラバフ・アルメニア軍が攻撃したと非難していますが、いずれにしても2回目の一時停戦合意も履行されませんでした…それほど期待していませんでしたが、またしても収束の見込みが消えて落胆しました。

アルメニア国防省によると、軍事衝突発生から現在までにカラバフ・アルメニア側の兵士729人が亡くなったそうです。もちろんアゼルバイジャン軍にも人的損失は出ていますが、向こうはトルコやイスラエルの高性能ドローンを多用している上に、国内の少数民族、そして数千人もの外国人傭兵やテロリストを前線で戦わせているため、アゼリー人はそれほど亡くなっていないかもしれません。アゼルバイジャン人男性の志願兵より、アルメニア人女性の志願兵の方が多いのでは…なんて笑えない話もあります。

結局アゼルバイジャンにすると、たとえ想定していたほど領土を奪還できなくても、アルメニアに甚大な人的損失を与えることができれば目的を十分達成したと言えるのかもしれません。資源のない小国アルメニアにとって、人材こそが最も重要なリソースであり、それが失われると、国の将来にとって深刻な損失になります。いずれにしても、毎日のように多くの若い兵士の命が消えていく現実は辛すぎます。身内や友人、知人や同僚の誰かが戦場に行っているアルメニア人たちは、私の何十倍、何百倍も辛くて不安な日々を送っているはずです。

昨日、現地を視察するためにナゴルノ=カラバフを訪問していたドイツの国会議員が、アゼルバイジャン軍による教会や民間施設への攻撃、またクラスター爆弾など国際条約で禁止されている武器の使用を目の当たりにしたと述べ、明らかな戦争犯罪だとトルコとアゼルバイジャンを厳しく非難しました。同議員が現地を訪問した理由の一つは、ドイツで正確に情報が報道されていないからだそうです。ドイツには約300万ものトルコ移民がいますからね…その欧州を含む国際社会が沈黙し続けているため、カラバフから避難してきた女性たちが、今日エレバンの国連事務所前でデモを行いました。

もちろんアルメニアだけでなく、アゼルバイジャンでも民間施設などには同様の被害が出ており、アルメニア側も、「軍事施設を狙った攻撃だが、民間人にも被害が出た」と否定はしていません。私も、そういう攻撃や被害について肯定するつもりは全くありません。ただ、先日のギャンジャの街で起きた民間施設への攻撃についてはかなり疑問の余地があります。

日本でも報道されたと思いますが、これは、17日未明にギャンジャの住宅地域が30発ものミサイル攻撃を受けて、13人が死亡、50人以上が負傷したという事件です。アゼルバイジャン側は、すぐアルメニア軍による攻撃だと断定し、「必ず報復する」と激しく非難しました。11日にも同様の事件が発生していますが、どちらもアルメニア側は様々な根拠を出して強く否定しています。なのに、それについては全く報道されません。

アルメニアが述べた根拠は以下の通り。30発のミサイル攻撃と言われているが、爆発は1回しか起きていないこと、もし砲撃であれば二次攻撃の可能性が高いにも関わらず、事故直後にレスキュー隊や民間人や報道機関が現場にいたこと、使用された兵器の特定には時間を要するにも関わらず、アゼルバイジャンは即座にスカッドミサイルだと公表したこと、また使用したとされるロケットランチャーの射程距離は20キロで、ギャンジャには全く届かないこと…素人目にもアゼルバイジャンの主張には矛盾点が多すぎます。

さらに、そのギャンジャの惨状を伝えるアゼルバイジャンの報道資料が捏造だらけで、かなり信憑性に欠けています。例えば、跡形もなく破壊されたという被害地の写真は、19年前のインド・グジャラート州で起きた大地震のものだったり、救助された子供にアゼルバイジャン人兵士が水を飲ませる写真は2015年のトルコ兵士のものだったり、さらに酷いのは、泣き叫ぶ遺族の写真が、なんとカラバフ側の遺族のものだったり…公表する前に気づかなかったの?!とさすがに呆れます。

爆発事故そのものは事実であり、被害に遭った人々に対しては心底可哀想に思います。ただ、上記のような点から、アルメニアによる大規模な空爆だったと断定することには違和感を感じます。もちろん何かしらの大爆発があったことは確かで、アルメニアからの攻撃ではないとも言い切れませんが、いつもアゼルバイジャンのプロパガンダがあまりに酷いため、これも疑わざるを得ないのです。

