サフモサ修道院と天文台のツアーに参加 

昨日、安倍首相が健康上の理由から辞任を発表するという速報がありましたね。第一次安倍政権時代も同じ持病で辞任したし、それが主な理由と考えるのが自然ですが、他に何もなかったのでしょうか…日本のメディアは、首相とトランプ大統領との蜜月関係の重要性を強調していますが、トランプ氏は選挙戦の公約に「駐留米軍経費の負担増」を掲げていて、たとえ安倍首相が続けていても、日米関係の変化は避けられないかもしれません。

また水曜日の朝、アルメニアでもショッキングなニュースがありました。エレバン市内のアパートでガス爆発が発生して、建物の一部が倒壊する大事故があったのです。ちなみに、私が住む同じ地区にあるアパートでした(徒歩で行けるような近距離ではありませんが)。4階建てのソ連時代の古いアパートで、その一部が爆発で完全に倒壊しましたが、死者は1人だけだったようです。それでも悲惨な出来事です。

さて、一昨日は、初めてアルメニアの国内ツアーに参加してみました。というか、私は90か国旅行した経験がありながら、基本的に自力で観光するというスタイルだったので、ツアーというものに参加したことがほとんどありません。そんな私がなぜ今回ツアーに参加したかというと…天文台に子供たちを連れて行けるから!

エレバンから車で45分ぐらいの山の上にビュラカン天文台というのがあります。ヴィクトル・アンバルツミャンという偉大なアルメニア人天文学者が1946年に創設した天文台です。アンバルツミャン氏は、理論天体物理学の創始者の一人で、ビュラカン天文台の初代所長を1988年まで務めました。

そのビュラカン天文台を訪問するツアーを妻を見つけて、宇宙の世界に一時期ハマっていたアレンとレオのために参加してみようか?となったのです。最近はあまり関心なさそうですが、二人とも太陽系の惑星は全部知っているし、アレンは星と惑星の違いとか、マケマケやハウメアといった準惑星のことまで詳しいです。「天体望遠鏡で惑星を見に行かないか?」と言うと、とても嬉しそうでした。

そのツアーには、天文台だけでなく、サフモサ修道院の観光も含まれていました。ここは今年5月にも家族で訪問していて、その時のことはブログ記事にも書いてあります(こちら)。美しい夕焼けのタイミングに訪問するとのことで、そちらも見応えありそうだから、家族でツアー参加を決めました。

夕方6時にエレバン中心部を出発ということで、行ってみると移動の大型バスは満席でした。もちろん参加者はみんなアルメニア人で、ガイドも当然アルメニア語しか話しません。そんな中で唯一の外国人の私は浮いていましたが、普通にアルメニア語ができることが分かったら、みんな途端に笑顔になりました。

まずサフモサ修道院に着いて、ガイドの説明を聞きます。妻も日本語ガイドの仕事をやっていましたが、この修道院はツアーでは訪れない場所なので、知らなかった情報がいろいろあったみたいで、すごく興味深そうに聞いていました。私も知らなかったけど、教会内部には歴史的に価値のある壁画なども残されていて驚きました。

しかし、何より素晴らしかったのは、そこからの夕暮れ時の風景。サフモサ修道院は切り立った崖っぷちに建っていて、そこからは遠くにアララト山も望むことができるのです。その日は雲一つない快晴で、月もきれいに出ていました。人の少ない時間帯だったし、雄大な景色を思う存分満喫することができました。

その後、ビュラカン天文台に向かいました。着いたのは夜8時半ぐらいで、もう真っ暗。大勢では入れないので、2つのグループに分かれて行きます。私たちのような子供連れが先に入場して、その天文台で働くガイドの説明を聞きました。天気が良かったから、頭上には満点の星空が広がっていました。

