幻想尺八家のコンサート 

今日、人々を驚愕させる事件がありました。大規模な犯罪を計画していたギャング集団がエレバンで逮捕されたのです。治安のいいアルメニアで、まさかこんなことが…情報が錯綜して「外国人のテロ集団が捕まった!」という報道が一部あったようですが、約20人の容疑者は全てアルメニア人でした。

この時期に外国人のテロ集団と聞くと怖くなりますが、実際はそうではなかったし、事が起こる前に捕まってホッと胸を撫で下ろしました。しかし、テレビやネットでニュースを見ると、「これ、本当にギャングなんか?」と少し疑問に感じました。とにかく隠し持っていた武器の量が半端ない!ランチャーや手榴弾まであって、まるで戦争でも始めそうなレベル。一体どうやって入手したんでしょうか…

まだ詳しいことは分かりませんが、警察が半年以上も彼らを見張っていたことや、憲法改正を問う国民投票が実施される直前のタイミングなどを考えると、ただのギャングではなく、反政府武装勢力だったのかも…あくまで私の穿った見方ですけどね。アルメニアの政治腐敗や不平等はかなり酷いので、武力闘争で変革しようと考える人たちがいないとは言い切れません。

さて、今週は日本文化週間ということで、大使館やヒカリセンターなどの協力によって様々なイベントが行われています。今晩は、幻想尺八家と呼ばれる入江要介さんのコンサートが開かれたので行ってきました。登場した入江さんは、日本の伝統楽器の演奏家でありながら、アニメに出てきそうな独特の衣装でした。

入江さん曰く、「いつも古典だけでなく現代的な曲も演奏するので、このような衣装を着ている」とのこと。実際に曲目はバラエティーに富んでいましたし、演奏は素晴らしかったです。また、尺八という楽器がどういうものか知ってもらおうと、丁寧にその歴史や技法などを説明して下さいました。

コンサート後も、入江さんは観客の質問に熱心に答えたり、写真撮影に気さくに応じたり、一生懸命アルメニア人と交流されていました。練習用の尺八を観客に手渡して挑戦してもらいましたが、ほとんど誰もまともに音が出せませんでした。シンプルな楽器ですけど、やはり難しいんですね。

本当に素晴らしい音楽をありがとうございました!入江さんは、金曜日から始まる日本映画祭のオープニングでも演奏される予定です。映画と共に美しい日本の伝統音楽を楽しみたいと思います。

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素晴らしい音色を聞かせて下さいました。その独特の和の音に、アルメニア人も聞き入っていました。

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現地テレビの取材を受ける入江さん。隣で通訳しているのは私の妻。日本文化週間の通訳を担当しています。

コンサートの翌日、入江さんは現地のテレビ番組に出演され、その時も妻が日本語通訳を務めました。番組終盤に入江さんの生演奏があるので、是非ご覧になってみて下さい。


アルメニア人学生が無事に来日! 

秋晴れの気持ちのいい天気が続いています。でも、朝晩は冷えますけどね。義祖母は、体調が少し良くなったり悪くなったりを繰り返して、基本的には寝たきり状態です。それに加えて、アレンが幼稚園に行かない土日は、家の中がなんだか少し混乱した雰囲気です。

魔の二歳児と言われる時期だけあって、かなり面倒な時があります。ちょっと気に入らないことがあると泣いて怒ったり、こちらは何がしたいのかちっとも分からないけど、ずっと泣きじゃくって機嫌が悪かったり…そんな時期は誰にでもあると分かっていても、ハイハイしかできなかった頃の方が楽だったなあと思ってしまいます。(あれはあれで大変だったけど…)

さて、私が日本の有志の方々と運営する「アルメニア友の会」に招聘された学生二人が、お陰様で無事に日本に到着しました。今朝は、お世話して下さっている会役員から、二人が楽しく有意義な時間を過ごしていると連絡がありました。この機会にたくさんのことを学ぼうという二人の姿勢に、日本の方々も感動しているそうです。

夢だった日本で素晴らしい経験をしていることが分かって安心しました。2年前の同プログラムの時もそうでしたが、学生たちの夢を叶えるお手伝いができて本当に嬉しいです。6年前に自分を突き動かした、「日本との接点がほとんどないアルメニアの学生たちのために何かしたい!」という初心を思い出しましたね。

そして何より、その私の思いに賛同して協力して下さっている日本の方々に心から感謝です。6年前に会を発足した時、私以外は誰もアルメニアのことを詳しく知らない状態でした。そんな中でも、たくさんの図書を送ったり、役員・会員がアルメニアを訪問されたりして交流活動を地道に続けてきました。

その草の根交流が実を結び、2度もアルメニアの学生を日本に招聘することができました。私一人の力では到底実現できなかったことです。改めて、いい出会いに恵まれてきたことを幸せに思います。私と同じく、ついに夢が叶った学生二人も感謝の気持ちで一杯でしょう。本当にありがとうございます!