例を挙げると切りがありませんが、例えば、別のアルメニアの砲撃による被害だという写真が21年前の台湾大地震のものだったり、砲撃の現場の様子を伝えた男性レポーターが、翌日アゼルバイジャン軍兵士を演じていたり、砲撃で家を失くしたという少女が涙ながらに被害を訴える写真は、ヘアメイクや演技指導をしてスタジオで撮影されたものだったり…大袈裟を通り越して、悪質な偽装や捏造をされた情報が多いのです。

戦争は情報戦でもあるので、どの国もプロパガンダを行います。アルメニアも、この非常時なだけに自国に有利な情報ばかりを流している面は否めません。しかし、さすがにアゼルバイジャンのは度を超している気がします。まあ、アリエフ一族が人権や情報を厳しく統制している独裁国家で、最新の報道の自由度ランキングでも、世界180ヶ国中168位でしたからね…ちなみにアルメニアは61位で、なんと66位の日本より上!

それでもアゼルバイジャンは、かなりお金をかけて自国に有利な情報を世界中に喧伝し、プロパガンダ戦略はかなり上手くいっているように思います。先日ブログ記事で書いたように、トルコもTRTニュースなど自国メディアを活用して、アゼルバイジャン贔屓の情報を発信し続けています。逆にアルメニアは悪質な捏造などがない分、情報戦で後塵を拝して不利な状況です。

そのため、私も可能な限り、ブログなどでアルメニア側の情報や見解を伝えるようにしていますが、トルコやアゼルバイジャンに対する嫌悪感情を煽るつもりはありません。双方に大きな被害が出ており、それはどちらにとっても戦争の悲劇です。また、どんな手を使ったとしても、最後は勝った側が正義になってしまうのが戦争の非情な掟であることも分かっています。

しかし、今回の紛争におけるトルコやアゼルバイジャンの行動は明らかに一線を超えています。にも関わらず、それに関する報道は乏しく、また偏っているため、当ブログを通して少しでも多くの人に知ってほしいのです。そして、戦争の悲惨さと平和の尊さを改めて考えてほしいと思っています。

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アレンと見た人形劇。いつもの如くアレンだけテンション低めでしたが、他の子供たちは大喜びしていました。子供の無邪気な笑顔が、今はより眩しく映ります。

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劇の後は、アレンとカフェに行きました。ピザを気に入ったみたいで、たくさん食べていました。

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天気が良かったので、帰りに展望台に上がりました。そこからはアララト山とエレバンが一望できます。なぜかガイドみたいなポーズを取るアレン。

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夕焼けがとても美しかったです。いつもと変わらない一日の終わりが、今は奇跡のように感じることがあります。

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夕陽に染まるアララト山とエレバン。この国は、街は、人は本当に美しいです。この愛する場所に一刻も早く平和が訪れますように…

軍事衝突発生から3週間 

9月27日に軍事衝突が発生してから今日で3週間が経ちました。1週間前に一時停戦の合意があったのに、現在も前線では激しい戦闘が続いています。アルメニア国防省によると、昨晩はステパナケルトやシューシなどの市街地に激しい砲撃があり、民間人が負傷したそうです。また、アルメニア領内のシュニク地方にも、アゼルバイジャン軍のドローンが侵入して民間インフラを攻撃したという情報があります。

昨日は、戦場に行っていた妻の再従兄弟がアゼルバイジャン側の狙撃手に撃たれ、エレバンの病院に搬送されて手術を受けたという連絡がありました。銃弾が脇腹から太腿を貫通するという重傷でしたが、幸い命には別状ないそうです。彼には奥さんと2歳ぐらい息子さんがいるので、とにかく生きていて良かったです。

また、昨日はとても気分が悪くなるニュースがありました。アゼルバイジャン軍がアルメニア人捕虜に対して侮辱と拷問を加え、残酷に殺害する映像と写真がネットに流れ、アルメニアの人権オンブスマンが入手したのです。流出元はアゼルバイジャンで、すでにネットから削除されていますが、その前に多くの人が見たようです。撮影された場所や時間も特定され、すでに戦争犯罪の証拠として欧州人権裁判所に提出されました。いくらなんでも酷すぎる…