そして、天体望遠鏡がある場所に行って、それで惑星などを見せてもらいました。見たのは木星、土星、月。肉眼で見たことない木星や土星の姿を確認して、アレンが喜んでいました。地球から近い月は、クレーターなどもくっきり見えて、とても美しかったです。ちなみに、アレンが「土星の環は石と氷と埃で出来ているだよー」と言うのを聞いて、ガイドがビックリしていました。私も、久々にアレンが宇宙に関心を持ってくれて嬉しかったです。

2つ目のグループの観光も終わって、エレバンに戻ってきたのは夜11時半…もう遅いのと疲れから、子供たちは帰りの車の中で寝てしまいました。私たちも疲れましたが、大満足の内容で参加してよかったです。子供たちが喜びそうな国内ツアーがあれば、また参加したいと思います。

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夕暮れ時の美しいサフモサ修道院

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修道院の天窓。ハチュカル(十字架石)が一つ嵌められていますが、これはとても珍しい作りだそうです。

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修道院奥の礼拝室には、美しい壁画が残されています。

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アルメニアにキリスト教を広めた聖グリゴールを描いた壁画もありました。

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修道院の後ろは切り立った崖で、そこから深い渓谷とアララト山の雄大な景色が広がっています。月も出て、とても美しかったです。

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私的には、この素晴らしい景色がツアーでも最も感動した瞬間かも…

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天文台は真っ暗だったので、残念ながら写真がありません。疲れたけど、子供たちにとって楽しい経験になったと思います。いい夢を見ていることでしょう

ダリとピカソの展覧会 

ここ数日は天気が不安定で涼しかったですが、今日から30℃前後の暑い日が続くようです。とはいえ、8月も下旬に入ったので、例年のような暑さは経験しないまま夏が終わりそうです。

逆に日本は猛暑が続いていて、熱中症で緊急搬送されたり、亡くなったりする人が急増しているそうですね。今年は暑くてもマスクをしている人が多いと思いますが、マスクは熱中症のリスクを高めるので、使用についてはよく考えた方がいいかもしれません。というか、個人的には、今の時期コロナよりも熱中症の方が危ないし注意すべきかと思います

緩和されたとはいえ、アルメニアはマスク着用がまだ義務付けられていて、来月15日から再開される学校でも同様の方針です。ただ、これには反対する父兄も少なくありません。確かに、アレンのような小さい子供がずっとマスクを付けているのは辛いだろうし、逆にマスクのせいで健康を害したり、集中力が落ちたりしそうで心配です。

大体3月中旬に教育機関が全て閉鎖されてからも、子供たちはマスクなどせず、外でみんな遊びまわっていますが、今まで小さい子供の感染拡大や重症化が問題になったりしていません。なのに、学校でマスク着用や食堂の使用禁止などのルールを設けるのは、「いろいろ対策をやってる感」は出るけど、実際は大して意味はない気がしますけどね。

さて、先週の土曜日は、国立博物館で開催中のダリ・ピカソ展に家族で行ってきました。本当は3月下旬から1か月の予定で開催されるはずだったんですが、新型コロナの影響で非常事態宣言が発令されて、ずっと延期になっていたのです。最近、博物館や美術館の再開、屋外イベントの実施などに対する許可が出されたため、開催されることになりました。

絵画鑑賞だから、妻と二人で行くつもりでしたが、ダリとピカソの作品なら、レオはともかくアレンは面白がるかもしれないと思い、息子たちも連れて行くことにしました。行ってみると、けっこう人が並んでいました。感染予防のために、入館時間や人数に制限が設けられているせいです。検温も行うから、列の前の方にいた私たちでさえ30分近く待ちました。日曜だった昨日は、かなりの長蛇の列ができたみたいです。

さすがスペインが生んだ二大巨匠のダリとピカソの貴重な展覧会だけあって、多くの関心を集めたようですね。個人のコレクションなので、「記憶の固執」や「ゲルニカ」などの有名作品はなかったですが、彼らの独特の世界観に溢れた作品が数多くの展示されて見応えありました。アレンも、ダリのシュールな芸術は面白がっていました。日本の昔話をモチーフにしたダリの絵があって、それには私も驚きました。

