豊かになると… 

今週、2年生の授業で学生を叱りました…私はほとんど怒らないんですが、ちょっと学生の態度が目に余ったので、授業を中断して叱りました。怒りというより、悲しくなったというのが本音です。

2年生たちの授業態度は、最近ずっと問題だと感じていました。時間に遅れてくる、私語が多い、携帯電話をいじるなど、まるで小中学生みたいな所が目に付いていました。3,4年生は礼儀正しく、こんなことは全くありません。たった1,2歳の違いなんですけどね…

注意はしていましたが、みな18,19歳の大人ですし、強く戒めることはありませんでした。しかし私が話しているのに、ある学生が持っている風船(なぜ?)に落書きし始めたり、クラスメートとアルメニア語で冗談を言って笑い続けたり…「これはひどい!」と思ったのです。

「私がアルメニアに来たのは、どうしてか。それは、アルメニアの学生たちに日本語を教えたいからです。しかし、君たちの態度を見ていると悲しくなる。教えたい気持ちがなくなってしまう。本当に残念だ…」と、真剣に話しました。騒がしかったクラスはシーンとなって、学生たちも下を向いていました。

彼らが今後改めるかどうか分かりませんし、気まずい雰囲気になるかもしれません。私も叱りたくはないですが、自分としてはこれで良かったと思っています。教師の仕事は、ただ衝突を避けて学生に好かれることではなく、将来彼らが「先生に教えてもらって良かった」と思ってくれることが大切なのです。そのために、時には厳しさも必要だということを、去年フィリピンで教えた時に学びました(こちら)

しかし、どこの国も豊かで便利になってくると、、同じような問題は起こるようです。グルジアで10年以上日本語を教えている日本人が、「携帯も、インターネットもなかった貧しい頃の方が、学生はずっと真面目でレベルが高かった…」とよく言っていました。アルメニアでも、9年前に出会った学生たちは、ろくな教科書もない中、必死に勉強していました。その頃に勉強していた友人も、「今の学生たちは、ずっと恵まれた環境にいるのに、それを活かしていない…」と悲しそうに言います。

だからといって、私は、今の学生はやる気がないとは思いません。今も頑張って勉強している学生がいます。純粋に日本語や日本文化に興味を持って、勉強している学生もいます。そういう学生たちの存在が私を支えています。それに、有意義な授業をする責任は、教師である私の側にもあります。

教師は、正に人間相手の仕事ですから、うまくいかないこともいろいろあります。落ち込んだりはしますが、日本語教師の仕事を嫌になったりはしません。全てが自分の成長に繋がっているように感じますし、楽しいことの方がずっと多いです。やっぱり、やりがいのある好きな仕事なんでしょう。今後もまた問題が起こるかもしれませんが、負けずに頑張りたいと思います。

 

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9年前の学生たち。毎日のように、私は授業に参加していました。今以上に日本人と話す機会がなかったので、四六時中私と話そうとして、もう質問攻めでした(こちら)。当時のアルメニアは、本当に貧しかったですけどね。でも、今も大変な中、一生懸命に頑張っている学生たちがいるのです。

サマータイム終了 

昨日、ヨーロッパ教育大学へ行ってきました。今週から授業が始まる予定でしたが、行ってみると、「今週は試験だから、授業開始は来週になる」と言われました。そして、「今日は学長に会ってくれ」とのこと。予定が全く当てにならないのは、ここでは日常茶飯事です。

しかし困りました。授業初日ということだったので、日本語が話せる友人が、通訳として来てくれる約束だったのです。ところが、約束の3時を過ぎても来ないし、電話もありません。学長と話すなら、通訳がいた方がいいんですが…約束を破るような人ではないので、どうしたのかと思っていると、友人から電話が掛かってきました。

彼女が、「こんにちは。今、どこですか?」と惚けたことを言うので、「3時の約束だったから、とっくの前に大学にいるよ。」と答えると、「エッ?!何で、そんなに早く来てるの?」と彼女は驚きます。「ハァ、何を言っているんだ?!」と思いましたが、「土曜日にアルメニアの時間は変わりましたよ!」という彼女の言葉を聞いて、やっと理解できました。

そう、サマータイムが終了したのです!私の時計が1時間早かったというわけです。最近忙しかったので、すっかり忘れていました。今までサマータイムがある国をいくつも旅行してきましたが、実際に時間を変える作業をするのは、今回が初めてです。時計を1時間遅らせると、何か得した気分になりました。これで、日本との時差はマイナス5時間です。

 

得したと言っても、来年3月末には、サマータイムで1時間早めなくてはいけません。その時は、何か損した気分になるんでしょうねえ…

書道を体験 

日本人教師として、自分がアルメニアでやれることはいろいろあるとは思いますが、学生に日本文化を教えたいと思っています。日本大使館もないアルメニアでは、日本語だけでなく、日本文化に接する機会もほとんどありません。

今月、授業で書道を教えました。と言っても、私は大した 腕前ではないのですが、とりあえず日本から持ってきた筆と墨で、学生に好きな日本語を書いてもらいました。書道という日本文化は知っていても、実際にやったことはない学生ばかりですから、みんな「難しい!」と言いながら、本当に嬉しそうでした。

 