戦争に完全な正義や悪は存在しないとは思いますが、自分たちの国やアイデンティティを守るために戦うのと、憎悪に駆られて戦うのとでは大きく違います。前者は大切なもののために死ぬ覚悟が生まれ、後者は敵を殺すことに執着するからです。上記のような捕虜の殺害、また当ブログでも何度か書いた、ラミル・サファロフというアゼルバイジャン軍人が就寝中のアルメニア人を斧で殴り殺した事件などがその例と言えるかもしれません。

トルコからアゼルバイジャンに送られて前線で戦ったハムザ師団傭兵2人が、最近アメリカ人ジャーナリストの取材で語ったことも象徴的です。彼らは、「アルメニア軍の国を必死で守ろうとする士気の高さに驚いた。逆にアゼルバイジャン軍は、外国人傭兵やテロリストの200メートル後方に留まって戦おうとしなかった。自分たちが何のために戦っているのか分からなくなった…」と語りました。元々は基地警備の仕事だと言われたのに、前線に送られて騙されたことも告白しました。

ちなみに先日、リビア国民軍のアハメッド・アル=ミスマリ総司令官が、トルコが多数のシリア人やリビア人などのテロリストを召集し、リビアの空港からアゼルバイジャンに派遣していると述べ、トルコの一線を超えた紛争への関与がまた裏付けられました。トルコはチェチェン人兵士まで動員する可能性があるらしく、アルメニア人は一体どれだけの相手と戦わないといけないのでしょうか…

しかも、同じ虐殺された歴史を持つユダヤ人の国イスラエルまでが、アルメニア人への攻撃に協力しています。今回の紛争でアゼルバイジャンは大量の軍事ドローンを使用しているのですが、そのドローンの大半はトルコとイスラエルから供与または購入されたものなのです。それら高性能のドローンは、カラバフ・アルメニア軍に甚大な被害を与え、多くの兵士を殺害しています。これについては、著名なユダヤ人のホロコースト研究者も、とても残念で恥ずべきことだと厳しく批判しました。

前回の記事に書いたように、ナゴルノ=カラバフのアルメニア人は、ソ連憲法や国際規約で認められた民族自決権を行使して独立を果たしたので、アゼルバイジャンの領土保全とは一切関係ありません。またアルメニアは、過去の交渉で何度も譲歩する姿勢を見せ、パシニャン現首相もそれを明言しています。にも関わらず、アゼルバイジャン側がそれを拒否し続け、今なお争いが収まることなく、双方で多くの血が流されているのです。ただ向こう側は、戦場で血を流しているのは外国人傭兵やテロリストが大半かもしれませんが…

アゼルバイジャンにしたら、国民を統制してアリエフ独裁体制を維持するための道具として、永遠にアルメニアを敵国扱いできるこの領土問題を利用したいという事情があるでしょう。しかし今回の戦争では、オスマン帝国時代にアルメニア人虐殺を行ったトルコ、そして同じ悲劇を経験したユダヤ人までがアゼルバイジャンに協力し、アルメニア人を攻撃しています。この多勢に無勢の圧倒的不利な状況の中で、この3週間アルメニア人たちは必死で戦い続けています。そして、多くの犠牲を出し続けています…

ここに住むアルメニア人だけではなく、世界中のアルメニア人が立ち上がり、毎日のように各地で大規模なデモを行っています。暴力的なデモではなく、ナゴルノ=カラバフ住民が望んでいるのは平和であり、アゼルバイジャンやトルコのテロ行為を止めるよう訴え、そのために国際社会に連携と正義を求めるものです。

そのアルメニア人の呼びかけに応えるかのように、ジュネーブとミラノの市議会は、ナゴルノ=カラバフ共和国の独立を認める決議を採択しました。小さな動きかもしれませんが、今後さらに多くの国や地域が積極的に動いて、この争いの収束のために協力してほしいと思います。正直もうこれ以上、人の死や悲しみを見るのは耐えらません。本当に一刻でも早く収束することを祈ります。

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コロナで学校や幼稚園は閉鎖されたけど、レゴ教室は開いているので、一昨日も連れて行きました。