ちなみに、私は20年以上前に南ヨーロッパを旅行した時に、スペインでダリやピカソの作品を鑑賞したことがあります。ダリの故郷フィゲラスという街にあるダリ美術館は、建物もダリ自身がデザインしたという、彼の世界観が爆発した空間でした。また、マドリードのソフィア王妃芸術センターで見たピカソの代表作「ゲルニカ」は、その絵から溢れ出るパワーに圧倒されました。今回の展覧会に行って、当時の思い出が蘇りましたね。

やはり素晴らしい芸術に触れると心が豊かになる気がします。特に今のような状況の世界では大切なことかもしれません。実際に多くの人がそんな時間や場所を求めているからか、4日間の限定だったダリ・ピカソ 展覧会は、連日大盛況のため、1週間延長されるそうです。また何か面白そうな展覧会があれば行ってみたいと思います。

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ダリの作品。やはりシュールで不思議な世界観!大好きな芸術家です。

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日本の昔話をモチーフにした作品もありました。写真の作品は「桃太郎」

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アレンのお気に入りはロブスターの電話!奇想天外なダリの作品は、アレンも面白がっていました。

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ピカソの作品。これも見応えがありました。ちなみに写真撮影はOKでした。

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このピカソの陶器は、アレンが面白そうに見ていました。

また家族で採蜜作業を見学 

日本でも報道されていますが、ベラルーシの大規模な反政府デモ、そしてイスラエルとUAEの国交正常化といった大きな国際ニュースが話題になっていますね。ベラルーシのデモに参加した日本人が拘束されたという情報もありました。

「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領による長年の強権政治に、多くの国民が辟易しているのは事実でしょうけど、デモの背景には他国の思惑なども影響しているかもしれません。しかし、警察によるデモ参加者への暴力や拷問は実際に起こっているようで、同じ民族が憎しみ合う状況には胸が痛みます。

イスラエルとUAEの歴史的な合意は、イラン包囲網の強化のためという見方が強いですが、裏を返せば、それだけイランの影響力が拡大し、逆に米国の影響力が低下していると言えます。イスラエルにとって、米国という後ろ盾に以前ほどは頼れない状況なのかもしれません。

ところで、アルメニアの新型コロナの状況ですが、感染者数は42,319人、死者は836人。感染拡大の収束が続いており、そのため、大学も9月から授業が再開されることが決まりました。また、博物館なども再開されるようです。アルメニアが次第に通常に戻っている一方で、欧州各国では、感染の再拡大を受けて規制を強化しようという動きが見られます。それに抗議する大規模なデモがドイツやスペインで発生していますが、それって日本では報道されているんでしょうか?

さて、昨日また家族で採蜜の作業を見学しました。親友の片岡さんと協力して仕事を進めようとしているハチミツ会社の社長さんが誘ってくれたので、彼のエレバンの工場に行ってきたのです。その工場には今年1月に片岡さんと訪問したし、6月には、山に移動したミツバチを家族で見に行ったこともあります。どちらについても、過去の記事でご紹介しています。(1月の記事)(6月の記事)

工場に行ってみると、1月の訪問時に見た最新の機械でハチミツを採集されていました。今月初めにもアルメニア北部で採蜜作業を見学しましたが、そこは小さな養蜂家なので、全て手作業でやっていました。それとはまた違う機械化された作業はとても興味深かったです。

ミツバチの巣箱から巣枠を取り出して機械にかけると、自動的に蜜蓋(完熟した蜜の入った巣穴を塞ぐためにハチが作る蓋)が削ぎ落とされていきます。そうすると、密閉されていたハチミツが出てくるわけです。次に、遠心分離機を使って、さらに巣枠にあるハチミツを取り出すのですが、これも機械が回転数などを計算して、自動で巣枠を回します。