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2年生のクラス。右端の「呂沙」というのは、彼女の名前「ロザ」を漢字にしたものです。ちょっと強引でしたが、自分の漢字名があるのは、とても嬉しいようです。他の学生たちも、小さく自分の漢字名を書いています。ちょっと間違っている子もいますが、それはご愛嬌。

 

 

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3年生のクラス。左の合気道を習っている学生は、「友好」と書きました。いいですね。右の学生は、なぜか「肉」…好きな言葉を書くように言ったのですが、自分の好きなものを書いたようです。まあ、これもご愛嬌。

 

 

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4年生のクラス。左端の学生は、漢字が大好きなので、とても楽しそうでした。 「美人」という言葉もありますね。まあ、確かに美人ですが…「美しい人になりたい」という思いを込めて書いたようです。コロンビアで書道を教えた時も、「美女」と書いた学生がいました。まあ、その子も確かに美女でしたが…

 

書道道具は1セットだけで(しかも硯や文鎮はない…)、あまり時間もなかったので、今回は細かい指導はせず、学生の書きたいように書いてもらいました。また時間を作って教えたいと思っています。とにかく、学生が喜んでくれて良かったです。

日本人教師の存在 

今日は、弁論大会当日。レナさんは大丈夫でしょうか…やはり気が気でないですね。モスクワで応援できないのは残念ですが、会場で教え子のスピーチを見守っていたら、もっとドキドキしているでしょう。会場まで応援に行った、コロンビアやフィリピンの弁論大会の時はそうでした。

とにかく、やれることは全てやりました。今私にできるのは、祈ることだけです。しかし、私は他の大切な仕事を抱えているので、ゆっくりする暇がありません。そのため、図書室の方に手が回らない状態ですが(申し訳ありません…)、学生が日本へ行けるかもしれない貴重なチャンスなので、今はそちらの仕事も頑張らなくてはいけません。 その仕事というのは、あるプログラムへの応募です。

今月上旬に、ジャパン・リターン・プログラムというNPOから、来年の日本語サミットの募集について連絡がありました(詳しくはこちら)。 世界中の国々から日本語を勉強している学生たちを招待して、平和についてディスカッションをするというプログラムです。約1ヶ月の滞在期間中は、日本語の授業や日本文化体験などもあり、学生にとっては素晴らしい経験になりそうな内容です。

応募するには、日本語で自己紹介や平和をテーマに作文を書かなくてはいけないのですが、何と締め切りが今月末!ちょっと時間なさすぎです…それでも数人の学生たちは、日本に行きたいからと必死で頑張っています。私も、誰かこのチャンスをものにしてほしいので、出来る限り作文指導など協力しています。もし第一次審査に合格したら、来月には学生のスピーチを録画して送ったりしなくてはいけません。

最近、私のような人間でも、日本人教師がいるだけで学生の環境はかなり変わるのだなと実感しています。当然、授業で自然な日本語を聞けることは大きなメリットです。それ以外に、今回のスピーチや作文なども、ネイティブが指導するかどうかで、その良し悪しはかなり違ってきます。また、私を通じて、日本へ行くプログラム等の情報が入ってくることも、学生の将来の可能性を大きく広げます。

 

現在、アルメニアには、日本人教師は一人も派遣されていません。家賃さえ払えない給料では、自主的に来てくれる人も中々いないでしょう…日本大使館がない、日本へ行く機会もほとんどないなど、不利な環境にいるアルメニアの学生のために、自分ができる限りのことをやってあげたいと思っています。

日本語弁論大会 

今週土曜に、モスクワでCIS諸国日本語弁論大会が開催されます。毎年この時期に行われて、アルメニアからも学生が一人参加します。今年は、4年生の教え子が出場するので、今日までずっと私が指導をしていました。明朝、学生はモスクワへ飛び立ちます。

主催者側から、大会について私に連絡があったのは、9月中旬。しかし原稿の提出期限は10月頭ということで、時間が全くなく、原稿を書いた学生はたった一人。時間的に厳しい中、一緒に内容を練り直し、文法や表現の修正と推敲を繰り返して、何とか納得できる原稿を完成させました。

それから毎日、スピーチの指導です。発音やアクセント、スピードなどの指導を行うのですが、学生は原稿を数日でほとんど覚えてきたし、発音もきれいなので、それほど苦労はしませんでした。しかし大勢の前で話す本番では、誰でも緊張して、忘れたり間違えたりするものですから、毎日時間を見つけて練習しました。

優勝者には、日本研修旅行が贈られます。大使館もないアルメニアの学生が、日本へ行ける稀な機会ですから、是非とも優勝してほしいと思います。しかし、ロシアや中央アジアからの高レベルの学生たちに勝つのは…うーん、正直かなり難しいです。

残念ながら、私はモスクワへ随伴することができず、現地で応援することができません。でも、短い準備期間だったにもかかわらず、学生はよく頑張ったし、いいスピーチになったと思います。私も、やれることは全てやりました。だから、結果は気にせず、自信を持って話してきてほしい、全力を出し切ってほしいと思っています。

 

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出場する4年生のレナさん。この写真はスピーチのテーマにとても関係ありますが、それについては、大会の結果が出てから、また記事で書きたいと思います。とても真面目で素直ないい子です。頑張ってきてほしいです。