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肌寒くなってきましたが、秋晴れで天気はいいので、家族で毎日散歩しています。エレバンは普段と変わりないようです。

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でも、この平和な光景が、時に蜃気楼のように儚く見えて、底知れぬ切なさと悲しみがこみ上げてきます…早く平和になってほしいです。

ナゴルノ=カラバフに関する国連決議 

昨日アルメニアのコロナの新規感染者数が千人を超え、戦争の負傷者の治療で忙しい医療機関を圧迫しかねないという理由から、今日から全ての教育機関が2週間閉鎖されることになりました。その代わり11月上旬の秋休みはなくなる予定ですが、状況次第では、このまま再開されないかもしれません。ただでさえ戦争で気分が滅入っているのに、この決定にはウンザリ…

もちろん戦争下の医療機関の大変な状況は理解していますが、感染拡大を予防するために教育機関を閉鎖するのは間違っています。これまでブログで何度か書いたように、子供の感染するリスク、また感染させるリスクはかなり低いことは明らかになっています。スウェーデンが小中学校を閉鎖しなかったのも、そういった科学的根拠に基づいた判断です。もっと科学的かつ効果的な対策を講じるべきなのに、一体いつまでこんなことが続くんでしょうか…

コロナよりもっと深刻な問題の戦争ですが、現在も境界線では戦闘が続いています。アルメニア国防省によると、軍事衝突発生から現在までに、カラバフ・アルメニア側の兵士604名、子供や女性を含む民間人34名が亡くなったとのこと…一時停戦合意から全く交戦が収まる様子がないため、ロシアが自国軍の停戦監視団を派遣する可能性を示唆しています。

昨日は、ナゴルノ=カラバフ領内の病院にアゼルバイジャン軍から砲撃があり、建物の一部が損壊したそうです。幸い死傷者は出ませんでしたが、明らかな戦争犯罪だとアルメニア側は非難しています。同じく昨日、アルメニア領内のヴァルデニス地域で、アゼルバイジャン軍のドローン攻撃によって14歳の男子が重傷を負い、現在エレバンの病院で治療を受けています。

また、アゼルバイジャンを支援して紛争に関与しているトルコは、米国からアルメニアへの人道支援物資100トンが自国領空を通過して輸送されることを禁じたため、同物資の配送が大幅に遅延しているそうです。トルコがアルメニアへの貨物輸送を妨害するのは初めてではありませんが、いくらなんでも人道支援物資の輸送まで邪魔するなんて酷すぎ…

さて、以前の記事こちらに、アルメニア人にとってナゴルノ=カラバフがどういう場所かについて書きました。今日は、国際社会におけるナゴルノ=カラバフの法的地位について説明したいと思います。というのも、日本のメディア報道は相変わらず偏りがあると感じるからです。けっこう長くなりますが、最後まで読んでいただければ幸いです。

まず、アゼルバイジャンが自国領土だと主張する根拠として持ち出すのは、2008年の国連の総会決議。「全てのアゼルバイジャン領内占領地からの即時、完全かつ無条件でのアルメニア軍の撤退」という決議で、いつもアゼルバイジャンはこれを盾に自分たちの立場を正当化しています。

しかし、この採決で賛成したのは、たったの39ヶ国で(意見表明したアゼルバイジャンとその友好国のみ)、100ヶ国が棄権し、OSCEミンスクグループ共同議長であるロシア、アメリカ、フランスを含む7カ国は反対しました。つまり、7割以上が賛同していない上に、ナゴルノ=カラバフ問題の平和的解決を主導する国々が反対し、さらに法的拘束力もないため、この決議を国際社会の要求とするのは明らかに無理があります。

実は、約30年前の紛争時に、国連安保理が重要かつ基本となる決議を採択しています。その決議とナゴルノ=カラバフの法的地位について重要な点を以下にまとめてみました。

国連安全保障理事会は、ナゴルノ=カラバフ紛争の解決策について議論や提案をしたことはなく、1993年に、敵対行為の地理的拡大、また他国が紛争に関与する脅威を防ぐために、4つの決議を採択しました。

・その決議の主な要求は、即時停戦と交渉プロセスの再開で、ナゴルノ=カラバフのアルメニア住民も紛争の当事者とされています。また、アルメニアへの唯一の要求は、平和的解決を見出すために、ナゴルノ=カラバフのアルメニア人に可能な限り影響力を行使することです。