そこからすごかったのは、徹底的な濾過作業。複数のフィルターでハチミツを濾過して、それに圧力をかけてまた濾過します。最後にハチミツを寝かして、中の残った気泡や沈殿物を取り除きます。1月に訪問した時に、その工程や機械について説明を受けましたが、実際に稼働しているのを見ると、少しでも高品質のハチミツを作ろうという強いこだわりに改めて感心しました。

見学の後、そのこだわりのハチミツを2キロ購入しました。その場で瓶に黄金色のハチミツを入れてくれて、もう一つの瓶にはおまけで蜜蝋をたっぷり入れてくれました。美味しそうだし、体に良さそう!というか、帰宅してから味見してみたら、めっちゃ美味しかったー!そりゃーあれだけこだわって作っていますからね。工場見学も楽しかったし、充実した一日になりました。

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巣箱から取り出した巣枠。ここにハチミツが詰まっています。

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蜜蓋を削り取る作業。大量のハチミツを作るから、工程のほとんどを機械で行います。

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遠心分離機でハチミツを取り出します。巣枠の重さなどから自動的に回転数を計算するそうです。

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取り出したハチミツを複数のフィルターで濾過します。

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さらにハチミツに圧力をかけて、また濾過します。

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最後に、この中でハチミツを寝かせて、残った気泡や沈殿物を取り除きます。

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工場内部。これらの工程を経て、こだわりのオーガニックのハチミツが作られます。

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もちろん、その美味しいハチミツを頂きました!工程を見学したばかりだから、更に美味しそうに見えます。

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おまけに蜜蝋もたっぷり入れてくれました!

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購入した採れたてのハチミツ。きれいな色です。そして、とても美味しかったです!

妻の翻訳した「ノルウェイの森」が出版! 

今日は終戦記念日でした。日本はかなり暑いようですが、エレバンは、ここ2日ほどは夕方に雨が降って、気温が下がりました。一週間ほどはあまり暑くならないみたいです。もう今年は暑さのピークを越したのでしょうか。何にしても、例年より涼しくて過ごしやすいです。

アメリカ大統領選でも焦点となっている新型コロナですが、米国のコロナによる死者の平均年齢は約78歳で、これは米国の平均寿命と同じです。民主党や大手メディアは、こういう情報は全く取り上げず、コロナ問題で大騒ぎしてトランプ政権を叩いてばかり。日本のメディアも、それを垂れ流すだけ…ところで、先日ロシアが世界に先駆けてワクチンを承認しましたが、実際の効果云々よりも、国家戦略の側面がかなり強い気がします。

アルメニアの現在の状況は、感染者数は41,495人、死者は817人。死者の増加ペースも減ってきました。前回の記事で、このように感染拡大が収束してきているため、コロナ対策のいろいろな規制が緩和される方向だと書きましたが、具体的には以下の大きな変化がありました。

空路による外国人の入国が可能になりました。ただし、入国後14日間の自己隔離措置が求められます。入国後にPCR検査を受けて、陰性であれば、自己隔離は解除されます。政府は、空港到着時にPCR検査を受けられる体制を整える方向で検討中です。陸路による入国は原則できません。

集会やデモ、冠婚葬祭なども、マスク着用やソーシャルディスタンスの確保、また40人以内といった感染防止規則を順守すれば実施できます。

マスクの着用義務が緩和されて、自家用車内や屋外のレジャー施設、リゾート地、山や森林などの自然地域では付ける必要はありません。その他の公共の屋外および屋内では、引き続きマスクの着用が義務付けられています。

今後も状況が改善し続ければ、さらに規制が緩和されると思います。外国人の入国が許可されたのは重要ですが、自主隔離が義務付けられる上に、アルメニアに発着している便が現状かなり少ないため、依然として行き来しにくいことには変わりありません。これは世界中どこも似たような状況でしょうけど、まだまだ以前のように戻るには時間が掛かりそうです。