あと1週間ほど学生たちは日本に滞在しますが、素敵な思い出をたくさん作ってきてほしいと思います。そして、今回も同プログラムが成功裏に終わって、またアルメニア人学生が日本へ来る機会を作りたいと思います。

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昨日は奈良を観光して、法隆寺や大仏を見てきたそうです。楽しく過ごしているようで安心しました。

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ホームステイ先の方とお寿司屋へ。初めての食材にも果敢に挑戦して、「美味しい!」と食べていたそうです。貴重な機会ですから、何でも経験してきてほしいと思います。

アレンにしか見えないもの 

いよいよ今日、「アルメニア友の会」の招聘プログラムに選ばれた二人の学生が日本に向けて出発します。わざわざ空港から、「夢を叶えてくれて本当にありがとう!先生!」と電話をくれました。彼女たちの幸せそうな声を聞いて、私も嬉しかったです。日本で素晴らしい思い出をたくさん作ってきてほしいと思います。

ところで、パリでテロ事件が起こってから、FBではプロフィール写真をフランス国旗の色にしている人が多いですね。犠牲者への追悼ですが、私はどうも違和感を感じます。同時期にレバノンでも大規模なテロが発生したのに、フランスばかり注目や同情が集まるのはおかしい!という理由からではありません。(確かにおかしいとは思うけど…)

もちろん加害者の行為を認めるつもりなど毛頭ありませんし、犠牲者や遺族のことを思うと私も胸が痛みます。ただ、どうしようもない自然災害と違って、今回は同じ人間が引き起こしたテロ。そこには根深い原因があるはずで、安易に一方の側に肩入れしたり、同調したりすることに危うさを感じるのです。

パリの悲劇を残虐なテロと非難するのであれば、アフガンやパキスタン、中東で毎日のように米軍などが行っている爆撃も、多くの無関係な市民を巻き込んでいるので同じことです。他国の悲惨な出来事に共感する感受性は大切ですが、そこで終わるのではなく、多角的に物事を見る視点も大切ではないかと思います。

さて、土日はぶっ通しで家庭教師の授業をしたので、最後は疲れ切ってフラフラでしたが、逆に「頑張らなあかん!」と気合が入ったのか風邪も大分良くなりました。アレンも元気になって、今週から楽しく幼稚園に通っています。

そのアレンが、ある晩に不思議な行動をしました。おもちゃで遊んでいたアレンが、急に誰もいない方向を指差して、「パピック!」と言い出したのです。パピックはお爺ちゃんを意味するアルメニア語。その方向に落ちているおもちゃが欲しいのかと思って取りに行こうとすると、「パパ!いやー!」と叫んで拒否。そして、またジーッと同じ方向を見つめながら、「パピック!」と繰り返します。だ、誰もおらんのやけど…

私も妻も意味が分からず見守っていると、途端に興味をなくした様子で、またおもちゃ遊びを始めました。「パピックはどこ?」と聞いても、アレンはおもちゃで遊びながら「いない」と答えるだけ。一体なんやったん?子供は、大人には見えないものが見えたりするって聞いたことありますが、あの時アレンには本当にお爺さんが見えていたんでしょうか…

子育てしていると、小さい子供には私たちが理解できない独自の世界というか、宇宙みたいなものがあると感じることがあります。今回の不思議な現象も、結局そういうことなのかもしれません。でも、ちょっと怖いから、あんまり変なこと言わんとってな、アレン!

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力士の人形で遊ぶアレン。生きていると思っているかのように話しかけたりしますが、息子には実際そう見えているのかもしれませんね。

アルメニアの児童の教育環境 

パリで大規模なテロが発生して、多くの人が死傷したというニュースがありました。こういうことが起こった時は、ただ非難するだけでなく、テロの根本的な原因は何かを考えるべきだと思いますが、やはり悲惨な出来事…被害者のご冥福を祈ります。

エレバンは日増しに寒くなっています。そのせいか風邪が中々治りません。アレンも熱を出して幼稚園を休んだし、義祖母は相変わらず寝たきり、その二人のお世話で義母は疲れ切っていて、妻も一昨日から風邪…幸いアレンは熱も下がったので、来週から幼稚園に通えそうです。また、妻も2週間ほど日本企業の通訳がお休みになるので、義母の負担が少し軽くなると思います。私も早く風邪を治したいものです。

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私が折り紙で作った羽ばたく鶴で遊ぶアレン。面白がっていましたが、強く引っ張りすぎて壊しちゃいました…

なので、週末ぐらいゆっくり休みたいのですが、土日も朝から夕方まで家庭教師の授業が入っています。これから光熱費が日本より嵩む冬が始まりますから、授業の依頼があるうちに頑張って働かないと経済的に乗り切れません。幸い大して熱はないし、日本語教師の仕事は大好きなので、それほど苦とは感じませんけどね。