・国連は法的承認を行う機能を持たないため、世界のどの地域の法的地位についても議論また承認したことは一度もありません。この決議も、ナゴルノ=カラバフと隣接地域の地位を法的に承認するためのものではなく、その法的地位は交渉プロセスを通じて最終的に明確にされる必要があります。

・ナゴルノ・カラバフ住民の自決権は、OSCEミンスクグループやEU諸国、その他の多くの国々によって認められています。ソ連崩壊に伴って独立したアゼルバイジャンは、そのナゴルノ・カラバフ住民の意思に反して、同地域を自国領に含める権利はありません。

・ナゴルノ=カラバフ住民は、ソ連の憲法や法律、また国際規約によって認められた自決権を行使し、住民投票で独立を選んだのであり、当該地域はアゼルバイジャンの領土保全とは一切関係がありません。


上記を読めば分かるように、国連はナゴルノ=カラバフの法的地位を定めておらず、アゼルバイジャン領土とは一切言及していません。ナゴルノ=カラバフは、国際規約などで認められた民族自決権によって独立したので、アゼルバイジャンの領土保全とは関係ありません。だから、アルメニアとカラバフ側はいつも、「これは自決権と基本的人権の問題だ!」と訴えているのです。

さらにこの安保理決議では、ナゴルノ=カラバフ住民も問題の当事者とされているにも関わらず、アゼルバイジャンはそれを拒否し、これまで交渉プロセスに一度も参加させようとしませんでした。アゼルバイジャンは、停戦や国境封鎖の解除などの要求も履行していません。しかも、この決議には法的拘束力があります。なのに、アゼルバイジャンが、2008年の総会決議だけを国際社会の要求だと主張するのは虫が良すぎます。

しかし、いまだに日本のメディアは、そのアゼルバイジャン側の見解に軸を置いた報道ばかりが目立つようです。2008年の総会決議には触れても、より重要な1993年の安保理決議に触れることは一切なく、アルメニア側の見解は無視され続けています。国際社会の見解を根拠とするなら、この二つの決議と両国の主張を公平に伝えるべきです。

大体メディアが贔屓するアゼルバイジャンが、長年アリエフ一家の統治する独裁国家で、アルメニアへの憎悪を過剰に煽るプロパガンダや教育が30年間ずっと続き、挙げ句の果ては、無防備のアルメニア人を斧で殴り殺した人間を英雄として称えるような国情であることを知らない人も多いでしょう。(その事件についてはこちら

恐らく、この不公平さの背景にはトルコの影響力も大きいかもしれません。例えば、「ナゴルノ=カラバフ」でネット検索すると、TRTというトルコのニュースサイトが上位で出てきます。日本語で書かれ、日本のニュースも詳しく扱っているし、デザインも一見すると日本のメディアかと思ってしまう作り。しかし、トルコ発信なので、当然ナゴルノ=カラバフ関連のニュースは完全にアゼルバイジャン寄りで、アルメニアは徹底的に悪者扱いされています。何気なく検索して、これを見たら、「アルメニアはひどい!」と思うでしょうね…

そのトルコは、紛争の当事国でもないのに、シリア反政府軍傭兵やイスラム過激派テロリストをアゼルバイジャンに派遣するなどの関与を行って状況を悪化させています。そのせいで、今アルメニア人は、関係のない外国人傭兵やテロリストと戦っているのです。アルメニア側にもシリア人兵士がいるという報道を見ましたが、中東には昔からアルメニア人が多く住み、彼らが母国の戦いに参加していても何らおかしくはありません。

ちなみに一昨日、トルコの国会議員が、シリア人傭兵4千人と軍用機をアゼルバイジャンに送ったことに関する質問状を外務大臣に提出しました。また、トルコのF-16戦闘機や軍事ドローンを紛争で使用したか事実確認するよう訴え、国際社会が即時停戦を求めている中、それに逆行する自国の行動を非難しました。完全に一線を超えたトルコの行動は、国内でも問題になっているのです。