さて、妻が翻訳した村上春樹の「ノルウェイの森」がついに出版されました!妻が日本語からアルメニア語への翻訳を終わらせたのは昨年3月。その後、編集や装丁などの作業が行われて、今夏にやっと出版される運びとなったのです。小さな子供二人を育てながら、頑張ってやり遂げた大仕事が形になって、妻もとても嬉しそうです。翻訳が完了した時のことは、過去の記事をご覧ください。(こちら)

そして、何より妻を喜ばせたのは、編集者から翻訳を大絶賛されたこと。アルメニアでは有名な編集者だそうで、かなり仕事に厳しいことでも知られているみたいです。私もお会いしたけど、確かに仕事に対するこだわりが凄かった…よほど納得しない限り滅多に褒めたりしないその人が、妻の翻訳を手放しで評価したから、出版社の人たちも驚いていました。

さらに今回の出版にあたって、その編集者はFacebookでも、「素晴らしい翻訳だ!」と書いて本を宣伝していました。自分の著作でさえ宣伝することがほとんどないらしく、それにも出版社の人たちは驚いたそうです。あまり一喜一憂しないタイプの妻も、自分の仕事に対する彼の高評価には、「本当に光栄!すごく嬉しい!」と子供のように喜んでいました。もちろん翻訳のお手伝いをした私も嬉しいです。

ちなみに、アルメニアでも村上春樹の人気は高いみたいで、編集者がFacebookに出版のニュースを投稿すると、すぐ妻にたくさんのメッセージや友達リクエストが届きました。とにかく妻の汗と涙の結晶とも言える力作を、少しでも多くのアルメニア人に読んでもらえたらと思います。

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なんだかアニメチックな表紙カバー。こういうタッチの絵を描くアルメニア人画家がデザインしたそうです。けっこうインパクトあります。

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裏表紙には、村上氏の写真と略歴が載っています。アルメニアでも人気が高いですが、アルメニア語版の出版はこれが初めて!

あと、もう一つ妻が翻訳した本のご紹介です。ヴァルダン・ハコビャンというアルメニア人指揮者が書いた、「過去と動機」という本の電子版がアマゾンで発売されることになりました!こちらはアルメニア語から日本語に訳したものなので、日本人向けです。

著者のヴァルダン氏は、アルメニアからニューヨークに移住し、これまで公演で様々な国を訪れました。特に日本のことが大好きらしく、自分の著作を是非とも日本人に読んでもらいたいとのことで、妻に翻訳を依頼したのです。昨年10月にアルメニアでの出版を記念したパーティーが開かれて、私と妻も参加しましたが、彼が本当に日本や日本人を敬愛していることが伝わりました。そのパーティーのことは、過去の記事をご覧ください。(こちら)

出版された本は、ベートーヴェンやワーグナーなど有名な作曲家の生涯や人間性、また彼らが生きた時代背景などを深く分析し、それぞれの作品に込められたテーマやメッセージを解説したもので、クラシック音楽が好きな方には斬新で興味深い内容だと思います。こちらの作品も、少しでも多くの方に読んで頂けたら嬉しいです。下は Amazon のリンクです。

ヴァルダン・ハコビャン著「過去と動機」

アルメニア北部を家族旅行 Part 3 

日本はお盆休みですね。とはいえ、新型コロナの影響で旅行や帰省などは控えられて、例年のような民族大移動は起きていないようです。海外旅行どころか、国内旅行もあまりできないなんて残念でしょうね…

世界の感染者が2千万を超えた新型コロナのアルメニアの状況ですが、感染者数は40,794人、死者は806人です。明らかに収束しつつあるため、外国人の入国制限やマスク着用義務などの規制が緩和される方向です。そして、9月15日から小中学校が再開されることも決定!やったー!でも、9月1日からじゃないのは残念…非常事態宣言が来月中旬まで延長されたからだそうですが、とにかく正式に再開が決まって、私と妻もホッとしています。

