なぜアルメニアか… 

ここの生活は経済的に大変です。大学の給料があまりに安いのです。「物価が安いから、暮らせるでしょう?」と言われますが、いえいえ、全然…家庭教師の収入を足しても、やっと家賃が払えるほどです。家賃以外にも光熱費や食費などが掛かりますが、それは自分の貯金を削っています。

「なぜ、そこまでしてアルメニアにこだわるのか?」とよく聞かれます。確かに、日本語教師としてもっと余裕を持って生活できる国はいくらでもあります。政府派遣だとかなり経済的に楽ですが、日本大使館もないアルメニアでは、それは無理です。私もそれほど若くはないので、経済的不安や将来に対する不安はあります。

それでも、やっぱりアルメニアで頑張りたかったのです。いろいろ悩んだり、迷ったりしましたが、「いつかアルメニアで日本語を教えたい!」という思いは消えませんでした。10年前にここで出会った学生たちの直向さに胸を打たれ、彼らの純粋な目がなぜかずっと心に焼き付いていたのです。

あと、他者のために自分はどこまで出来るのかという思いもありました。格好いいことを書きましたが、所詮これも自分がやりたいことをやっているだけでしょう。でも、自己犠牲を強いてまで他者のために何かできるのは、今しかないんじゃないか、そして、それは自分の人生において本当に必要なことではないか… その思いが、自分にアルメニアへ行く決断をさせました。

私が幸運だったのは、実際に行動に移せるほどの動機があったことです。その動機とはアルメニアです。アルメニアで日本語を教えたい、学生たちのために何かしたいという夢です。10年前の偶然の出会いから始まったことですから、ほとんどただの思い込みのようなものです。

しかし、そんな思い込みこそが、夢や目標に向って人を突き動かす最大のエネルギーなのかもしれません。

アルメニアに本を送る会

家庭教師の学生 

先週から授業を開始しました。といっても、大学ではなく、家庭教師の方です。実は、私は家庭教師もやっています。大学の給料は安すぎて、全く生活ができません。まあ、家庭教師の収入を足しても、やっと家賃が払える程度ですが…

でも、お金のためだけではなく、日本語を勉強したいという人がいるからやっています。知人や友人から、「日本人の先生がいる」と私のことを聞き、授業をすることになりました。現在は、4人の学生に教えています。

その内2人は友達同士なので、一緒に授業を受けています。グループの方が、当然一人分の授業料は安くなります。その2人の学生の名前は、アラさんとカレンさん。去年の9月から、週2回私のアパートで教えています。

 

カレンさんは、「空道」という格闘技の先生。極真空手の流れを組むものですが、金的や寝技などもOKという総合格闘技。競技人口は、ロシアが最も多いのだそうです。彼に会うまで、 そんな格闘技があるなんて全く知りませんでした。

アラさんも合気道や空手を習っていたことがありますが、小さい頃から日本文化に強い関心があり、日本語を勉強するのが夢だったそうです。しかし、彼が学生の頃は、日本語を教える大学などはありませんでした。今、私という日本人教師と出会い、やっと夢が実現したという訳です。とにかく、すごく熱心です。

二人は私と歳も同じぐらいだし、とても気さくなので、一緒に食事や飲みに行ったりして、ほとんど友人のような関係です。だから、彼らの授業はとても楽しいです。彼らのように、日本文化への憧れや興味から熱心に勉強する人たちと出会うと、経済的に大変でも、何とか頑張って教えようと思います。

 

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左がカレンさん、右がアラさん。カレンさんは、私と同じ35歳…見えないですね。アルメニアの男性は、日本人より老けて見えます。アラさんは、イタリア語も習っていて、英語もペラペラ。フランス語も少し話せるそうで、語学センスがあるし、考え方もリベラルなので、話が合います。

坂出市からの寄贈本 

私の帰国中も、アルメニアには本が大量に届いていました。協力してくれている友人が、ちゃんと受け取ってくれていました。その友人と、本を送ってくださる方々に、本当に感謝です。現地で私がすべきことは、届いた本を確認して保管することですが、先週その本の確認をしてきました。