こんな全く経済的に余裕がないにも関わらず、夏前までアルメニアの児童の支援活動を真剣に考えていたことは、前回の記事に書きました。6年前アルメニアに日本語を教えに来た時も、ここの給料では全く食っていけないのは承知でしたし、実際に初めの数年は貯金を切り崩す生活が続いて苦しかったです。

それでも私がなぜアルメニアに来たかというと…「大使館もない、日本人もいないアルメニアで頑張っている学生たちに教えたい!」という思いが自分を突き動かしたからです。大袈裟ですが、アルメニアで日本語を教えることは、自分の人生の大切な宿題のように感じていました。それについては詳しく過去に書いたことがあります。(こちら)

今回も、「子供たちのために何かできることがあるんじゃないか…」という思いがきっかけでした。残念ながら最初の活動で頓挫してしまいましたが、子を持つ親になってから、アルメニアの児童の置かれた厳しい状況を見た時、我がことのように胸が痛みました。具体例として、当初支援しようとしていた学校の教室機材の写真を少し載せておきますので、ご覧になって下さい。

自分や家族の生活が安定していないのに、人助けをしようなんて愚かなことかもしれません。でも、写真のような状態の学校や施設、そしてそこで生きる子供たちを目の当たりにすると、「何かしなければ…」という思いが込み上げてくるのです。今は行動に移すには難しい状況ですが、この思いを心のどこかに大切に持ち続けたいと思います。

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老朽化してボロボロの机と椅子。これで子供たちは勉強しています。

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ソ連時代の古い破損した機材を使い続けている教育機関は今も多いです。

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この学校の機材は、アルメニア政府の支援によって全て新調される予定です。今後も自国政府が児童の環境改善に力を入れて行ってほしいと願います。

招聘プログラムの学生がビザを取得! 

息子アレンがまた扁桃腺を腫らして熱を出してしまい、幼稚園はお休みです。しかし、子供って38度を超える熱を出しても元気なのは何故なんでしょう?というか、いつもよりテンションが高いぐらい…

さて、私が日本の有志の方々と運営している民間団体「アルメニア友の会」は、今月下旬に二人の学生を日本の関西地方へ招聘する予定です。お陰様で、選ばれた学生たちが無事にビザを取得しました!

今年1月に日本大使館が開設されましたが、まだビザ発給業務は行われていなので、今回も在ロシア日本大使館を通して取得することになりました。幸い学生の一人の家族や親戚が10月にモスクワに行き来したので、意外にスムーズに取得することができたようです。ビザに必要な書類を作成して下さった「友の会」会長に感謝です。

渡航に必要な準備も整い、会役員の方々が親身に滞在スケジュールを作って下さっています。ちょうど日本は美しい紅葉の季節ですし、きっと学生たちにとって素晴らしい体験になると思います。自分の学生の夢を叶えることができて、私も嬉しいです。これも偏に「友の会」の役員・会員のご協力のお蔭。本当にありがとうございます!

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日本ビザを取得して嬉しそうな学生。約10日間の短い旅行ですが、夢だった日本で楽しい思い出をたくさん作ってきてほしいと思います。

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同じく日本へ行く学生(写真右端)。先日レストラン櫻田で行われたコスプレパーティーに参加しました。彼女もすごく日本旅行を楽しみにしています。

あと、実は私は日本の方々と協力して新たに支援活動を始めようとしていました。それは…アルメニアの子供たちの支援活動!今年の春頃まで、私は日本政府の無償資金協力の視察員をしていたのですが、その仕事を通して、老朽化した学校や状態の悪い障害児施設などをたくさん見てきました。

自分も一児の父親になって、過酷な環境にいる子供たちを見た時、他人事とは思えませんでした。昨年秋頃から、「自分にも何かできることがあるんじゃないか…」と考えるようになり、微力ながら支援活動を始めてみようと決心しました。今年春に帰国した際に、日本の協力者とお会いして具体的な活動内容についても話し合いました。

そして、6月にエレバンのある学校の老朽化した机や椅子を修復する計画を進めていたのですが、いざ実際に動き出そうとした矢先、学校側から「アルメニア政府が支援してくれることになった」という連絡を受けました。急なことで驚いたし(学校側も)、出鼻をくじかれたような気がしましたが、本来は自国政府が何とかしなければいけない問題。結果的に一番良い形で解決されました

今回は偶然で活動に至らなかったとはいえ、今後も同じようなことが起こらないとは限らないので、支援についてはかなり慎重さが求められると感じました。そうこうしている内に、私は土日含めて授業がある多忙な生活になり、それどころではなくなってしまいました。家族がいるので、どうしても日々の生活を優先せざるを得ません…

しかし、将来もし何かしらの活動ができるのであればやってみたいと思っていますし、私の現状を理解して下さった協力者の方々も同じ思いです。たとえ小さなことでも、きっとそれがアルメニアのため、そしてアレン含め自分たちの未来である子供たちのためになるのですから。

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熱があるのに、やたら元気なアレン。無垢な子供たちの環境を少しでも良くできればと、子を持つ親になってからは一層強く思います。