子供の感染リスクはかなり低いことは証明されているんだから、これ以上教育の機会を奪う必要はないと思います。それに子供が家にいると、祖父母が面倒を見ることが多く、逆に高齢者の感染リスクが高まるので矛盾しています。ちなみに、大学などの再開については来週以降に決定されるそうですが、ここのアメリカ大学やロシア大学は独自でオンライン授業の継続をすでに決めました。学生や父兄からは、「だったら学費を安くしろ!」という不満の声が上がっているみたいです。

さて、アルメニア北部を訪問した家族旅行の話の続きです。今日で最後になります。旅の最終日は、前日の雨も上がり、朝からきれいな青空が広がっていました。アレンが山登りしたいと言うので、ゲストハウスのオーナーのお父さんが、近くの山に連れて行ってくれました。いつも優しくアレンの手を握って、まるで本当の祖父と孫という感じです。

ゲストハウスに戻ると、オーナーの娘さんも来ていました。美人の奥さんに似てめっちゃ可愛い!レオと仲良くブランコに乗る姿はもう可愛すぎ!同い年ぐらいの子が来て、レオも嬉しそうでした。しかし、帰路の運転をお願いしていた運転手も到着し、出発時間になったのでゲストハウスを後にしました。家族みんなが手を振ってくれて、そのホスピタリティに心が温かくなりました。とてもステキな場所ですから、また訪問したいと思います。

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ゲストハウスのオーナーのお父さんとアレン。まるで本当の孫とおじいさんみたい!

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オーナーの娘さんと仲良くブランコに乗るレオ。可愛いなあー

まっすぐエレバンには向かわずに、コバイル修道院に寄って観光しました。山奥に建てられた12世紀の教会で、妻がずっと行きたいと言っていた場所です。けっこう険しい山道を登らないといけないと聞いたので、子供連れで大丈夫なのか微妙でしたが、せっかくだから訪問してみました。

山道の入り口が分かりづらかったですが、すでに麓にはアルメニア人観光客の車が何台か止まっていました。歩き始めると、すぐに小さな集落が出てきました。修道院で灯すロウソクを売っている家族がいたので、そこで買いました。道はどんどん急になり、足場も悪くなってきて、確かに子供にはキツイかも…アレンは、途中からかなりしんどそう。レオは、さっさと歩くのを諦めて妻に抱っこしてもらっています。

休み休み20分ほど歩くと、石造りの建物が見えてきました。もうすぐだ!と力を振り絞り、最後の急な山道を登り切って、コバイル修道院に到着しました。ここも、足がすくむような深く切り立った崖っぷちに建てられています。なぜこんな場所に?そしてどうやって?またもや古人の信仰心の強さに感動を覚えました。

建物自体はかなり崩壊していますが、それがまた謎多き遺跡のような秘境ムードを醸し出しています。風光明媚な立地と共に、かなり見応えのある場所でした。礼拝堂の跡地に入ってみると、キリストと弟子たちを描いた素晴らしい壁画が残されていました。当時はとても立派で美しい修道院だったことが分かります。少し行きづらいけど、妻が行きたい!とずっと言っていただけあって、訪問する価値は十分ありました。

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険しい山奥に建つコバイル修道院の鐘楼

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崩れた礼拝堂の入り口。精微なレリーフが残されています。上部に壁画の痕跡がありますね。

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古いグルジア文字・アルメニア文字が彫られています。

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キリストと弟子たちの壁画が残っています。これは見応えがありました。当時は美しく鮮やかな教会だったのでしょう。

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教会の裏の渓谷。こんな険しい自然に囲まれています。

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玄武岩が隆起して形成されたものなのか、柱状節理という六角形の岩石が見られます。

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鐘楼の上から見た礼拝堂。崩れ落ちて遺跡のような姿です。周りの厳しい自然と相まって秘境感たっぷり!