アルメニアに本を送る会から送られた本もたくさん届いていましたが、香川県坂出市から届けられた本もありました。坂出市の高校生たちが、地元のお祭りのイベントで、アルメニアのために本を集めてくれたのです。(こちら) 2000冊以上も集まって、昨年は約400冊を送付してくださいました。

図鑑や絵本、観光雑誌など親しみやすい図書がたくさんあって、本当に助かります。坂出市の市立図書館からの寄贈が多かったように思います。アルメニアと坂出市が繋がるというのも不思議な縁ですが、こんな繋がりがもっと広がってほしいと思います。本を集めてくれた高校生、送ってくださった片岡さん、寄贈してくださった方々、誠に有難うございました。

 

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坂出市から届けられた本。これは、高校生たちが集めてくれた本のまだ一部です。イベントを主催している片岡さんは、高額の送料を負担してくださいました。アルメニアで、大切に使わせて頂きます。

日本からの手紙 

帰国前に、アルメニアの学生たちに手紙を書いてもらいました。アルメニアに本を送る会の役員や支援者の方々への手紙です。自己紹介や、日本語を勉強する動機、感謝の気持ちなどを書いてもらいました。

それらは私が日本へ持ち帰り、役員の方々に手渡して、会報にも一部掲載しました。やはり、学生たちからの日本語でのメッセージが何より嬉しいものです。彼らのような学生のために、私たちは本を送って図書室を作っているわけですから。

今度は、役員の方々が、学生たちへ手紙を書いてくださいました。それらを私がアルメニアに持ち帰り、少しずつ学生に手渡しています。手渡すと、みんな喜びますね。本や教科書などの印刷物しか読んだことがないからか、手書きのものを読むのに少し苦労しています。特に漢字は、知っていても、崩して書かれていると分からないようです。

それだけに、日本語のとてもいい練習になったと思いますし、自分に宛てて書かれたものだから一生懸命に読みます。「また返事を書きたい!」という学生もいます。こんな交流が、言葉を学ぶ上で、一番のモチベーションになるのです。アルメニアの学生たちと文通したい方がいらっしゃったら、よろしくお願い致します。

アルメニアに本を送る会

手紙を受け取った学生からのビデオレターです。彼女(リリットさん)は日本語が上手ですが、少し手紙を読むのに苦労していました。でも、「とてもいい勉強になった」と喜んでいました。もっとこんな交流が広がってほしいと思います。

2ヶ月ぶりのアルメニア 

2ヶ月ぶりのアルメニアですが、すでに半年住んでいたからか、すぐにこちらの生活には慣れてしまいました。学生や友人たちへの連絡、いつものスーパーでの買物、ネットの再契約、大学への挨拶などを普通にやっています。それでもやっぱり、友人や学生たちから「お帰りなさい!」と笑顔で言われると、本当に嬉しいですね。

寒さは思ったほどではありません。日本より少し寒いぐらいです。家の中は、日本よりかなりマシじゃないでしょうか。シャワーだけが問題ですが…やはり冬はお風呂に入るのが一番。暖かくなるまで、チョロチョロとしか出ないシャワーで我慢です。

特に変わりのないエレバン…と思いきや、ある変化に気づきました。それは信号! 歩行者信号にも、車両信号にもタイマーが付けられ、青から赤に変わるまでの秒数が表示されるようになっています。これって、私にとっては大きな改善。 完全に車優先のアルメニアでは、いつ信号が変わるか分からない横断歩道を渡るのは怖かった…信号が変わった瞬間に、車が猛発進してきますから。

しかし、相変わらず信号無視して道を渡ろうとする人を見かけます。アルメニアの信号はけっこう早く変わるんですが、待てないようです。信号にタイマーを付けるよりも、人と車がもう少しマナーに気を付けた方がいいのかもしれませんね…

 

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タイマーが取り付けられた信号。まだ渡れるかどうか分かるので、けっこう便利。街路樹は枯れて、毎日どんよりとした曇り空(写真右)。暖冬とはいえ、寒々しい冬の風景です。