とにかく、せめて紛争当事国の双方の主張を公平に伝えてほしいし、このトルコの横暴に対して批判的な報道がもっとあるべきだと思います。ましてトルコは、オスマン帝国時代にアルメニア人虐殺を行った歴史があり、その国がアルメニア人への攻撃を直接支援しているというのは大問題です。ただ、これについては、日本だけでなく世界の多くの国が沈黙しています。その状況について、知り合いのアルメニア人がこう言っていました。

「オスマン帝国は、当時アルメニア人虐殺を隠す必要などなかっただろう。なぜなら、世界はその犯罪行為を無視したから…同じことが今また繰り返されようとしている」

ここに住む数少ない日本人である私の発信する情報は、基本的にアルメニア側の見解に軸を置いたもので、メディアに公平性を求めていながら矛盾しているのは承知しています。しかし、日本のメディア報道がトルコ・アゼルバイジャン側にかなり偏向していることは間違いなく、それについては周りのアルメニア人や日本にいるアルメニア人もとても残念に感じています…

だから、私は今後もアルメニア側の情報や見解をなるべく客観的に伝えていくつもりです。少しでも多くの人に、「そんな情報や意見もあるのか!」と気付いてもらい、もっと様々な視点から、この領土問題や紛争のことを考えてもらうきっかけを作りたいのです。そして、戦争の悲惨さと平和の大切さを知ってほしいと思っています。

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コロナで教育機関は閉鎖されましたが、レゴ教室は開け続けるそうです。エライ!なので、今日も連れて行く予定。

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アレンもレオも楽しそうに通っています。もしここも閉まったら、二人とも可哀想…

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今起こっている戦争のことなど知らず、無邪気に遊ぶ子供たちを見ていると、時折なんだか辛くなります。一刻も早く収束してほしいです。

長男アレンの7歳の誕生日! 

先週の土曜日に一時停戦の合意に達したアルメニアとアゼルバイジャンですが、依然として前線では衝突が発生し、「相手が停戦違反をしている」とお互いに非難の応酬が続いています。全く戦闘が収まりそうにない状況に、一体あの停戦合意は何だったのか…と怒りと虚しさがこみ上げてきます。

アゼルバイジャン側が奪還したと虚偽の発表をした南部のハドルト地域では、アゼルバイジャン軍の攻撃が特に激しく、兵士だけではなく、複数の民間人も犠牲になったそうです。トルコの後押しもあってか、アゼルバイジャン側は、「あくまで人道目的の一時停戦であって、紛争自体は終結していない」と強硬な姿勢を崩していません。もう本当に早く収束してくれないでしょうか…

昨日はアルメニアの外相がモスクワを再訪問して、ロシアのラブログ外相と会談しました。今日は、OSCEミンスクグループ共同議長らと会談したようです。昨日の会談後にラブロフ外相は、一時停戦の合意を双方が遵守するよう求め、領土問題の平和的解決のために、さらに踏み込んだ交渉を行っていくと述べました。

しかし、自国軍の参加、またシリア反政府軍やイスラム過激派のテロリストの派遣など、アゼルバイジャンへの過剰な支援を行っているトルコへの批判はあまりなかったので、裏でいろいろと駆け引きが行われているのでしょう。大国の思惑に振り回されて、現地の人間が血を流すこの悲劇が早く終わってほしいと思います。


アゼルバイジャン軍の砲撃によって損壊したガザンチェツォツ大聖堂で、アルメニア人チェロ奏者がコミタス の曲を演奏しました。この撮影時も砲撃される危険があったでしょう。

さて、前回の記事で書いたように、日曜は長男アレンの7歳の誕生日でした。私と妻からのプレゼントがお気に入りみたいで、毎日レオと楽しそうに使ってくれています。特殊なペンが、対応した地図や絵本からデータを読み取って説明やクイズを音声で流すというもの。その情報量が半端なくて、けっこう高かったけど、いいプレンゼントになったと思います。

夕方、エレバンの中心部のレストランに家族で出かけました。食事前には、レストランの隣にある子供が遊べる有料スペースで遊んでもらいました。レゴで遊んだり、実験したり、クッキーを作ったりと、アレンもレオも楽しい時間を過ごしたようです。かなり充実した場所なので、また連れてきてあげたいです。夕食も、大好きなクラムチャウダーや寿司を食べれて、アレンはご満悦の様子でした。

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私と妻がプレゼントしたペンと絵本がお気に入りのアレンとレオ

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仲良くレゴ遊びするアレンとレオ

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クッキー作りにも挑戦!