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鐘楼からは雄大なアルメニア北部の自然を望むことができます。

コバイル修道院を後にして向かった先は、マラリックという村。アルメニア第二の都市ギュムリの近くにある村で、そこに私と妻の結婚式のカヴォルが住んでいるのです。カヴォルというのは、アルメニアで結婚式や洗礼式の証人のこと。日本では仲人みたいなものでしょうか。そのカヴォルとご家族を訪問するために、ちょっと遠回りをして立ち寄りました。

彼はアルメニア柔道連盟の創立者で、昔はオリンピック委員会の会長や国会議員も務めていました。そのため、エレバンに長年住んでいました。私もエレバンで知り合い、その大らかで誠実な人柄に惚れ込んで、私と妻はカヴォルをお願いしたのです。しかし、ここ数年は糖尿病が悪化したり、脳梗塞を起こしたりと体調を崩してしまい、マラリック村の実家に住んでいます。奥さんもそこの出身で、二人とも自然豊かでのんびりした村の生活を気に入っているみたいです。

エレバンから離れているため、ここ数年はお互い会う機会が少なくなり、今回も約10か月ぶりの再会となりました。電話では時々話すんですけど、その度に「マラリックに遊びにおいで」と誘われていたので、やっと訪問が実現した訳です。向こうは、私たちが到着した瞬間、とても喜んでくれました。

ちなみに、マラリック村は3〜4月に新型コロナが流行して問題になりました。そのため、持病がある彼のことを案じて電話したら、「大丈夫だよ」との返事でしたが、実は3月末に感染して数日入院していたそうです。奥さんも数日熱があったとのこと。しかし、重症化することなく回復したそうです。村人の多くも同じ感じだったみたいで、「そんな大騒ぎすることじゃない」と二人とも言っていました。とにかく元気そうでよかったです。

彼の実家には、広くて緑豊かな庭があり、鶏やウサギ、アヒルなどが放し飼いになっています。それを見て、アレンとレオは大喜びしていました。田舎だから空気もきれいで気持ちいい!その庭で、カヴォルの家族と一緒に食事しました。カヴォルと度数の強いウォッカで乾杯しながら、楽しい時間を過ごしました。健康を損ねたせいで昔の豪快さや覇気はなくなったけど、包み込むような優しさが溢れている感じで、傍にいると心穏やかになります。

奥さんも、そんな彼の変化について話していました。例えば、飼っていたウサギが病気で死んだ時に、彼は悲しそうに涙を流していたそうです。もちろん病気やケガなんてしない方がいいに決まっていますが、その経験によって、人はもっと謙虚に優しくなれるのかもしれません。本当に大切なものが見えてきて、心に余裕や繊細さが生まれるのかもしれません。カヴォルも、以前よりもずっと自然体で温かいオーラを持っています。

そんな彼やご家族と久々にゆっくりお話しながら、楽しい時間を過ごすことができ、その村に立ち寄って本当によかったです。暖かい気候の間に、また遊びに行きたいと思います。夕方にマラリック村からエレバンに戻り、三泊四日の家族旅行が終わりました。アルメニアの美しい自然と悠久の歴史、そして心温まる人々の触れ合いを満喫する素晴らしい旅でした。私たち家族にとって、忘れられない夏の思い出になりました。

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久しぶりに再会したカヴォル。大切な仲人であり、大好きな人です。

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息子さんがアレンを可愛がってくれました。

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自然豊かな庭で遊ぶ子供たち。女の子はお孫さんです。

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アヒルを可愛がるアレン。動物が放し飼いになっているから、子供たちは嬉しそうでした。

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アレンを抱いてアヒルを見守るカヴォル。柔道一筋の覇気あふれる人でしたが、今はとても柔和で穏やか。

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エレバンに向かう帰路からの景色。美しい自然を満喫できた旅でした。