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レオも挑戦!楽しそう!

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自分たちが作ったクッキーを見せてくれました

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こんな状況の中、家族でお祝いできるって幸せなことです。今は毎日、そんな幸せを噛みしめながら暮らしています。

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兄弟仲良く手を繋いで歩くアレンとレオ。可愛い!息子たちには、戦争の悲しみや苦しみを経験せずに生きていってほしいです。

帰宅すると、お楽しみの誕生日ケーキの登場!アレンの希望で、アイアンマンをデザインしたケーキを注文しました。レオの誕生日ケーキのスパイダーマンもそうだったけど、このアイアンマンも、ディテールまで上手に作られていました。アレンも気に入ってくれて良かったです。妻の親戚の子供たちもお祝いに来てくれて、みんなが見守る中、ロウソクを吹き消しました。アレン、本当におめでとう!

こういう時期なだけに、今年の息子たちの誕生日のお祝いは格別に嬉しく感じました。いつものように明日が来て、何気ない日々を送れること、子供の成長を見守り、家族と平穏に暮らせることが、どれほど有難く素晴らしい宝物か…それを改めて痛感しています。戦争ほど悲惨なものはなく、平和ほど尊いものはありません。早く事態が収束してほしいと思います。

ちなみに、アレンの誕生日の10月11日は、国際ガールズ・デーだそうで、今年アルメニアでは、戦争に参加している女性たちが讃えられていました。実は、自ら従軍を志願した女性もけっこういるのです。また、海外のアルメニア人たちも、母国のために戦うために次々と戻ってきています。そして、昨日ロサンゼルスでは、トルコとアゼルバイジャンの軍事攻撃に抗議するため、なんと10万人以上のアルメニア人が集結してデモを行ったそうです。同様のデモが、毎日のように世界中で行われています。

このアルメニア人の愛国心と団結力の強さには本当に感動しますが、それは悲惨な歴史を経験し、現在もその苦難が続いているから…いつか真の平和が実現して、世界中のアルメニア人たちが集まって喜べる日が来ることを祈ります。

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アレンの大好きなアイアンマンの誕生日ケーキ!

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みんなでお祝いしました。アレン、7歳の誕生日おめでとう!

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親戚の子供たちにプレゼントを自慢するアレン

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同じく誕生日プレゼントのツイスターで、みんな楽しく遊んでいました。子供たちが笑顔でいられる平和って素晴らしい!早く事態が収束してほしいと思います。

アルメニアとアゼルバイジャンが一時停戦 

今日は、長男アレンの7歳の誕生日!朝、家族みんなで「おめでとう!」と言って、用意していたプレゼントを渡しました。とても嬉しそうでしたね。日曜日なので、午後からカフェかレストランにでも行こうかと思っています。アレン、おめでとう!

さて、日本でも報道されていたかと思いますが、アルメニアとアゼルバイジャンが人道的観点から一時停戦に合意しました。一昨日の夜、ロシアの仲介により、モスクワで両国外相の会談が行われました。そして、11時間に及ぶ協議の末、戦闘を10日正午から停止し、赤十字国際委員会の仲介による捕虜の交換や遺体回収作業などが行われることになりました。

また、OSCEミンスクグループ共同議長の調停の下、平和的解決に向けた交渉を再開することも決定しました。アゼルバイジャンはトルコを仲介国に加えるよう求めていましたが、その提案は退けられました。今回の紛争において、一線を超えた介入や関与を行ってアゼルバイジャンを支援したトルコに中立性などあったものではないから当然です。

しかし、アルメニア国防省の発表によると、一時停戦が開始されてから5分後に、アゼルバイジャン軍の攻撃が発生し、数時間経ってからも、アルメニア領内のシュニク地方、またカラバフ領内のハドルト地域への攻撃が続けられたそうです。さらに昨晩遅くにはステパナケルト等にも砲撃があったとのこと。アゼルバイジャン側も、カラバフ・アルメニア軍から砲撃があったと述べており、こんな状況では、いつまた大規模な衝突が再開するのか不安になります。

ちなみに、上述のハドルト地域は、一昨日アゼルバイジャンのアリエフ大統領が「我が軍が奪還した」と発表しましたが、その直後に、現地を取材中だったロシアメディア、またアルメニア軍の報告によって、それが虚偽であることが明らかになった場所。そのため、アゼルバイジャン軍は、一時停戦の合意に違反しながらも、同地域の奪還を試みたのではないかと見られています。

アルメニア国防省は、アリエフ大統領が事実とは異なる発表を頻繁に行っていることから、アゼルバイジャン軍の戦略管理システムに綻びがあり、虚偽の報告などが多数行われているのではないかと指摘しています。日本の大本営発表に代表されるように、いつの時代も戦争では、上官が失敗の責任追及を恐れて、虚偽の報告をするのはよくあることです。もちろんアルメニア側もないとは言い切れませんが、さすがにこんなすぐバレるようなデマを大統領が発表してしまうアゼルバイジャンの状況はヤバイかも…

実際にアゼルバイジャン側のプロパガンダは酷くて、そのあまりに胡散臭い内容は、アルメニアのネット上で笑いのネタになる程でした。ちなみに、アルメニアは、この戦争中もフェイスブックなどのソーシャルメディアを自由に利用でき、海外メディアの取材も受け入れていますが、アゼルバイジャンは、それらを普段から厳しく規制しています。アゼルバイジャンにとって最も深刻な問題は、この領土紛争よりも、富や権力を牛耳る独裁者が人権や情報を著しく制限し、国民の憎しみを過剰に煽って戦争へと駆り立てる内情ではないでしょうか…

とにかく1994年の停戦以来最大規模となった2週間に及ぶ武力衝突は、一旦収束に向かうことが決まりました。あくまで人道目的の一時停戦であり、散発的な攻撃が続いているため、本格的な戦闘が起こる可能性は否定できません。お互い主張を一歩も譲らない姿勢を貫いているため、根本的な解決には程遠い状況です。また、仲介国ではないにしろ、トルコの干渉や反発で交渉がさらに難航することも予想されます。

まだまだ予断を許しませんが、今回の戦争を通して、国内だけでなく、世界中のアルメニア人の愛国心や団結力の強さを改めて目の当たりにしました。トルコの支援も得て圧倒的な軍事力を誇るアゼルバイジャンと必死で戦うアルメニア人の勇敢さに驚嘆しました。その中で起こる様々な人間ドラマに感動することもありました。

しかし、何より痛感したのは、戦争の悲惨さです。終わりのない領土を巡る争いと憎悪の連鎖で、双方で多くの人が傷つき、家を失い、そして命を落としました。公式情報では、この2週間の戦闘で、カラバフ・アルメニア側は400人以上の兵士と20人以上の民間人が亡くなったそうです。本人の無念と大切な家族や友人を失くした悲しみを思うと、本当にやりきれません…

戦火が及ぶかもしれない恐怖を感じ、兵士や市民の犠牲に心を痛め、暗く重い気持ちで過ごした日々は、私にとって辛く、また同時に貴重な経験でした。二度と同じような事態は起こってほしくないですが、この経験を通じて、戦争ほど悲惨なものはなく、平和ほど尊いものはないことを身を以て学びました。今の自分にとって、平和を希求することは単なる理想論ではなく、妥協してはいけない真理だと言えます。

では、日本のように平和ではないアルメニアが嫌になったかというと…全くそんなことはありません。領土紛争以外にもいろんな問題がありますが、やはり私はこの国が好きです。今後もできる限り、ここで子育てして、働いて、家族と共に暮らしていきたいと思っています。多くのアルメニア人も、本当は平和を望んでいます。大好きなアルメニアに、いつか平和が訪れることを祈っています。

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今日はアレンの7歳の誕生日!私と妻からは、特殊なペンと地図や絵のセット。そのペンで地図や絵に触れると、説明やクイズが音声で流れます。

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買うときは知らなかったけど、アルメニア製だから、世界地図には、ナゴルノ=カラバフの国旗、また同地域が含まれたアルメニアの地図がありました。

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家族で遊べるようにツイスターもプレゼント。早速、兄弟で遊んでいました。

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昨日の夕方は、アララト山がとても美しかったです。一時停戦によって紛争が収束してほしいと願います。